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沖縄県における平成30年産さとうきびの生産状況について

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最終更新日:2019年9月10日

沖縄県における平成30年産さとうきびの生産状況について

2019年9月

沖縄県農林水産部糖業農産課

【要約】

 沖縄県の令和元年産さとうきびは、前製糖期に降雨が多かったことに起因する管理作業の遅れや、生育初期に当たる梅雨から梅雨明け後にかけての日照不足、生育後期および登熟期に当たる10月から12月にかけての干ばつ、これらの間に来襲した台風などの影響により、生産量は67万5827トン(前年比91.0%)、収穫面積は1万2901ヘクタール(同98.1%)、10アール当たりの収量は5239キログラム(同92.7%)と前年を下回る結果となり、過去58年間において下位から3番目に低い生産量となった。一方、平均甘しゃ糖度は、総じて収穫全期を通して高く、前年を上回る14.7度(前年14.0度)となった。

1.さとうきびの位置付け

 さとうきびは、重要な食料の一つである砂糖を調達するための作物であり、主要な産地である沖縄においては、県全体の農家数の約7割が栽培し、耕地面積の約4割を占める基幹作物である。また、さとうきびは農業産出額の約2割を占め、製糖業と大きな経済波及効果を通じて地域の経済と社会を支える重要な役割を担っており、多くの離島を抱える本県において欠くことのできない作物として位置付いている。また、常襲する台風や頻発する干ばつなど、本県の厳しい自然条件下でも栽培可能な特異な性質から、他に代替の利かない貴重な作物である。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づいて、平成27年を目標年とし、島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を平成18年に策定した。その後、平成27年に、令和7年を目標年とする「さとうきび増産計画」として改定した。

 さらに、平成24年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「沖縄県21世紀ビジョン基本計画」を同年5月に策定し、この二つの計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。

 

2.平成30年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)

 前年(平成30年産)の収穫期に降雨が多く、粟国島を除く各島の製糖終了期は、4月となった。この影響もあり、地域や()(じょう)によっては、春植えや株出し管理作業が遅れた。生育の初期に当たる4月から5月は、平年に比べて気温が高く、降水量は平年の80〜90%となり、梅雨に入るまでの間、南北大東島などで、干ばつ被害が心配されるような状況もあった。梅雨入りは平年よりも遅い5月16日で、梅雨明けは1951年以降で最も遅い7月10日となった。梅雨期間は55日間(平年は45日間)に及び、この間の降水量は平年のおよそ2倍以上となり、一方、日照時間が少なかった。生育旺盛となる7月から9月にかけての降水量も総じて多く、南北大東島を除いて日照時間が少なかった。平年並みかそれ以上の茎伸長と見込まれつつ、10月から11月は一転して降水量が少なく、気温が高いこともあり、干ばつとなった。このような気象状況に加え、7月から11月にかけて計6個の台風接近があり、茎折損などの直接的な被害は少なかったものの、生育に悪影響をもたらした。

 これらの結果、生育旺盛期の日照時間が平年並みで台風接近の影響が極軽微であった南北大東島、他の地域に比べて気象の影響が小さかった伊江島を除き、各島で単収が低く、生産量も減産となった。

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)

 前年(平成30年産)の収穫期に降雨が多く、製糖終了期は、宮古島で4月中旬、伊良部島や多良間島では5月にまで及んだ。この影響から、地域や圃場によっては、株出し管理作業が遅れた。生育の初期では、4月の降水量は平年よりも3割ほど多く、5月は一転して平年の6割程度と降水量が少なく、梅雨に入るまでの間、干ばつ被害が心配される状況もあった。平年よりも遅い梅雨入りと梅雨明けもあり、7月から9月の降水量は平年よりもおよそ5割以上多く、一方、日照時間が少なかった。平年並みかそれ以上の茎伸長と見込まれつつ、10月から11月は一転して降水量が少なく、干ばつとなった。このような気象に加え、7月から11月にかけて計6個の台風接近があり、茎折損などの直接的な被害は少なかったものの、生育に悪影響をもたらした。

 これらの結果、各島で単収が低く、特に宮古島と多良間島では大きな減産となった。

(3)八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)

