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【レポート】中国の牛肉需要

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最終更新日:2015年11月5日

畜産経営対策部(前調査情報部) 木下 瞬

 中国では、経済成長により牛肉の消費が伸びています。これにより牛肉の輸入が増えており、2013年の輸入量が前年比4.8倍の29万4224tとなるなど、その動向は国際需給に大きな影響を与えるようになっています(図1)。そこで、今回は、牛肉輸入とその仕向け先を中心に中国の牛肉需要動向について紹介します。

近年急増した牛肉輸入

 2013年に急激に伸びた牛肉の輸入量ですが、経済成長の鈍化や在庫過多になったことなどが要因となり、2014年は、前年比1.3% 増の29万7949tと、やや落ち着きをみせました。しかし、業界団体である中国肉類協会は、積み増しされた在庫が消化されれば、今後の輸入量は増加すると見込んでいます。
  現在、最大の輸入先は、輸入量全体の約5割を占める豪州で、これにウルグアイ、ニュージーランド(NZ)、カナダと続きます。近年、中国は国内需要を満たすため、輸入先の多角化を図っており、ほかに、アルゼンチン、コスタリカ、メキシコ、ブラジルおよびアイルランドも対中輸出が可能な国となっています。さらに、2003年以降、牛海綿状脳症(BSE)が要因で輸入が停止されている米国産牛肉の輸入が再開されるかどうかも、今後注目されるところです。

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輸入牛肉は主に外食産業へ

 輸入牛肉の約1割を占める冷蔵牛肉は高級牛肉が多いため、仕向け先の大部分が、高級ホテルやレストランとなっています(図2)。 特に、豪州やNZ、カナダ産などの牛肉は、北京、上海、広東など都市部において、高級中華料理やステーキ、焼き肉などに利用されています。&nbsp;<br>  一方、輸入量の約9割を占める冷凍牛肉も、主なユーザーは、ホテルやレストランなどの外食産業ですが、食肉加工業者やスーパーなど小売業者の割合も多くなっており、冷蔵牛肉に比べて仕向け先は多様化しています(図3)。外食産業に次いで多い加工業者向けの冷凍牛肉は、主にビーフジャーキーなど伝統的な牛肉製品に加工されています。

グラフ

消費量・輸入量はともに増加の見通し

 中国農業部が公表した「中国農業展望報告(2015〜2024)」では、経済の発展や人口の増加に伴って、牛肉消費量は増加し、2024年には877万t( 2014年比 22.3%増)になると推測しています。生産量の増加も見込まれてはいるものの、消費量の伸びの方が大きくなるため、2024年の輸入量は50万t(同 19 .9%増)まで増加すると予測されています。ただし、2020年以降については、豚肉、鶏肉などの食肉消費がさらに多様化するため、牛肉消費の伸びは緩やかになるとも見通しています。
 また、輸入牛肉の価格が国産牛肉の価格を下回る状況になっているため、国内メーカーは、安価で良質な牛肉を求めて、農場買収や外資系企業との提携により、海外で牛肉を生産、調達する動きも活発化すると見られています。

 中国では、都市化が進展し、出稼ぎで農村から都市部に出てきた労働者が牛肉を消費するようになることでさらに消費が増え、一段と需給のギャップが拡大しています。中国は、国内生産の大幅な増加が望めない中、今後、輸入牛肉の調達において、日本とこれまで以上に競合していくことが予想されています。

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【参考】畜産の情報2015年7月号「中国の最近の牛肉需給動向」
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2015/jul/wrepo02.htm

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