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平成29年度さとうきび研究成果発表会の開催について

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最終更新日:2017年8月28日

2017年7月

鹿児島事務所 小山 陽平
 
 7月19日(水)、鹿児島市の鹿児島県農業共済会館において、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会(以下「糖業振興協会」という。)の主催により平成29年度さとうきび研究成果発表会(以下「発表会」という。)が開催された。
 
 発表会は、毎年生産技術の向上などを図ることを目的に県内のサトウキビ研究者や各地域の優良生産者などが、研究成果や地域での取り組みを発表し、情報を共有することとしている。
 発表会は、今年で第52回目をむかえ、当日は製糖企業、学識経験者、行政関係者、農業団体など産官学のサトウキビ関係者約130名が出席した。
 冒頭、糖業振興協会の村山浩一企画運営委員長があいさつし、「平成23年産以降不作が続いていたが、28年産のサトウキビ生産量は前年比26%増の63万6000トンと6年ぶりに60万トンを超えた。7月1日現在の生産見込み調査では作付面積は前年と同じ約1万ヘクタール、生育状況については、一部遅れが見られるものの全体としては概ね順調である」と直近の生産動向および関係者への敬意を述べた。

1.研究成果発表

 普及や試験研究に係る成果の発表が行われ、熊毛、奄美両地域におけるサトウキビ生産の安定化を図るための課題や、新技術開発の必要性などが示された。
 
  • 奄美地域におけるサトウキビ品種の変遷と栽培型の動向および今後の安定生産の方向性
   (鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 作物研究室長 佐藤 光徳氏)
  • サトウキビ梢頭部における挫折時モーメントの品種間差異及び安定性
   (九州沖縄農業研究センター 主任研究員 服部 太一朗氏)
  •  奄美地域におけるサトウキビ畑の土壌実態と地域別土壌管理
   (鹿児島県農業開発総合センター生産環境部 研究専門員 餅田 利之氏)
  • 半履帯トラクタの特性と新たなサトウキビ管理技術
   (鹿児島県農業開発総合センター大隅支場農機研究室 研究専門員 馬門 克明氏)
  • サトウキビにおけるメイチュウ類の発生と防除
   (鹿児島県農業開発総合センター大島支場 病害虫研究室長 山口 卓宏氏)
 

2.シンポジウム

 「さとうきび生産の回復基調を確かな増産に繋げるために」をテーマとし、さとうきび生産対策本部等の関係者からそれぞれの地域におけるさとうきび増産計画における重点課題の取り組み状況が紹介された。
 
  •  三作栽培型における単収の向上

   (徳之島さとうきび生産対策本部 廣 敬造氏)

  • 与論島におけるさとうきびの増産に向けての取り組み

   (与論町糖業振興会 山下 秀光氏)

 
 徳之島さとうきび生産対策本部の報告では、これまでの春期の適期植付管理の遅滞の一因として、未だ手作業を主流とする採苗作業による作業時間が障壁としてあげられるが、ハーベスタを利用した採苗作業を行うことで作業が軽減され、作業が平準化されることにより生産基盤の強化が図られると報告した。
 続いて、与論町糖業振興会の報告では、(1)新植面積を確保するため、調苗班を育成し、苗の確保を図る(2)与論町糖業振興会による株出し中耕作業などの作業受託の取組(3)小型半履帯トラクタおよび緑肥を活用した生産技術などの新技術の実証、などの具体的な事例が報告された。
 なお、報告後は、各島における苗づくりおよび土づくりの取り組みなどについて、報告者と出席者との間で熱心な意見交換が行われた。

3.特別講演

 三井製糖株式会社研究開発部谷田部治氏から、世界第4位のサトウキビ生産国であるタイにおいて、一大生産地域である東北タイ地域における生産実態等について、「東北タイにおけるサトウキビの多収栽培に向けた生育実態の解明と株出し多収栽培技術の基本的方向」と題して特別講演があった。
 同地域では、単位収量が少ないことが課題とされており、その一因として新植収量は多いものの株出し収量が少ないことが明らかにされた。持続的な生産を進めるため、株出しでの多収栽培の実現に向けての方策および実証試験の取り組みなどについて、報告があった。


 最後に、平成29年度さとうきび生産改善共励会における島別の部の表彰が行われ、10アール当たり収穫量7.7トン(平年比148%)、甘しゃ糖度15.00度(平年比107%)であった与論島が、3年連続で最優秀賞を受賞した。
 
 今回の発表内容が各地域に速やかに普及し、生産回復基調を確かなものとする一助になることを期待したい。
会場の模様
会場の模様
平成29年度さとうきび生産改善共励会の島別の部の表彰
平成29年度さとうきび生産改善共励会の島別の部の表彰
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農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:鹿児島事務所)
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