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【第一線から】生産者と企業が二人三脚で創りあげる「りんご和牛信州牛」

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最終更新日:2019年3月6日

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ブランド牛とは

 現在、日本には様々なブランド牛があります。これらは、独自の基準を定めて販売しているものがほとんどで、例を挙げると、牛の出生地や育った地域を限定している、特別な原料を加えた飼料を食べて育っている、風味に影響する成分の牛肉中の含有量を定めている、などです。その中で、飼料を工夫することでブランド化を図った黒毛和牛「りんご和牛信州牛」を紹介します。 

「りんご和牛信州牛」の ポイントは飼料

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  「りんご和牛信州牛」を名乗るには、いくつかの条件がありますが、その代表的なものが、りんごジュースの絞りかすを配合した特別な飼料の利用です。一般的な肉用牛は、とうもろこしなどの穀物、小麦を製粉した際に出るふすまなどの糟そう糠こう(ぬか)類及び大豆油かすなどを混ぜ合わせた配合飼料と、乾燥した稲わらなどを食べて育ちますが、「りんご和牛信州牛」は、りんごジュースを製造した際に出る皮などを発酵・加工したものを加えた配合飼料を食べて育ちます。
  このりんごの搾しぼりかす入りの飼料を製造しているのは、生産者が設立した飼料会社の「農事組合法人中野固形粗飼料」です。同法人は、食品メーカーの技術者や大学の専門家の協力の下、この飼料を開発し、牛のブランド化の取り組みが始まりました。

りんご和牛信州牛のふるさと

 生産農家の一つ、長野県松本市の「飯沼牧場」は、飯沼雅樹さんと両親の3名、正社員1名、パート職員2名の計6名の労働力で、200頭の黒毛和牛を育てています。肉用牛経営は、母牛を飼い、生まれた子牛を販売する「繁殖農家」と、子牛を肥育し、肉用牛として出荷する「肥育農家」の2つに分類されますが、同牧場は、子牛生産から肥育牛の出荷まで一貫して牛を育てています。同牧場で生産した牛肉の格付(肉質などの指標)をみると、最高位のA5と次点のA4が95 %を占めており、高い評価を得ています。これは高度な肥育技術と、子牛から一貫したきめ細やかな管理の賜物といえます。
 

みんなで支える 「りんご和牛信州牛」

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 こうして育った牛は、ほぼ全頭が長野県中野市の「大信畜産工業株式会社」に出荷されます。同社は昭和37 年に設立された食肉加工メーカーで、産地の食肉センターとして地域における重要な肉用牛の出荷先となっています。さらに同社は、「信州牛生産販売協議会」の設立、生産者に対する子牛の購入費の補助、金融機関との提携による牛を担保とした融資システム構築など、生産者を支援するための仕組みづくりを行ってきました。
 大信畜産工業株式会社で加工された牛肉の流通・販売は、「株式会社マルイチ産商」が行っており、同社が持つ多様な販売チャネルを通じて、県内の精肉店や飲食店、大手量販店などへ販売されます。多くの販売先が確保されることで、食肉相場の影響による販売価格の急落を防ぎ、生産者は肉用牛の飼育に集中することができます。
 

もう一つのサポート「牛マルキン」

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  「りんご和牛信州牛」は、生産者、飼料会社、牛肉の加工会社及び流通・販売会社が一体となり、安全・安心な牛肉を消費者に提供できる体制を築いています。しかし、それでもなお、安定した肉用牛経営の実現には、リスクが残されています。
  主要な肉用品種である黒毛和牛は、子牛から出荷まで約2年近くもの肥育期間が必要です。この間、子牛、飼料及び牛肉の価格は変化を続け、収益は増減します。特に近年、子牛価格は上昇傾向にあり、肥育経営の収支の悪化が懸念されています。
  こうしたリスクに備えるため、alicでは肉用牛肥育経営安定交付金制度(通称「牛マルキン」)を実施しています。牛マルキンは、収益がマイナスとなった場合に、交付金が交付される制度です(制度の仕組みは図参照)。平成30 年12 月30 日のTPP 11 協定の発効に伴い、法律に基づく制度となりました。今回紹介した飯沼牧場も牛マルキンに加入し、もしものリスクに備えています。
(畜産経営対策部肉用牛肥育経営課)
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