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【農林水産省から】畜産におけるGAPの取り組みについて

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最終更新日:2017年11月1日

農林水産省生産局畜産部

●はじめに

 東京2020オリンピック・パラリンピック大会開催まで3年を切り、テレビ、新聞などで、選手団・大会関係者に提供される食材に求められるGAPについて、先進地の取り組みや研修会などの記事を多く目にするようになってきました。
 既に青果物やお茶などにおけるGAPの取り組みは、全国認証件数が4500件を超える勢いとなっています。さらに、オリンピックまでの3年間に認証農場数を現状の3倍とする意欲的な目標を掲げて推進が図られています。一方、畜産についても平成29年3月末にJGAP家畜・畜産物の基準書が公表され、審査、認証が開始されたところです。
 

●GAPとはなにか

 GAP(ギャップ)とは、Good Agricultual Practice の略語で、「良い農業の実践」あるいは「農業生産工程管理」と呼ばれています。営農全般について、安定的に継続できる営農をしている(→持続可能性のある)かどうかという観点から、幅広く営農の基本となる項目について記帳・分析・改善に取り組むことです。これまで行ってきた衛生管理、生産成績などの記帳・分析の他に、農場運営の基本的事項の整理、畜産排泄物の処理と再利用、労働事故の防止、適切な労務管理、人権へ配慮、アニマルウェルフェア(動物の快適性に配慮した飼養管理)の取り組みが求められています。
 

●GAPを巡る世界の動き

 世界の食の現場を見ると、国境を超えた生産・流通過程の不透明化、環境破壊の進行、児童労働などの社会問題化、ネット社会の普及などにより、食に対する消費者の不信・不安が増す時代となっています。欧米の小売業者は、消費者に対して持続可能性のある生産を証明できる商品を取り扱うことを表明し、GAP認証のない商品は取り扱わない形に移行しつつあります。まさに、生産者がGAP認証を取ることが、流通・加工・小売業者と取引する際のパスポートとも言える状況になってきています。このような世界の流れの中で、日本国内でも小売業者が、納品する生産者にGAPの取り組みを義務づける動きが進んでいます。今後、日本のフードチェーンにおいて、と畜場から川下ではHACCPの導入が進む一方で、川上である生産者のGAPの取り組みについても、川下から厳しい目が向けられることになる時代となるでしょう。

●オリンピックの食材調達基準とGAP

 東京2020オリンピック・パラリンピック大会では、大会終了後のレガシー(遺産)として、持続性のある社会を作り上げることとされています。これを踏まえて、選手村などの食材調達においても持続可能性のある生産活動により生産された食材とする条件がつけられています。生産者は、この食材調達に取り組むことで、訪日外国人需要等に向けて、国内食材の生産をアピールする良い機会となります。
 畜産物に関する調達基準は、持続可能性に配慮する観点から、(1)食材の安全確保、(2)環境保全に配慮した生産活動の確保、(3)作業者の労働安全の確保、(4)快適性に配慮した家畜の飼養管理について「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」に照らして適切な措置が講じられているものとされています。これを満たすものとして、(一財)日本GAP協会が定めるJGAP 家畜・畜産物のほか、グローバルGAP、(公社)中央畜産会が行うGAP取得チャレンジシステムが該当します。
JGAP家畜・畜産物は、農場運営、食品安全、環境保全、労働安全、人権の尊重、アニマルウェルフェアを網羅した総合的な日本発のGAPとして、我が国の畜産業界のスタンダードとして開発されました。(乳用牛、肉用牛、養豚、養鶏、採卵鶏)現在、(公社)中央畜産会、(株)SMCの二団体が審査機関となり審査・審査員の養成に取り組むほか、(一財)日本GAP協会が指導員の養成に取り組んでいます。
 また、食肉が、と畜解体され枝肉・部分肉の荷姿で流通する特性を踏まえ、GAP認証を受けた畜産物を分別物流させるため、食肉標準物流バーコードの規格が見直されました。さらに、包装資材などに、JGAPの認証農場であることなどを表示できるJGAPマークも定められています。
 GAP取得チャレンジシステムについては、平成29年8月末から運用が開始され、生産者が定期的に経営を自己点検する際に、併せて本チェックリストをチェックし、一定のレベルに至れば、中央畜産会の開設する本事業HPで合格者の名称などを公表する仕組み(無料)です。JGAP認証に取り組むにあたり、まずGAP取得チャレンジシステムに取り組んで頂ければと思います。これまでにJGAP認証、GAP取得チャレンジシステム取り組み認定で、おのおの第一号農場が公表されました。

農水省から1

●今後のGAP推進の取組方針

 国では、2017年から2020年までの3年間を第1期、2021年から2030年までの期間を第2期として推進していきます。第1期では集中期間として、GAPの周知を進めて生産現場が変わることを目標として、GAP指導員の養成とGAP認証の増加に取り組み、オリンピックで十分な食材調達ができるような体制構築を目指しています。第2期ではGAPの取り組みが浸透し、ほとんどの産地でGAPが取り組まれている状況となり、生産現場から消費者に至るフードチェーンが変わることを目指しています。
 このため、国では、GAP推進の支援策(指導者の養成支援など)を講じるとともに、全国47都道府県や生産団体・流通団体にGAPの現場への周知・取組促進の要請活動を行い、さらに川下からのGAPの取組拡大に向けた気運醸成や協力体制を構築するため、流通・小売・加工・外食業者などを結集したGAP認証拡大パートナー会も立ち上げました。この他、全国の農業高校でGAPを授業へ取り入れ、GAP認証取得を進めることで、経営管理に優れた高度な人材育成とGAPの現場への浸透を図ることにしています。
 

●おわりに

 GAPの取り組みは、オリンピック東京大会で終わりではありません。オリンピックを契機として、GAPは、日本の食料生産現場を持続可能性のある生産に変えるとともに、日本のフードチェーンにおける重要性を増していくものと期待されています。
 
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