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【alicセミナー】放射能と食の安全

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最終更新日:2013年6月25日

(財)食の安全・安心財団 理事長/倉敷芸術科学大学学長
唐木 英明氏

唐木英明氏
唐木英明氏
 平成25年1月21日に開催したalicセミナーでは、「放射能と食の安全」をテーマに、リスク管理およびリスク評価を正しく理解することの重要性などについて、今日までの報道の流れを振り返って、ご講演頂きましたので、その概要をご紹介します。

暫定規制値の決定

 東京電力福島第一原子力発電所事故直後の平成23年3月17日、厚生労働省は、食品衛生法の規定に基づく食品中の放射性物質(放射性ヨウ素と放射性セシウム)の食品中の暫定規制値(放射性ヨウ素:飲料水300Bq/kg、野菜類2000Bq/kg等、放射性セシウム:肉・卵・魚・その他500Bq/kg等)を定めました。
 これは、スリーマイル島原発事故翌年の昭和55年に、原子力安全委員会が示した原子力施設の防災対策のための飲食物の摂取制限に関する指標を、そのまま食品衛生法において食用に供するための販売等を規制する暫定規制値としたものです。そもそも、原子力安全委員会が示した指標は、「摂取制限を講ずることが適切であるか否かの検討を開始するめやすを示すもの」とされています。
 3月20日に、厚生労働省は、食品安全委員会に対して食品健康影響評価についての意見を求め、29日に食品安全委員会が緊急取りまとめを公表、これを受けて、4月4日に厚生労働省は、当分の間、現行の暫定規制値を維持するとしました。

食品から放射性物質は検出

 3月11 日の事故後、15〜16日には多量の放射性物質が一度検出されて低下し、21日の降雨により放射性物質が再度検出されたものの、その後の放出は減少しています。
 暫定規制値が設定された直後の3月19日から原乳やホウレンソウで値を超える放射性ヨウ素が検出され、その後、原子力災害対策本部長から県単位の出荷自粛要請の指示が出されました。
 21〜22日に、水道水から乳児用暫定規制値を超える放射性ヨウ素が検出されたことから、厚生労働省は母乳中の放射性物質濃度を調査しました。結果は不検出または微量でしたが、安全だという報道は注目されませんでした。
 食品中の放射性セシウム検査結果では、事故直後にホウレンソウ、キャベツ、原乳等で規制値を超過したものが見つかり、その後、いかなご、しいたけ、5月以降はたけのこ、茶、川魚、最近ではジビエというように、規制値越えの食品の種類も変化しました。また汚染の最大値は、事故直後が最高で時間とともに低下しています。
 しかし、一連の騒動が一段落した7月中旬に、高濃度の放射性セシウムが含まれた稲ワラを給与されたことによって牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出され、こうした牛肉がすでに食用として流通していたことが判明したため、その後の食品不信を招くことになりました。

規制値を引き下げ

 食品安全委員会は、10月27日、正式に厚生労働大臣に対して食品健康影響評価の結果を答申しました。これは、「放射線による影響が見出されているのは、生涯における追加の累積線量がおおよそ100mSv以上」という難しい表現で、これに対して国民から多くの意見が寄せられました。
 政府においては、10月28日に厚生労働大臣が年間の放射性セシウムの暫定基準値の算定根拠となっている年間被ばく線量を5mSvから1mSvへ引き下げ、4月から適用するという方針(例えば放射性セシウム:肉・卵・魚・その他100Bq/kgに引き下げられる)を突然、明らかにしました(図1)。この改正について諮問を受けた文部科学省放射線審議会は「事故後1年での引き下げは問題を引き起こす」と異例の注文を付けました。この規制値の引き下げを引き金に、食品関係企業では規制値を下回る自主基準を設けるケースが相次ぎました。農林水産省では、過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため、被ばく線量の上限を政府基準に基づいて判断するように求めましたが、市民団体から強い抗議を受けました。

政策決定と科学の役割

 規制値の素早い設定、検査体制の十分な整備、広域出荷規制の即時実施等、一連の対応によって食品の安全は守られたと考えています。それにもかかわらず非常に厳しい国民の不信感があるのは、原発事故とその処理に対する政府不信、どんなに少しでも怖いという放射能に対する恐怖、科学者の表現に難しいと受けられる面があることも一因でしょう。
 リスク評価とリスク管理が混同されていますが、科学者は科学的事実を述べる助言者としての役割(リスク評価)に徹し、政策決定を制約することはありません(図2)。科学に基づくリスク評価や国民感情、国際的動向、経済への影響などを参考にしてリスク管理策を作るのは政策決定によるものです。正しい判断を行うために、科学コミュニケーションやリスクコミュニケーションを各段階で行っていく必要があります。
図1.2

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