 前年(平成30年産)の収穫期に降雨が多く、製糖終了期は、波照間島で4月中旬、小浜島と西表島では4月下旬、石垣島と与那国島では5月下旬にまで及んだ。この影響から、株出し管理作業が遅れた圃場や、株出し予定であった圃場を新植夏植えに変更するといった事例も見られた。生育の初期では、4月の降水量は平年よりも極端に多く、5月に入ると、西表島や与那国島では同様の傾向が続き、一方、石垣島では一転して平年の6割程度と降水量が少なかった。与那国島では記録的な豪雨の影響が懸念され、石垣島では、梅雨に入るまでの間、干ばつ被害が心配される状況もあった。平年よりも遅い梅雨入りと梅雨明けもあり、7月から9月の降水量は総じて平年より多く、一方、日照時間が少なかった。平年並みかそれ以上の茎伸長と見込まれつつ、10月から11月は一転して降水量が少なく、石垣島の降水量は平年の2割弱となるなど、干ばつとなった。このような気象状況に加え、7月から11月にかけて計6個の台風接近があり、茎折損などの直接的な被害は少なかったものの、生育に悪影響をもたらした。

  これらの結果、各島とも単収が低く、大きな減産となった。

3.平成30年産さとうきびの生産状況

 令和元年産さとうきびの収穫面積は1万2901ヘクタール(前年比98.1%)となり、平成30年産に対して244ヘクタール縮小した。生産量は67万5827トン(同91.0%)と同6万6757トン減少し、10アール当たり収量は5239キログラム(同92.7%)と同411キログラム減収した(図1、表1、2、3)。

 なお、各地域別生産量では、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の46.5%、宮古地域が39.3%、八重山地域が14.2%となっている。

 

 

 

 

 令和元年産の作型別栽培面積は、夏植え栽培が3500ヘクタール(平成30年産から377ヘクタール増)、春植え栽培が1196ヘクタール(同331ヘクタール減)、株出し栽培が8205ヘクタール(同290ヘクタール減)となった(図2)。全収穫面積に占める割合は、それぞれ27.1%、9.3%、63.6%となった。

 

 品種構成は、農林27号が全収穫面積の42.1%を占め、次いでRK97-14が7.7%、農林21号が6.5%、農林25号が6.4%、農林28号が4.8%、農林8号が4.5%となった(図3)。

 

 

(1)沖縄地域

 収穫面積は5643ヘクタールで平成30年産に対して239ヘクタール減少し、10アール当たり収量は5573キログラム(前年比100.8%)と前年に対して増加し、生産量は31万4505トン(同96.7%)と1万823トン減少した。

 作型別では、夏植え栽培が565ヘクタール(同41ヘクタール減少)、春植え栽培が768ヘクタール(同110ヘクタール減少)、株出し栽培は4310ヘクタール(同88ヘクタール減少)となった。大東地域が豊作であったため単収は増加したが、沖縄本島地域の収穫面積が減少したことなどにより、前年に比べ減産となった。

 品種構成は、農林27号が21.7%、RK97-14が9.2%、農林28号が9.1%を占めており、次いで農林21号、農林8号も普及している。

(2)宮古地域

 収穫面積は5401ヘクタールで平成30年産に対して66ヘクタール増加し、10アール当たり収量は4918キログラム(前年比89.5%)、生産量は26万5594トン(同90.6%)と2万7656トン減少した。

 作型別では、近年、株出し栽培が増加傾向にあり、令和元年産は2984ヘクタールで、全作型のうち55.3%となった。

 品種構成は、農林27号が64.6%と最も多く、次いでRK97-14が7.8%、農林21号が6.1%となっている。

(3)八重山地域

 収穫面積は1857ヘクタールで平成30年産に対して71ヘクタール減少し、10アール当たり収量は5155キログラム(前年比80.1%)、生産量は9万5727トン(同77.2%)と2万8278トン減少した。

 作型別では、夏植え栽培で16ヘクタール増加したものの、春植え栽培で38ヘクタール、株出し栽培で48ヘクタール減少したことにより、全体で71ヘクタールの減少となった。10アール当たり収量は、全作型で前年を下回った。生産量は夏植え栽培で1万1669トン減少の5万837トン、春植え栽培で3388トン減少の7042トン、株出し栽培で1万3221トン減少の3万7848トンであった。

