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平成30年度さとうきび研究成果発表会の開催について

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最終更新日:2018年9月6日

2018年7月

鹿児島事務所 小笠原 健人
 
 7月18日(水)、鹿児島市の鹿児島県農業共済会館において、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会(以下「糖業振興協会」という)の主催により平成30年度さとうきび研究成果発表会(以下「発表会」という)が開催された。

  発表会は、毎年、生産技術の向上などを図ることを目的として、県内のさとうきび研究者や各地域の優良生産者などが、研究成果や地域での取り組みを発表し、情報を共有する場となっている。
 発表会は、今年で第53回を迎え、当日は製糖企業、学識経験者、行政関係者、農業団体など産官学のさとうきび関係者約130名が出席した。
 冒頭、糖業振興協会の柳橋浩一専務理事(県農産園芸課長)があいさつし、関係者への謝辞を述べた後、「平成29年産の収穫面積は、豊作であった28年産とほぼ同等の9900ヘクタールを確保できたことから、その生産量が期待されたが、8〜10月にかけての度重なる台風による倒伏や折損、塩害により、生産量は結果として、28年産の83%に当たる52万8000トンに留まった。品質面においても、一部の地域では著しい低糖度となり、生産者、製糖会社にとって厳しい1年であった。30年産については、現在のところ台風・干ばつによる被害も少ないことから、28年産を超える豊作を期待している。」と、直近の生産動向の報告とともに30年産の豊作への期待を述べた。

1.研究成果発表

 試験研究に係る以下の6課題の発表が行われ、平成29年産さとうきびの低糖度被害を受けて、熊毛、奄美両地域におけるさとうきびの品質・生産の安定化に向けた課題が示されるとともに、課題解決に向け、現在行われている試験研究の内容および進捗状況、今後の方向性などが示された。

 〇本県の平成29/30年期さとうきびの「低収」「低糖度」の実態
  (鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室 主任研究員 山根 一城氏、
 同徳之島支場作物研究室 研究専門員 西原 悟氏)
 〇新たな緊急プロジェクト(低糖度解析)の計画概要
  (独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター
 種子島研究調整監 安達 克樹氏)
 〇生産安定化に向けた育種のアプローチ
  (九州沖縄農業研究センター 主任研究員 服部 太一朗氏)
   ※当日欠席のため、代わりに同センターの安達克樹種子島研究調整監が 説明
 〇熊毛地域向け奨励品種選定の方向性
  (鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室 主任研究員 山根 一城氏)
 〇病害抵抗性検定の現状と役割 
   (鹿児島県農業開発総合センター大島支場病害虫研究室 研究員 福元 智博氏)
 〇病害抵抗性のマーカー選抜を踏まえた育種のアプローチと期待
   (鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 作物研究室長 佐藤 光徳氏、
   トヨタ自動車株式会社アグリバイオ事業部 主任 森 昌昭氏)

2.シンポジウム

 「さとうきび生産の回復基調を確かな増産に繋げるために」をテーマとし、各島のさとうきび増産計画における共通課題となっている農作業受託組織の育成や担い手を中心とした経営規模の拡大に向けた奄美大島と徳之島の取り組みについて以下の事例報告があった。
 

 〇奄美大島におけるさとうきび栽培作業受託の取組
  (農事組合法人奄美市さとうきび受託組合 理事 益満 正治氏)
 〇さとうきびの経営規模の拡大を目指して 〜南郷 誠氏(徳之島町)の経営事例紹介〜
  (徳之島さとうきび生産対策本部 保岡 健太氏)
 
  農事組合法人奄美市さとうきび受託組合からは、トラクター、ハーベスターなどの機械を導入し、耕耘から収穫までの各種作業を受託するとともに、生産者の高齢化などによって発生した遊休地を再生・利用し自らさとうきびを栽培することなどを通して地域の高齢者の作業負担を軽減することで、さとうきび生産を維持しようとする取り組みが報告された。また、優良種苗の原苗ほを設置し、優良品種を計画的に普及することなどにより、生産安定を図る取り組みも報告された。
 続いて、徳之島さとうきび生産対策本部からは、平成29年度さとうきび生産改善共励会(糖業振興協会主催)の農家の部で農畜産業振興機構理事長賞を受賞した南郷誠氏の経営事例の紹介を行い、収穫作業の受託に当たり、作業の効率化や委託者の管理作業のサポートを充実させることなどにより顧客を確保することで、経営の安定を図る取り組みが報告された。
 なお、事例発表後は、各地域における土づくりの取り組みや植付け時の畦幅の設定方法などについて報告者と出席者との間で活発な意見交換が行われた。
 



 最後に、鹿児島県農業共済組合連合会から、さとうきび共済および平成31年1月から新たに始まる収入保険について、両制度の仕組みなどについて説明がなされた。
 
 今回の発表会においては、平成29年産が低糖度であったこともあり、安定的な生産という点に重点をおいた発表や意見が多く見られた。今回の発表内容が速やかに現場に普及し、さとうきび増産の一助となることを期待したい。
あいさつする柳橋専務理事
あいさつする柳橋専務理事
会議の模様
会議の模様
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農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:鹿児島事務所)
Tel:099-226-4731