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【農村研修体験記】〜酪農家での研修報告について〜

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最終更新日:2019年7月3日

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 alicでは毎年度人材育成の一環として、生産現場での仕事などを通じて農畜産業の生きた知識を得るため若手職員を生産者のもとに派遣する農村派遣研修を実施しています。昨年9月に北海道の酪農家で研修させていただいたalic職員 の研修報告書の一部を紹介します。
 
研修期間:平成30年9月18日〜27日(10日間)
研修場所:北海道 野付郡別海町(のつけぐんべつかいちょう)(株)mosir(モシリ)
 

研修先の概要と研修内容

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 北海道野付郡別海町の主な産業は酪農であり(総農家数の約9割以上が酪農家)、同町の管轄農協であるJA道東あさひの生乳生産量は、JA単位では全国1位で、日本を代表する酪農専業地帯である。
 研修先である(株)mosirは、現在の社長の小林隆一(こばやしりゅういち)氏で3代目の酪農家である。隆一氏と妻の和江氏、長女の晴香氏の3人で従事しており、90 haの土地で搾乳牛80頭を飼養している。
 研修では、主に牛舎での清掃作業、子牛への哺乳、育成牛(子牛から成牛になるまでの牛)への給餌作業などを経験させていただいた。
 研修直前の9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響により、道内全域で停電が発生したが、同社は自家発電機を所有していたため、搾乳等は問題なく行えた。
 

新牛舎と搾乳ロボットの導入

熱帯種

 2年前、長女の晴香氏は腰を痛めた際、自身が男性と同じように酪農業を行うことの難しさを感じ、女性が酪農業を行っていくためには機械化された酪農経営が必須だと考えた。家族で新牛舎建設を構想していた頃、畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業(注)の存在を知り、JAと計画を進め、完成に至った。
 「365日同じ乳質、乳量をキープするためには、牛がストレスを感じないようにすることが大切。人間が主体の酪農ではなく、牛が主体に行動できる酪農をし、自分もずっと酪農を続けたいと思えるような牛舎を建てたい」と考えた晴香氏の言葉通り、新牛舎はおしゃれな外観で、木造のフリーストール(牛が自由に歩き回れる構造)であった。
 牛1頭1日当たりの乳量平均は約35kgで、以前は1日2回(6時と18時)搾乳を行っていたが、現在は新牛舎に搾乳ロボットを導入したことから、自由なタイミングで入室してきた牛の搾乳を機械で行う自動的に行っている。
 実際に私も酪農家の日常を体験し、足腰に負担のかかる作業が非常に多いことに加え、常に牛の様子を観察し牛のリズムに合わせた生活を送っていることから、体調を崩さずに長年酪農を続けることの厳しさを痛感した。
 一方で、機械化によって肉体的労力は軽減されても、牛の観察やケアといった酪農家の本質的な部分は変わらず人が行うことの大切さを感じた。
 
(注)畜産農家をはじめ地域の関係者が連携して行う地域の畜産の収益性向上を図る取組(経営体の施設整備や機械導入等)に対する支援
 
 

酪農家を支える環境

 研修中、ロータリー型搾乳ロボット(AMR)を導入している牧場の見学もさせていただいた。AMRは、円形の搾乳ロボットで、1度に24頭の搾乳が可能である。同場の佐々木代表は、大幅な省力化の一方で「牛の観察など酪農の基本的なことができない従業員が出ないよう人材育成は依然として重要」と話され、併せて「規模拡大によって自分の育ったこの街をもっと活性化したい」と話されていた。
 このほかにも、獣医師、人工受精師、種苗会社、JA等、酪農家を取り巻く方々に出会ったが、こうした関係者による支援もあって酪農家は安心して飼育ができると感じ、地域全体で酪農という産業を支え、また魅力的な職業とするための職場環境を整えようと努める別海町に感銘を受けた。
 

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おわりに

 今回の研修は、北海道胆振東部地震の直後だったにもかかわらず、小林家の皆様に温かく受け入れていただき大変有難かった。地震の影響を特段感じずに研修を行えたことは、普段から備えを持って仕事をされている皆様方の危機意識の高さだと感じた。また、現場での作業や研修先以外の先進的な施設等も見学させていただき、さらに牛の出産の現場にも立ち会うことができて、机上では得られない多くのことを学んだ大変有意義な10日間だった。
 受け入れて下さった小林家の皆様、今回の研修にお力添えをいただいたJA道東あさひ営農部の皆様をはじめとする全ての皆様に、この場を借りて、心から感謝申し上げます。
 

小林さんご夫妻(写真左)、奥様と長女の晴香氏と(写真右)
小林さんご夫妻(写真左)、奥様と長女の晴香氏と(写真右)

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