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【alicセミナー】「最近の韓国の牛乳・乳製品需給動向」「中国の酪農乳業事情」

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最終更新日:2017年1月4日

 バターや脱脂粉乳などの乳製品を輸入している日本にとり、多くの国々と自由貿易協定(FTA)締結に取り組んでいる隣国韓国や牛乳・乳製品の消費量の増加が見込まれる中国の動向は大変気になるところです。そこで、11月18日(金)のalicセミナーでは、alicが行った両国の牛乳・乳製品事情の調査結果について、調査情報部 総括調整役 伊佐雅裕、同部 木田 秀一郎から報告をしたので、その概要を紹介します。
 

最近の韓国の牛乳・乳製品需給動向

割合

 韓国の酪農家戸数は、小規模層を中心に減少しましたが、大規模層を中心とした規模拡大と1頭当たりの乳量の増加により、生乳生産量は、酪農家戸数の減少前とあまり変わりません。一方で、韓国は積極的なFTAの締結により、乳製品の輸入量は増加しています。そのため、国内の期末在庫量は、2014年は前年の2・5倍、2015年も積み増しとなっている状況です。
 近年の牛乳・乳製品の自給率は6割前後で推移しており、国産生乳の7割が牛乳類(乳飲料を含む)へ仕向けられています。一方、輸入品の7割がチーズです。ピザの普及や韓国料理に利用するなどの食の多様化によりチーズの消費量が伸びていることが背景にあり最近は韓国産カマンベールチーズの生産もしています。それでも、牛乳類の需要の大きな増加は見込めないことから、韓国は生き残りをかけ、中国を中心とする海外市場への輸出に活路を模索しています。乳製品の輸入品志向が高い中国へは、育児用調整粉乳(育粉)の輸出が急増していますが、LL牛乳、チルド牛乳、乳飲料などの輸出も増加しています。
 今後も、FTAなどの推進を強化している韓国酪農の動向が、注目されるところです。
 

中国の酪農乳業事情

 近年、中国は海外から多くの乳製品を輸入しており、乳製品の国際市場で大きなシェアを占めるようになりました。特に、2008年中国で起こった粉乳等へのメラミン混入事件以降、消費者は国産乳製品の安全性に不信を抱き、海外製品志向が強くなってきました。輸入品目の中で最も多いものは、育粉で次いで全粉乳や脱脂粉乳などの粉乳類となっています。育粉はEUからの輸入が最も多く、また、全粉乳のほとんど、脱脂粉乳の半分は、FTAを締結しているニュージーランド産が占めています。このような状況の中、政府は国産乳製品の信頼を取り戻すべく取り組んでいます。2015年には食品安全法が改正され、育粉製造における配合割合の登録を義務化するなど厳しい規制を設けました。一方で外国産にも同様の措置を講じることにより、内外格差の是正を図っています。
 また、最近の乳価の低迷を受けて、生産サイドでは、地産地消や6次産業化、有機認証などへも取り組み、牛乳・乳製品への高付加価値化を図る動きもあり、中国の今後の動きにも注視が必要です。

 今回のセミナーに関する記事は、月報『畜産の情報』2016年9月号に掲載しておりますので、こちらもご覧ください。
 
 
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