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【レポート】持続可能性に着目したアイルランドの畜産物輸出拡大の取り組み

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最終更新日:2018年11月7日

アイルランドは世界の 主要畜産物輸出国

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 EU加盟国であるアイルランドは、アイルランド島の南側約6分の5を占め、英国領の北アイルランドと隣接している島国です。同国は、緯度の割に暖流のメキシコ湾流と偏西風により、気候は温暖で、最も寒い1月と2月の平均気温は4〜7℃で、降雪はほとんどありません。国土面積は、北海道より小さい689万ha となっています。農用地は国土面積の65 %を占め、うち8割は採草・放牧地で、放牧主体の畜産業が農業の中心となっています。
 アイルランドは、人口476万人程度の国であるため、生産された畜産物の多くが輸出に向けられ、20 17年の輸出量では、牛肉で世界第8位、バターで第3位、チーズ、脱脂粉乳、全粉乳(※) でも10 位以内に入る主要な畜産物輸出国です。農畜産物・飲料の輸出も一貫して増加しています(図1)。
(※) 牛乳から水分を除去して乾燥させたもの。
 一方、2017年における同国の主要畜産物の輸出額を地域別に見ると、英国に大きく依存しています(図2〜4)。アイルランドの農畜産物の最大の輸出先である英国は、2016年6月の国民投票でEU離脱を選択しました。これによる影響が懸念される中、アイルランド政府は、英国以外への輸出拡大に向け積極的に取り組んでいます。
 

レポ1-2

ぐらふ

オリジン・グリーン・ プログラムの実施

熱帯種

 アイルランド政府が最も力を入れている市場拡大の取り組みとして、アイルランド政府食料庁(ボードビア)が運営する農家・製造企業を対象としたオリジン・グリーン・プログラムがあります。例えば、農家であれば、家畜が排出する温室効果ガスの削減目標などを設定し、環境に配慮した持続可能な生産を行うというものです。また、製造企業であれば、使用電力の削減目標などを設定し、環境に配慮した持続可能な製造を行うというものです。
 農家段階でのプログラムとして、ボードビアは、「トレーサビリティ」「家畜衛生」「動物福祉」「環境」「温室効果ガスの排出量」「エネルギーの利用」「水の利用」「生物多様性」などの持続可能性に関する評価を行っています。
 2013年12 月に酪農家を対象とした持続可能な生産であることを保証する制度(SDAS)が開始され、2018年では、全国の酪農家1万8000戸のうち約9 割が認定されています。また、2 017年3月に開始された牛肉および羊肉生産者を対象とした持続可能な生産であることを保証する制度(SBLAS)では、同国の牛肉の約9割を生産する5万戸以上の農場が認定されています。これらの取り組みにおいては、第三者機関により認定された温室効果ガス排出量測定手法を用い、SD ASやSBLASに参加する農場の査定結果が全国平均値などと比較できる仕組みとなっています。こうした取り組みを通じ、温室効果ガス排出量削減への取り組みなど持続性の高い畜産業を営むことが可能となっています。
 

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 製造段階でのプログラムは、2 012年から始まっています。参加企業は、「原料調達」「製造工程」「社会的持続可能性」の3分野において目標を設定し、持続可能な製造を行う3〜5年間の計画を作成します。計画は第三者機関によって審査されます。2017年時点で590社が登録申請し、アイルランドの食品・飲料の輸出の約9割を占める285社の計画が承認されています。
 ボードビアは、このようなプログラムを通じ、持続可能な生産体系で生産された農畜産物であることを国外にPRすることで、輸出拡大を図っています。
 

業界関係者は、 対日輸出の増加を期待

 日本のアイルランドからの畜産物の輸入量(2017年)は、牛肉が202t、豚肉が7,39 0t、チーズが6,835tと決して多くはありませんが、同国の業界関係者は、本年7月に署名された日EU経済連携協定により、牛肉や乳製品を中心に対日輸出の増加を期待しています。ボードビアは、英国市場は重要ですが、市場の多様化も図らなければならないとしており、同国の持続可能性に着目した市場拡大の今後の展開が注目されます。
調査情報部  玉 井 明 雄(現畜産需給部)
          前 田 絵 梨
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