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【第一線から】「北海道ゆうべつ産」の牛肉をみんなに届けたい 〜北海道湧別(ゆうべつ)町黒毛和牛・交雑牛生産者の取り組み〜

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最終更新日:2017年11月1日

地図

 オホーツク海に面しサロマ湖西部に位置する湧別町は、豊かな草資源を活用した酪農が盛んです。一方、和牛や交雑牛(和牛と乳牛を掛け合わせた牛)を肥育している生産者は、9戸と多くはありません。各生産者は、それぞれの商標や独自の販売先を持ち、生産してきましたが、今年3月から「北海道ゆうべつ産」という統一した名称での共同出荷を開始しました。
 

湧別町産として届けたい

 共同出荷の中心の1人が鈴木敬次さん。88頭の黒毛和牛の繁殖めす牛(子牛を産むことを目的とする母牛)を飼養し、生まれた子牛を肥育して出荷する、繁殖・肥育一貫経営を営んでいます。父親が酪農業や家畜商( 家畜の取引(売買、交換など)を事業として行う人のこと)を営んでいたため、本人も後継者として畜産業に関わり、和牛生産を開始したのが平成3年。町内では最も長く和牛を生産しています。
 当初は道内や東北の市場へ出荷していましたが、北海道は和牛の消費が多くないため、15年ほど前から東京食肉市場への出荷を始めました。現在では全体の9割が東京向けです。
 鈴木さんは、自分が生まれ育った湧別町で育てた自分の牛が「北海道産」としてしか認知されない、と感じてきました。湧別町産として扱ってもらうには、今より多く、コンスタントに出荷する必要があります。
 今年3月、町内の農家が東京食肉市場に湧別町産として出荷することを聞き、鈴木さんは、湧別町の黒毛和牛と交雑牛の生産者全員での共同出荷を提案しました。これまで、生産者の個人名が付けられていたり、単に北海道産とだけで出荷されていたりしたものを名称統一することで、自分たちの町を、そして牛を認知してもらう。全員で取り組むことで出荷頭数も増え、マーケットも広げられるという強い思いがありました。
 

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いずれは地元でも「北海道ゆうべつ産」を

 こうして、7戸の農家で「北海道ゆうべつ産」と統一名称をつけた肉牛の出荷を開始しました。9月には、残り2戸の農家も参加し、町内で黒毛和牛と交雑牛を肥育する全9戸が結集しました。
 現在、東京食肉市場をメインに、横浜食肉市場、京都食肉市場の3カ所に向け、1台に12頭を積んだトラックで月に4〜6回、出荷しています。道内に出荷するよりも輸送費はかかるものの、大消費地に仕向けると、それを上回る価格で販売できます。また、共同出荷によりトラック便が増えるため、仕上がりのいい牛を選んで出荷できること、相場変動のリスク低減になることなど、さまざまなメリットを感じています。
 スタートしたばかりの北海道ゆうべつ産?には、牛の血統やえさ、飼育方法、枝肉の格付けなどの統一的な決めごとは、まだありません。しかし、遠くない将来、銘柄推進協議会や出荷組合を立ち上げて、町や地元の団体からも協力を得たいと考えています。「どこの市場でも、みんなに北海道ゆうべつ産として認知してもらいたい。いずれは、地元でも北海道ゆうべつ産の牛肉を食べられるようにしたい」と、鈴木さんは熱く語ります。
 生産者が牛肉を安定的に生産・提供するためには、自分たちのマーケットの確保が必要です。鈴木さんたちの取り組みは、その第一歩となるものです。
 
 

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コラム

alic の事業を活用して増頭

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 湧別町で肥育経営を営む伊藤泰さんも、今年3月から共同出荷を開始した一人です。
 伊藤さんは現在、黒毛和牛、交雑牛をそれぞれ180 頭、90 頭肥育し、他に黒毛和牛と乳牛であるホルスタインの去勢牛約200 頭を大手畜産会社から預かって肥育もしています。
 以前は、この預かり肥育だけをしていた時期もありましたが、4年前からalic の事業を活用して自分の牛を増やし、京都食肉市場に出荷してきました。
 伊藤さんは、牧草や稲わらなどは地元のものを使用、配合飼料も安心安全の視点で選んでいます。黒毛和牛の出荷月齢は26.5 カ月齢と平均(30 カ月齢)よりも早く仕上げながらも、バイヤーから好まれる、ロース芯が大きくさしがきめ細やかで、筋肉間の脂肪は少ない牛肉を目指しています。こうした努力が実り、京都食肉市場ではようやく自分の牛が大手の食肉問屋にも認知されるようになってきました。
 共同出荷の開始以降、伊藤さんも「北海道ゆうべつ産」の統一名称をつけて、東京や京都に出荷しています。
 今年からは、息子さんも一緒に働き始めました。将来、息子さんが安定的に経営できる環境を整えるためにも、より品質の高い肉牛を京都や東京に出荷しようと、一家全員で頑張っています。
 伊藤さんも北海道ゆうべつ産牛を率いるリーダーの一人になると、期待されています。
 
(畜産振興部)
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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