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【トップインタビュー】海外での料理修業中に悟った「和食」の素晴らしさ    〜ライフワークは、和食の魅力を世界に発信すること〜

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最終更新日:2015年11月5日

一般社団法人和食文化国民会議 副会長 (料亭菊乃井 主人) 村田吉弘 氏に聞く

村田

 ユネスコ無形文化遺産に登録された和食について、日本人の関心が高まり、海外でも注目され人気になっています。そこで、和食文化の保護・継承を推進されている一般社団法人和食文化国民会議の村田吉弘副会長にお話を伺いました。

副会長は和食文化国民会議の発起人になられていますが、どのようなお考えで発起人になられたのでしょうか

 和食文化のユネスコ無形文化遺産登録には、和食文化を維持継承し、それらを牽引する、国が定めた団体があることが必要でした。そこで当時、一緒にユネスコ無形文化遺産登録に向けた活動をしていた協議会の座長であった熊倉功夫先生(静岡文化芸術大学学長)(注)に会長になっていただいて、発足したのが和食文化国民会議です。世界に向けて、またユネスコに対して、国を挙げて和食文化国民会議が中心となって和食文化を維持継承していくと約束したことになります。

(注)alic 2014年3月号トップインタビュー「和食の歴史と食材」熊倉功夫氏
   http://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000696.html


和食文化国民会議では、どのような活動をされているのですか。

 私たちは、ユネスコにも約束したように『伝えよう、「和食」文化を。』をスローガンに、 和食文化の普及啓発、技や知恵の伝承などの事業を行っています。その一つに11月24日を “いい日本食”「和食」の日と制定し、和食文化に親しむ機会の創出に努めています。

なぜユネスコ無形文化遺産登録を目指されたのですか。

 日本は、全国各地で自然に飲める軟水が豊富で、毛細血管のように川が流れ、山の豊富なミネラル分を大地に運んで、種を蒔けば農産物が出来るという肥沃な土地が広がっています。周囲も海に囲まれ、魚種も豊富です。つまり、とても豊かな国なんですね。
 日本の人口は、50年後には8000万人程度まで減少すると言われています。その時には、子どもを除いた60歳までの労働人口の約4割が、残りの6割を支える国になるわけで、国際競争力や経済発展には限りがある。このままでは農家の高齢化が進み耕作放棄地も増えて、食料自給率も大きく落ち込んでいる可能性があります。せっかくの豊かな国を守るためにも、この50年間でお米の消費量を半分にした食生活を戻していくためにも、ユネスコ無形文化遺産登録をきっかけに和食に興味を持ってもらい、美味しい日本の農畜産物を自覚して、自国で消費し、世界にも売ることによって第一次産業を復活、発展させ、50年後の日本の子どもたちが飢えないようにしたいと思っています。

修業中のフランスで感じた日本料理の魅力とは、どのようなものでしたか。

 フランス料理の修業中に、日本料理の文化的なクオリティは、フランス料理に決して引けを取るものではないと思ったのです。それで日本料理をやると決めたのです。それからは日本料理を世界に広めることをライフワークにしようと思って、20歳から43年間ずっとそればっかりです。
 赤ちゃんは生まれてから3カ月お母さんのおっぱいしか飲みませんよね。お母さんのおっぱいの中には油脂分と糖質とうま味の成分が入っています。これらの3つの成分は脳の中の快感中枢を刺激して、ドーパミンというホルモンを出します。すると、また飲みたくなり、飽きないようにできているのです。大人になってもその機能は残っていて、糖質はでん粉ですから各民族それぞれ、パンや米、ナンなど主食として食べています。
 和食の特異な部分ですが、他の国の料理は油脂を中心に構成されていますが、和食は世界で唯一、うま味を中心に料理を構成しているため、非常にカロリーが低い。油脂は1tで9kcalあるわけですが、うま味のカロリーはゼロです。懐石料理は65品目、少量多品種で全部食べても1000kcalしかないヘ ルシーな食事なのです。
 一方、フランス料理は23品目でデザートを食べずに2500kcalです。今、世界で和食が非常にブームになっている原因の一つは、高品質で少量多品種、カロリーが低くヘルシーな点です。海外でもうま味を使うシェフが増えてきました。今までよりもライトでヘルシーな料理を作るシェフが、世界中で評価されており、その根源は日本料理なのです。

海外でも日本食レストランが増えているようですが。

 海外の日本食レストランは、今年2月 の農林水産省の調査では約8万9000 店になっています。2年前と比べて約 3万4000店も増えたわけですからこの 勢いってすごいですよね。その一部に対して「あ んなものは日本料理と言えるものではない」 という方もいらっしゃいますが、僕は日本料 理といってもらうだけでもありがたいと思っ ています。それらを許すも許さないも、そ れらを本物に近づけるように様々な機会を とらえて、本物の日本料理へ誘導できるよ う情報提供をしていきたい。そうすることに よって、日本料理の食材が世界の食材にな ると思っているのです。既に、発酵調味料で ある醤油は、世界の調味料になっています。

