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【レポート】結束により持続的な取引を実現している 加工用キャベツの取組み

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最終更新日:2013年6月25日

調査情報部 村田 宏美

はじめに

 生活スタイルの変化などを背景に、日々の食生活が中食や外食となることが増えてきています。このような食生活の変化は、野菜の需要にも影響しています。
 最近、加工・業務用向け需要が増えていることが好例で、この加工・業務用需要のうち3割を輸入野菜が占めています。野菜の自給率を高めるには、国産野菜の加工・業務用向けの利用拡大が重要です。
 農畜産機構は、昨年8月、国産野菜の利用拡大に向け、加工用キャベツの契約取引を行う関係者を調査しましたのでご紹介します。

契約取引のスタート

出荷の際は中身をチェック
出荷の際は中身をチェック
 徳島県のJA板野郡は、生産者の所得を安定させるため、平成18年より加工用キャベツの生産を始めました。
 一方で、香川県の滑マ音寺地方卸売市場(以下「観音寺市場」)も加工用需要の増加に注目し、流通経費のかからない近隣で、加工用野菜の調達先を探していました。観音寺市場は市場を開設するとともに青果の卸売を行っており、加工用キャベツの実需者との取引がありました。
 双方のニーズが一致し、加工用キャベツの契約取引がスタートしました。現在では、JAとくしまが取りまとめて観音寺市場と契約を結び、11〜6月の出荷期間で加工用キャベツの契約取引が行われています。

作柄状況のこまめな報告

 契約は作付面積を基にしており、取引数量の明記はありません。契約に基づいて作付し、一定の規格にあったものは、全て単一の契約単価で取引されます。一方で取引数量は、天候などに左右されることになります。
 作付面積計画や月ごとの出荷予定数量は、毎年6月、JA板野郡加工用キャベツ部会の総会において決定されます。
 出荷量は観音寺市場でもおおまかには把握できますが、JA板野郡、全農とくしまの担当者やキャベツ部会の部会長が毎月ほ場を巡回し、作柄状況を観音寺市場へこまめに報告しています。これにより、観音寺市場は販売計画が立てやすいなどメリットがあります。
コンテナ

不作時の対応

 不作時の対応として大切なことは、産地との情報交換を密に行い、早めに対応できる体制を整えておくことです。
 観音寺市場は、作柄状況の報告をもとに、入荷が多かった時期のキャベツを自社冷蔵庫で貯蔵し、調整しながら不足に備えています。
 また平成23年は、定植期に2度の台風で被害を受け、月ごとの出荷予定どおりの出荷が困難となりました。この時は、ほ場からサンプルのキャベツを採って関係者で協議し、出荷規格をやや小ぶりに変更することで当面の必要量を確保しました。
 買取価格も、基本的には契約単価を用いるのですが、小ぶりでの出荷となることから、あえて単価を引き上げ、生産者の収入にも配慮しました。

今後の目標と課題

 契約取引関係者は、この取引良好であることから現在の取引数量を増やしたい考えです。
 取引数量が増えると、天候不順などによる不作時のリスクも増えるので、その対応への備えも必要となります。また、コスト低減も課題となります。
 現在は大型コンテナで出荷し、コスト削減に努めていますが、物流コストを抑えることはもちろん、計画的な栽培を推進していくことで、貯蔵コストの低減に努めていきたいと考えています。

おわりに

 輸入野菜との価格競争が激しさを増す中、「安心・安全」で消費者の信頼感がある国産野菜。しかし、安価な輸入野菜にシフトする業者もみられるようです。
 今回の事例では、関係者間のきめ細かなコミュニケーションにより信頼関係を構築することによって、柔軟な対応や安定的かつ持続的な取引が可能となっていました。
 なお、機構のホームページに『生産者、流通関係者、実需者の結束による加工用キャベツの取り組み』と題した詳細なレポートを載せておりますので、こちらもぜひご覧ください。
(写真提供:全農とくしま)

URL:生産者、流通関係者、実需者の結束による加工用キャベツの取り組み
http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1211/chosa02.html

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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196