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【レポート】カナダの豚肉産業の現状と今後の見通し

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最終更新日:2017年3月1日

輸入割合
 日本で食べられている豚肉の約半分は輸入品です。国別の割合をみるとアメリカが30%程度、次いでカナダが20%程度となっています。2015年度に日本がカナダから輸入した豚肉は約17万tで、若干の増減はありますが、この数字は5年前と大きく変わることはなく、今ではスーパーなどの量販店において、カナダ産の豚肉は、輸入豚肉のおなじみの商品となっています。そこで今回は、カナダの養豚・豚肉産業について紹介します。

カナダ品質保証マークが目印

マーク
 安心で高品質な豚肉の生産・供給に力を注ぐカナダの豚肉業界は、2016年、新たな品質保証マークを発表し、国際的な認知度の向上に努めています。この「カナダ品質保証マーク(図2)」を使用するには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
 たとえば、豚肉の生産者は、カナダ品質保証プログラムに取り組まなくてはいけません。このプログラムは、豚肉の安全性を脅かす可能性のある農場内の危険因子の低減、または排除するための最良の管理実務が示されています。このプログラムでは、生産者は、日々の作業について定められた手順に従うことに加え、農場の作業記録を適切に保管し、毎年訓練を受けたプログラムの検証者による記録の監査を受けなければなりません。初年度とそれ以降は3年に1度、検証者による農場での実地検査も行われます。また、豚肉加工工場では、カナダ食品検査庁によるHACCPの認証が義務付けられています。そのほか、成長ホルモンや飼料添加物であるラクトパミンの不使用も条件です。また、カナダでは2 0 1 4 年、豚に対するトレーサビリティが法制化され、全生産者の参加が義務付けられたことも、豚肉の安心さをアピールする大きな材料となっています。

豚肉は主要な輸出製品

 カナダは、世界第7位※の豚肉生産国です。東部のケベック州、オンタリオ州、西部のマニトバ州などが主な養豚地域となっています。各地域は、それぞれ穀物栽培が盛んであり生産者は、主に地場産の穀物をえさとして利用しています。その結果、飼料費が安く抑えられているため、カナダの肉豚生産費は、アメリカよりはわずかに高いものの、EU諸国よりは低くなっています。
 一方で、カナダの人口は他の主要生産国と比べると少ないことから、豚肉の生産に対して国内市場が小さすぎます。そのため、豚肉は以前から主要な輸出製品であり、現在、EU、アメリカに次ぐ第3位の豚肉輸出国で、豚肉生産に占める輸出量の割合は、約6割を占めています。
※EUを1国としてカウントした場合
 2000年代はじめまでは、豚肉の主要輸出先は隣国アメリカと日本でした。また、アメリカへは豚肉としての製品の輸出以外に、生きた豚(生体豚)の輸出も行ってきました。しかし、2008年アメリカ国内での原産地表示規制が強化されたことから、生体豚の輸出のハードルが上がり、輸出量が減少しました。
 2015年には、中国やメキシコ、韓国などへも豚肉を輸出していますが、依然日本は主要輸出国のひとつとなっています。そのため、日本へ輸出する出荷業者は、日本の豚肉格付規格を参考に、“カナダポーク・クオリティスタンダード”を作り、輸入者との間で肉や脂肪の色の基準の共通化を図るなど、日本の顧客ニーズに、より適合した商品の製造を目指しています。
推移
推移
クオリティ

注目が集まる今後の輸出動向

 このように、カナダでは、低コスト、高い品質などの対応で豚肉輸出に力を入れています。現在は為替相場が輸出に有利に働いており、豚肉輸出環境に追い風が吹いているとも言われています。一方で、2015年12月、生体豚の輸出に大きな影響を与えたアメリカの原産地表示規制から豚肉が除外されることが決まり、今後アメリカへの生体豚の輸出が増加することが予想されます。その時に、現在主要な輸出先である日本への豚肉の輸出量を確保できるか、注目されるところです。
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