日本の食材が世界に輸出されていくということですか。

 和食の普及に合わせて、国産の食材を輸出するシステム作りが大切だと思います。やっぱり、和牛など日本の農畜産物に対しての、信頼度、安心感、クオリティの高さは、世界の認めるところです。
 ただ、海外で日本の農畜産物が十分に輸出されてないと感じることがよくあります。和牛や日本銘柄の農畜産物を海外のお店で見つけて、よく見てみると日本産でないことが多い。日本酒も「純米吟醸」と漢字のラベルで販売されているのに、外国産だったりします。せっかく、海外で和食の人気が高まっているのだから、このチャンスをとらえて海外への輸出システムを構築すべきです。日本の和牛が、それなりの値段で輸出できたら、これまでの海外産WAGYUの需要を全部オセロゲームのように日本産和牛にひっくり返せると思います。そのためにも、日本産を証明するシステム作りをする必要があると思います。

農畜産物の生産者に望むことがありましたら教えて下さい。

 日本の農業は高齢化や耕作放棄地の増大などの課題もあると思いますが、国内の生産者はすごく頑張っていただいていると思います。なんとか後継者を見つけて生産を続けていただきたい。
 日本の農畜産物は、世界でも本当にトップクラスです。日本のかぶを海外に持って行くと、彼らは「まるでフルーツのようだ」と言います。確かに、こんなジューシーで美味しいかぶは、日本にしかありません。ヨーロッパの野菜が美味しいという人もいますが、日本のものは品質が高く、安心・安全な点で日本の消費者は幸せです。

食育にも取り組まれているのですか。

 私は、食育の基本は子どもたちに日本の国の豊かさを知ってもらうことと考えています。そのためにも、給食が大切です。出来る限り、各地で採れた食材を提供する。例えば、福井県の小浜市では、畑で出来たものを、農家の方がグループを作って、学校へ持ち込みます。各学校の給食で、おばちゃんたちが一生懸命に皮を剥いて、おかずを作り、ご飯は地元のお米を炊いて出している。だから、運んでくれているおっちゃんや給食のおばちゃんは、みんな子どもに声を掛ける。「みんな、今日の給食どうやった、美味しかったか」って言いながら帰っていきます。福井県の給食は素晴らしいですよ。
 このように、生産者と子どもたちの間を近づけないといけないと思います。京都でも、食育で子どもを畑に連れて行ったりしますけれども、「本当はトマト嫌いだけど、先生が食べてみと言うから食べたら、美味しかった」って本当に小学校2年生の子どもが言っています。こういったことが、どんどん行われるような社会にしていかないといけないと思います。

若い人にどう和食文化を伝えていきたいとお考えですか。

 うちの料亭にも、女子大生のお客さまが食事に来られますが、彼女たちにとっては料亭の和室にある畳や床の間も珍しいのだそうです。そんな場所で、「このお料理とっても綺麗」などと言いながら食事を楽しんでいただいています。ある時、食事が終わって「どうやった」と聞いたのです。すると、「ショックやった」と。「君らショックやって言うほどなんか変なもの出したか」と聞いたら 「とっても美味しかったけど、それが凄い刺激を受けて、ショックを感じた」と言うのです。いわゆるカルチャーショックです。
 でも、何か感じるものがあったという話を彼女たちから聞くと、なるほどと思いまし たね。民族が作ってきた究極的な食事やその形態というのには、その民族が初めてそれに触れたとしても、血の中に受け継がれた DNAの中にそれらを感じる何かがあるのだろうという風に僕は感じています。それが、 文化なのだろうなという気がしました。
 ですから、若い人が洋食を好んで食べていても、いずれ、自国の民族が作ってきたものに引き戻されて行くのだろうなという気がするんですよ。

今後取り組みたいことがありましたら教えて下さい。

 和食文化を世界に普及させるには、日本人だけが日本料理を作れるということではだめだと思うのです。ですから、世界各国でも日本料理が勉強できるよう、私が理事長を務める日本料理アカデミーで「日本料理大全」を英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語の5ヵ国語で製作しています。日本料理を学ぶ方の教科書となればと思っています。それから、日本料理の検定制度を充実させ、日本語以外に英語でも受験できるようにして、海外でも本物の日本料理の調理人を目指してもらえるよう取り組むとともに、和食の魅力を世界に発信し続けたいと考えています。

一般社団法人和食文化国民会議 副会長(料亭菊乃井 主人)村田 吉弘 氏

昭和26年      京都の老舗料亭「菊乃井」の長男として生まれる。
              立命館大学在学中にフランス料理修行のため渡仏
              大学卒業後、名古屋の料亭「か茂免」で修行
昭和51年      実家に戻り「菊乃井木屋町店」を開店
平成5年        株式会社菊の井代表取締役に就任
平成23年7月〜  日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会 委員、「和食」の保護・継承に向けた検討会委員 等を務める。
平成27年2月   一般社団法人和食文化国民会議の副会長就任
              現在NPO法人日本料理アカデミー理事長。日本 食・食文化普及検討委員会委員
            現代の名工、地域文化功労者(芸術文化)な ど、数々受賞

村田

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