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【トップインタビュー】日本人の暮らしや文化に根ざした和菓子の魅力について

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最終更新日:2015年5月13日

全国和菓子協会 会長(株式会社虎屋社長) 黒川 光博 氏に聞く

和菓子のルーツは千年以上も前にさかのぼり、私たちの暮らしにも密着しています。
菓子部門における売上げは、洋菓子を上回っています。そんな、和菓子業界の振興発展に取り組んでいる全国和菓子協会の黒川光博会長にお話を伺いました。

私達の生活に溶け込んでいる和菓子の魅力は、どういったところにあるのでしょうか。

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毎年、菓子の小売金額が公表されていますが、和生菓子の売上高は約4700億円あります。
平成26年の推定金額ではチョコレートが一番となりましたが、次いで和生菓子、洋生菓子と続きます。「えっ和菓子が?」と意外に思われるかもしれませんが、やはり和菓子は季節や行事と結びついていますし、普段の生活にも溶け込んでいるからだと思います。

小さい頃に、街角のお菓子屋さんで団子を一つ買って食べたというようなご記憶をみなさんお持ちではないでしょうか。
和菓子の種類は極めて多岐にわたっていて、練切りやこなし、おはぎや大福のような生菓子、羊羹(ようかん)や最中のような半生菓子、落雁(らくがん)やあられ、おせんべい、飴のような干菓子などその種類と数は、数え切れないほど豊富です。

和菓子の原材料は、その多くが植物性で天然素材のものを使用しており、健康に良いということで、海外でも人気があり、また国内の若い方たちも和菓子に興味を示してくださっています。
原材料といえば、砂糖も欠かせません。
上白糖や白双糖(しろざらとう)、黒砂糖、和三盆糖は、いずれもさとうきびやてん菜を原料にした天然の素材ですが、甘さは種類によって微妙に異なります。

例えば、羊羹には結晶の大きい白双糖が使われることが多いのですが、結晶の小さい上白糖に比べ、適度な硬さや後味の良い甘さになると感じています。
このように、使う砂糖によって味わいは確実に違ってきます。

季節や年中行事と結びついているというところにも、和菓子の魅力があるんですね。

そうです。和菓子は季節を少し先取りしていますので、例えば桜が咲き始める前に桜餅が店頭に並び、お客様は春の訪れをお感じになる。
あるいは5月の端午の節句には柏餅、秋になると栗菓子が店頭を賑わすというように、季節や年中行事ごとに楽しむ菓子があります。
さらに、お誕生やご結婚、お葬式といった人生の節目とも、和菓子は結びついています。
ライフスタイルも多様化し、新しいものも出てきていますが、今でも冠婚葬祭や七五三、学校の卒業式などには毎年のようにご注文いただいており、和菓子の需要は根強いと感じています。

伝統がある半面、消費者の嗜好に合わせて新商品の開発などが行われ、商品の味、材料、製造方法、デザインなどは、日々、進化しているのででしょうか。

長い歴史を持つ和菓子屋も多くありますけれども、古くからの伝統を守る一方で、お客様の嗜好は変わりますので、どこの和菓子屋でも商品開発に積極的に取り組んでいます。

羊羹は、昔は小麦粉や葛(くず)を使った蒸羊羹しかありませんでしたが、江戸時代の初めに寒天が見つけ出されたことにより、今日食しているような煉羊羹が作られるようになりました。
今も蒸羊羹は残っていますが、羊羹にも変化があったのです。
機械化も進んでいて、饅頭の餡を包むことも機械で出来ます。
一方で、手づくりにこだわり機械を使わないなど、各社で工夫しています。
また、弊社では切り分けずに召し上がれる小形サイズの羊羹を昭和5年に発売しましたが、原材料や製造方法だけでなく形状やデザインも、お客様のご要望や時代に応じて変化させてきています。

人材ということで話をしますと、製造部門においては昔に比べ女性が増えています。
弊社の東京工場では製造担当者の約半数が女性で、彼女たちは、和菓子を手づくりしたいというはっきりした目的を持っています。
自分の意志で和菓子屋に勤めたいという方が増えているのが最近の大きな特徴かもしれません。

今の若い人たちも和菓子を食べているのでしょうか。また、若い人たちにどのように消費拡大を行っておられるのでしょうか。

今の若い方たちも、和菓子を食べていただいていると思います。
カロリーの低さや植物性の原材料を使用していることなどをご存知の方は、和菓子に興味を持ってくださっているように感じます。

いつの時代でも流行り廃りはありますが、その時代のお客様が求めていらっしゃるものを提供できれば、多くの方に召し上がっていただけるのではないでしょうか。
いかに皆さんに、好んでいただけるような菓子を作っていけるかは、我々生産する側の責任だと思
います。

