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米国の肉牛生産状況

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最終更新日:2014年5月7日

調査情報部 山神  尭基

はじめに

 米国は、主要牛肉輸出国の一つであり、日本の牛肉輸入量に占める割合は約20パーセントと、豪州に次ぐ牛肉輸入先となっています。一方で、米国の生産現場では、2011年、2012年と連続して発生した干ばつによる牛肉生産への影響が懸念されています。

牛飼養頭数の動向

 米国の牛飼養頭数(乳用種を含む)は、一般的に約8〜12年の間隔で増減(キャトルサイクル)を繰り返すとされています。しかし、飼養頭数は2008年以降、干ばつの影響により、子牛を産む繁殖雌牛のと畜が進んだことなどから減少の一途を辿ってお
り、米国農務省(USDA)によると、2014年1月1日時点の全米の牛飼養頭数は、前年比1・8パーセント減の8773万頭と、過去最低を記録しました(図1)。
図1

肉牛生産の流れ

 米国の肉牛生産は、大きく2つのパターンに分けられます。1つ目は、繁殖農家、フィードロット(肥育農家)を経由してパッカーと呼ばれる牛肉加工業者へ出荷される
流れです。2つ目は、繁殖農家の肉牛を育成農家(7〜9カ月齢の子牛を育成する農家)が買い取り、その後、フィードロットで肥育されパッカーへと出荷される流れがあります(図2)。
このように、米国ではほとんどの肥育牛が直接、パッカーへ出荷されており、市場経由で販売される日本とは異なっています。
図2

繁殖雌牛頭数の動向

牛
 米国の主要な繁殖雌牛生産州は、南部のテキサス州や中西部のネブラスカ州などとなっています。しかし、特に、テキサス州では、干ばつによる放牧環境の悪化にともない繁殖雌牛のと畜頭数が増加したことから、飼養頭数は大きく減少しています。繁殖雌牛頭数の減少は、肥育向けとなる子牛頭数に影響を与えることになります(図3)。
図3

肥育牛頭数の動向

 米国の主要な肥育牛生産州は、フィードロットを数多く抱えるテキサス州やネブラスカ州、また、カンザス州などが中心となっています。テキサス州は繁殖雌牛と肥育牛の飼養頭数がともに全米第1位を誇っていますが、干ばつの影響によりいずれも大きく減少しています。
一方、飼養頭数第2位のネブラスカ州や4位のアイオワ州は、トウモロコシの主要生産州であり、他州よりも安価に肉牛の飼料となるトウモロコシを手に入れることができるため、テキサス州と比べ肥育牛飼養頭数の減少幅は小さくなっています。
図4

まとめ

 このように度重なる干ばつは、繁殖雌牛や肥育牛頭数に影響を与えており、2014年の米国の牛肉生産量は減産が見込まれています。USDAは、飼料価格の下落に伴い、肥育牛農家での飼養期間が延びることで、1頭当たりの枝肉重量の増加を見込んでいます。
しかし、肉牛のと畜頭数が減少することから2014年の牛肉生産量は前年比5・3パーセント減の1104万5000トンと見込んでいます。米国の牛肉生産の減少は、輸入国である日本にも影響を及ぼすとみられています。

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