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【第一線から】でん粉原料用かんしょを基礎にした経営を伝えて、担い手を育てる〜いぶすき地域でん粉原料用かんしょ部会長 前村千香男さん〜

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最終更新日:2016年9月7日

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いも

 鹿児島県薩摩半島の南部に位置する南九州市は、お茶を代表とする農業が盛んな地域です。また、かんしょ(さつまいも)の生産量が日本一の鹿児島県の中でも主要な産地の一つです。鹿児島県と宮崎県では、スーパーマーケットなどでよく目にする青果用の紫色のかんしょだけでなく、白色のかんしょも生産されています。これらのかんしょは、菓子などの食品や工業用の糊、、医薬品などに利用されるでん粉の原料となる品種で、代表的な「シロユタカ」をはじめ、今後の生産拡大が期待される新品種「こなみずき」などがあります。
 今回は、南九州市で、JAいぶすきの組合員で構成されるいぶすき地域でん粉原料用かんしょ部会の部会長であり、地域生産者のリーダーでもある前村千香男さん(78歳)のかんしょ生産や担い手の育成など地域農業への情熱を紹介します。

◆でん粉原料用かんしょ生産で経営安定

イメージ

前村さん

 前村さんは、妻の淳子さんと娘婿の3人で、かんしょ7ha(うちでん粉原料用2ha、焼酎原料用3ha、青果用2ha)とキャベツ3haの約10haを作付けしています。以前は牛を育てる畜産農家でしたが、10年ほど前にかんしょ中心の経営へと転換しました。
 前村さんが作付けしている作物のうち、でん粉原料用かんしょは、形や大きさに取引の規格がないため、比較的手をかけずに栽培でき、他の作物に労力をかけられるメリットがあります。
 さらに、制度に基づく交付金により安定した収入が見込めるため、「でん粉原料用かんしょの生産を経営の基礎として、その上で他用途のかんしょやキャベツなどの生産を行っていくことが、耕種農家の経営の安定につながる」と前村さんは話します。さらに、前村さんは農作業を工夫することにより、効率的な作物生産を行っています。前村さんの畑がある頴娃い地区は、開聞岳の噴火の影響による火山灰の黒土という恵まれた土壌地帯であるため、前村さんはその土壌が持つ地力を活かした施肥を行っています。また、地温の調節や雑草防除のために用いるマルチフィルムは通常ビニール製のものが多く、使用後はフィルムを剥がす必要がありますが、前村さんは、土壌中の微生物の働きにより分解されフィルムを剥がす必要のない生分解性マルチフィルムを利用しています。

◆地域の担い手を育てる

体制

 農業を学ぶため、アメリカに留学していた経験を持つ前村さんは、アメリカならではの大規模な経営を目の当たりにし、日本の農業との違いを実感しました。帰国後、アメリカとは環境が大きく異なる日本の農業のあり方を考え、小規模であるからこそ、生産者にとって身近にある地域内の関係機関や他の生産者などとの連携による農業の体制作りが重要であると感じました。そこで、地域の生産者などに「地域の連携による生産体制作りが安定した経営につながる」と話し、自らも研究機関からは病気発生時の速やかな分析と防除対応の方法を学び、畜産農家や堆肥センターからは良質な堆肥を入手するなど、地域との連携に力を入れています。
 この地域連携の中で、JAいぶすきからの依頼を受けて、新品種の「こなみずき」の生産に積極的に取り組むなど地域農業の新たな可能性を模索しています。また、年に4〜5回開かれる部会では、部会長として他の生産者との情報交換を行い、地域連携の体制作りに精を出しています。さらに、地方自治体から若い生産者の育成・指導に取り組んでいると認められた指導農業士として、率先して地域連携を図り、自らの工夫を経験の浅い生産者に伝えることで、地域の次の担い手を育成し、産地の活性化に貢献しています。

◆でん粉原料用かんしょを支える価格調整制度

仕組み

 国内産いもでん粉は、主要な輸出国と比べ、原料作物の生産条件や立地条件に大きな差があります。このため、alicは「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、輸入でん粉等から徴収した調整金を財源に、国内のでん粉原料用いも生産者とでん粉製造事業者を支援しています。(特産業務部)

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