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【第一線から】徳之島(鹿児島県)におけるメリクローン苗利用による種苗供給〜さとうきび優良種苗確保の取組み〜

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最終更新日:2019年3月6日

徳之島さとうきび培養苗実用化推進機構事務局の方とメリクローン苗を育てるスタッフのみなさん
徳之島さとうきび培養苗実用化推進機構事務局の方とメリクローン苗を育てるスタッフのみなさん

島の基幹産業

地図

 徳之島は鹿児島市から南に約470km離れた奄美群島のほぼ中央にある、周囲を海に囲まれた自然豊かな島で、気候は年間を通じて温暖な亜熱帯性気候に属します。奄美群島では奄美大島に次ぐ大きさ(周囲約90 km、面積約250平方km) で、そこに暮らす約2.4万人の島民の主要な産業は農業です。
 島の基幹作物であるさとうきびは、台風や干ばつなどの気象被害を受けますが、他作物に比べ一定の収量を確保できる重要な作物であり、また、さとうきびを原料とする製糖業は島の経済を支える産業の一つです。
 

さとうきび農家のために

 日本の農業は高齢化・後継者不足といった深刻な問題を抱えていますが、徳之島においても、さとうきび農家が減少の一途をたどっています。さとうきびは、種苗生産や植付作業の手間が省ける株出(かぶだし)栽培(注1)が多いため、株出後のさとうきびの再生力が翌年の生産において大変重要です。そのため、病気にかかっていない品種の苗を確保し、栽培することが農家の生産性向上につながります。
 そこで平成2年、島で唯一の原料糖製造会社である南西糖業株式会社が、無病で強い発芽力をもつ優良種苗の安定供給を目指し、「メリクローン苗利用による大量種苗生産」という新たな種苗供給技術の研究に着手しました。
 メリクローン苗を生産するメリクローン培養は、洋ラン栽培などではよく使われている技術で、植物の茎頂分裂組織(茎の先端部分で細胞分裂が行われる部分)にあるウイルスフリー箇所(0.5mm 以下)を無菌状態で取り出して増やす方法です。この方法によりウイルスフリーの植物体を大量に得ることができ、株出栽培に適応性のある優良品種((1)発芽良好(2)分げつ(注2)力旺盛)を農家へ安定供給することができます。
 そしてこの技術の実用化に向け、平成10 年に天城(あまぎ)町とJA天城(当時)が加わり、3者による「徳之島さとうきび培養苗実用化推進機構」が設立されました。翌年には、島の残りの2町の徳之島町と伊仙(いせん)町、さらにJA徳之島(当時)も加わり、現在は6者でこの組織を運営し、官民一体となって取り組んでいます。

注1 :地上部の茎を収穫した後、残った土壌中の茎から萌芽(ほうが)させて育て再び収穫する栽培方法のこと
注2 :イネ科等の植物の根元から新芽が出てくること
 

1線1-4

メリクローン苗の利用

1線1-6

 こうして生産されるメリクローン苗から作られた種苗で栽培したさとうきびの収穫量は、従来の種苗に比べ1〜2割増収することを、鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場での試験により実証しています。
 また、メリクローン苗は分げつ力が旺盛で従来苗に比べ約1.6倍の種苗を確保できることから、種苗を作るために必要な面積は従来の63 %程度で足り、その差分を収穫用のさとうきびにできる利点があります。
 このため、近年の年間出荷実績は10 万本以上となり、最も多かった平成27 年には約18 万本となりました。一度この種苗を利用した農家はこれまでより収穫量の増加を実感しており、種苗更新には可能な限りこの種苗を使用しています。
 

目指せ!年間出荷20 万本

 メリクローン苗の培養は、施設や手間を必要とするため、従来の種苗よりもコストが高くなっています。そこで、平成26 年にはLE D照明を導入し、電気代だけでなく、栽培期間短縮によるコスト削減を実現させました。今後は、生育ステージに合わせLEDの色を変えることにより、さらなるコスト削減を目指します。
 また、植付作業の機械化に伴い、発芽能力に優れたメリクローン苗の使用を推進するため、今後、苗を展示するほ場の設置、苗の有効的な活用方法や栽培方法を周知するチラシの作成、島で開催される産業祭や農業祭でのPR活動なども考えています。
(特産業務部)
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