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【レポート】アメリカの牛内臓肉産業〜タン・ハラミを中心に〜

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最終更新日:2018年9月5日

 牛肉の製造過程ではたくさんの副産物が発生します。このうち、ホルモンやバラエティミートと呼ばれることも多い牛内臓肉に関しては近年、その栄養面やおいしさが注目を集めており、一部の部位は焼肉などで定番のメニューとなっています。最近の「肉ブーム」を背景に焼肉業界は好調に推移しており、これと並行して牛内臓肉の輸入量も増加傾向で推移しています。このため、特に人気が高いタンやハラミ(横隔膜)もほとんどを輸入に頼っており、なかでもアメリカは最大の輸入先となっています(図1)。そこで、今回は日本における消費を支えているアメリカの牛内臓肉産業を紹介します。
 

レポ1-1

牛内臓肉輸出大国、 アメリカ

 牛1頭当たり生体重のうち牛肉になる部分は半分程度で、4割は内臓肉をはじめとする副産物です。したがって、最も多くの牛をと畜(※)しているアメリカは牛肉生産大国であると同時に牛内臓肉生産大国でもあるといえます。同国では牛内臓肉の輸出も盛んに行っており、ここ数年は毎年約30 万tを世界中に供給しています(図2)。輸出先の変遷をみると、2000年代初頭までは日本向けが最大でしたが、現在ではメキシコやエジプトなどへの輸出も多くなっています。
 輸出される牛内臓肉の部位は輸出先によってさまざまです。例えば、メキシコには胃が、エジプトには肝臓が多く輸出され、日本はタンやハラミの最大輸出先となっています。すなわち、アメリカはバラエティに富んだ牛内臓肉を、それぞれの国のニーズに合わせてうまく輸出しているといってよいでしょう。(図3)
(※)と畜: 家畜等の動物を殺すこと。
 

レポ1-2

ぐらふ

アメリカの 牛内臓肉消費事情

 アメリカが多くの牛内臓肉を輸出できるのは、国内での消費量が限定的であるからです。同国では元来、一部の地域やコミュニティを除き、牛内臓肉を食する習慣は一般的でありません。ただし、隣国メキシコでは内臓肉を用いた料理が数多くあるため、メキシコ系の移民が多い南部などではタンやハラミを用いた料理がレストランで提供されているケースも多くみられます。また、日本向け輸出が停止していた時期、アメリカの業界は余った牛内臓肉の国内販路拡大に注力しました。その結果、例えばハラミを用いた「スカートステーキ」は広く認知されるようになり、こうした商品は今日、全米に広く展開する大手量販店でも容易に入手できるようになっています。
 

熱帯種

今後の見通し

 現在、アメリカの牛飼養頭数は増加傾向にあるため、今後しばらくは牛内臓肉の供給量も増加傾向で推移するとみられます。一方で、従来、日本が大量に買い付けてきたタンやハラミに関しては、最近では日本式の焼肉レストランの出店が増えている中国や台湾からのニーズも高まっているため、こうした状況が将来的に日本の輸入に影響を及ぼす可能性があります。
 今後とも日本が安定的に牛内臓肉を調達できることを期待しつつ、おいしくて栄養満点な牛内臓肉を食べて毎日を元気に過ごしたいものです。
 
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