 品種構成は、農林27号が38.5%と最も多く、次いで農林25号が22.3%、農林22号が16.2%、農林15号が5.7%となっている。

4.ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、株出し管理機や脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 令和元年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計450台のハーベスタが稼働し、機械収穫率は収穫面積の78.9%と増加傾向にある。

5.製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)操業している。

 分みつ糖工場の令和元年産原料処理量は、平成30年産より5万3875トン減少し、61万7141トン(前年比92.0%)となり、買入糖度(以下「糖度」という)は、前年より0.7度高い14.7度となった(表4)。

 含みつ糖工場の令和元年産原料処理量は、平成30年産より1万2076トン減少し、5万8686トン(同82.9%)となり、糖度は前年より0.7度高い15.2度となった。

 

おわりに

 沖縄県では、令和7年産を目標とする「さとうきび増産計画」および令和3年を目標とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、関係する団体や機関が一丸となって、収穫面積の確保、適期の肥培管理や土づくりなどによる単収向上対策などを推進しており、収穫機をはじめとした農業機械導入の支援も強く推し進めているところである。

 これらの取り組みから、大きな気象災害を受けて大減産となった平成23年産(収穫面積:1万2289ヘクタール、10アール当たり収量:4402キログラム、生産量:54万トン)以降、平成30年産まで、おおむね増産傾向が続いてきた。一方、増産傾向が続く中においても、生産者の高齢化は進行してきており、労働力の不足、作業の省力化や効率化の一層の推進、新たな担い手育成の強化といった課題は、以前にも増して大きくなってきている。

 そのような中、令和元年産のさとうきびは、豊作となった南大東島、北大東島、各種気象の影響が少なかった伊江島や伊良部島を除き、県内のほぼ全ての島で減産となった結果、県全体での生産量も大きく減り、過去58年間で下位から3番目に低い結果となった。その要因について、研究機関や普及組織を交えて検討を進めたところ、気象、その影響を受けたさとうきびの生育、栽培管理といったところから、下記のように整理された。

【減産となった要因について】

・初期生育から生育旺盛期にかけて降雨が多く、日照が少なかった。

・さらに、機械収穫が急速に進展する一方で、それに対応した栽培管理が不十分で、土壌が緻密になっていた。

・これらが相まって、「根の発達が浅いままに地上部が生育し、10月に強烈な干ばつを受け、水分吸収が追いつかず、生長から一気に登熟に向かったことも重なり、一茎重が急激に軽くなった。

・このため、外見(見た目の大きさ)の割に原料茎重が軽く、一方で、糖度は高いという結果となった。

 このように、令和元年産さとうきびの減産要因は、台風および秋口の干ばつといった気象要件に加え、機械収穫による土壌の緻密化、回数を重ねた株出し栽培の増加などの結果であると言える。そのため、速やかな生産回復に向けては、「安定した生産に向けた土づくり」、「機械収穫を前提とした土壌の緻密化の解消、保水性と排水性の改善」、「容易に多収の実現が可能な夏植えによる新植・圃場更新の推進」といったことが重要となる。

 そのため、県では、まず各地域に向け、減産の要因や対策技術の有効性を周知した。その上で、さとうきび生産性向上緊急支援事業や、さとうきび増産基金(セーフティネット基金)等を活用し、土づくりなどを進めつつ、干ばつや病害虫対策などの生産回復対策を進めている。また、国の事業と連携した機械導入の支援などにより、採苗から始まる一連の作業の機械化(機械化一貫体系)の確立を急いでおり、さらに、夏植えの推進による容易な多収、その後の株出しの効率的かつ効果的な栽培管理による多収の実現といった栽培の拡大を促している。これらに加え、農業用水源確保などの生産基盤の整備、優良な品種の育成や普及といった取り組みも引き続き進める。一方、各島々の製糖工場については、安定操業に向けた経営安定対策を図るとともに、新たな政策である働き方改革への対応を急ぎ、人材の確保や省力化設備の整備などに取り組むこととしている。
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