弊社でTORAYA CAFEという店を始めてからもう12年経ちました。
ここでは提供する菓子の材料の幅を少し広げて、乳製品などの動物性原材料やチョコレートなども使用していますが、将来的に若い方に和菓子に親しんでいただくことも考えて、餡をベースとしています。餡や弊社になじみのなかった方が、カフェで召し上がって下さった菓子が美味しかったからと、餡を好きになってくださったり、虎屋にもいらしてくださったりということが実際にありました。
そういう点からすれば、TORAYA CAFEは若い方たちへの普及活動の一つになっていると思います。

和菓子の消費拡大のため、全国和菓子協会さんではどのような取り組みを行っていらっしゃいますか。

全国和菓子協会は、昭和25年に設立されました。
昭和36年には和菓子マーク、昭和54年には和菓子の日を制定し、和菓子のよさを知っていただくための講演会や手づくり和菓子教室の開催など、毎年積極的なPR活動に努めています。
和菓子マークは、多数の応募の中から選ばれたもので、饅頭を図案化したようにも、餅つきの杵(きね)を図案化したようにも見えます。

和菓子の日である6月16日は、平安時代の848年(嘉祥元年)のこの日に、時の仁明天皇が年号を嘉祥(かしょう)に改めるとともに、疫病除けを祈願して16個の菓子や餅を神前にお供えしたことが由来とされています。
江戸時代には、江戸城の大広間に2万個を超える和菓子(嘉祥菓子)が並べられ、大名、旗本に配られたという記録も残されています。

その他の具体的な取り組みとして、しっかりとした技術を持った人を育てるため、「選・和菓子職」の認定を行っています。和菓子製造技術の素晴らしさを多くの人に知っていただき、優れた技術を伝承する取り組みです。
全国から応募があり、お店の名前ではなく、個人で申し込んでいただいています。
菓子職人は、自分の名が有名になるというよりも、名前は出ていないけれど実は自分が作ったものだというところに満足を感じながらやって下さっている方たちが多いと思います。

それも良いことではありますが、一方で個人の名前でも菓子が売れるようにしたいと思い、始めたものです。
店の名前ではなく、個人の名前で応募していただき、その個人を育てていきたいのです。認定された方々はデパートなどで催しなどがあった時に声が掛かり、菓子をお客様の前でお作りしているような例も出てきています。

更には、羊羹コレクションという、全国の羊羹を一同に集めて販売させていただくイベントもあります。
全国の菓子屋さんに声を掛けて、デパートで始めたわけですが、最初50数店舗の集まりだったものが、3〜4年経過するうちに、100店舗近くの菓子屋が参加するようになりました。
回を重ねるごとに、色彩や形、アイデアが豊富になっています。
そういったことを協会としても奨励しながら、和菓子の普及に努めています。

和菓子マーク
和菓子マーク

嘉祥菓子
嘉祥菓子

日本食ブームなど和菓子にとっても追風があると思いますが、このチャンスをどのように活かしていこうとお考えですか。また、和菓子業界にとっての課題等がありましたら教えて下さい。

和食の評価が高まっており、おもてなしという言葉も流行語になりました。
これは喜ばしいことで、大いに活かしていきたいと思っています。

しかし、和食ブームだから外に向けてということよりも、消費拡大は、原材料生産者の方たちが生産してくださり、和菓子屋が連綿と菓子を作っていくという前提があります。
その上で、皆さんにどうやって食べていただくかということですから、原材料の安定供給の課題や、後継者育成など地道なところをクリアしていかなければと考えています。

全国和菓子協会としても、日本の食文化を代表するもののひとつである、和菓子の素晴らしさを多くの人々に知っていただき、尚一層和菓子の味わいを深めていただくことに尽力していきたいと思います。

また、原材料生産者に対しても、もっと組織立った支援をしていきたいと思っています。
弊社の黒砂糖は西表島産のものを使っていますが、原料のさとうきびの生産者は、出来た黒砂糖が何に使われているかあまりご存じありませんでした。
そこで4年前、黒砂糖を使った羊羹を、製糖期間中、製糖工場の事務所で販売してもらいました。
それ以降、売上は毎年伸びています。

観光客の方が多くいらっしゃるような所ではないので、地元の方々が、地元産の黒砂糖を使った菓子を何かの時にお使い物に選んでくださったりしているのでしょう。
それが生産者の方のモチベーションにも繋がり、良い循環が生まれていると感じています。
全国和菓子協会も、和菓子の主要原材料である小豆の産地である北海道で、小豆生産者の皆様と菓子屋が意見交換できる場を企画しています。

このようなコミュニケーションは非常に重要なことですので、全国和菓子協会としても、小豆に限らず原材料生産者の方たちとのコミュニケーションをもっと深めていく努力をしていかなければならないと思っています。

全国和菓子協会 会長 黒川 光博 氏

プロフ

昭和18年東京生まれ。
学習院大学法学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)勤務を経て昭和44年株式会社虎屋入社、平成3年代表取締役社長に就任。
平成19年6月全国和菓子協会会長に就任。
現在、全日本菓子協会副会長、一般社団法人日本専門店協会顧問等を務める。
著書に「虎屋 和菓子と歩んだ五百年」(新潮社)。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196



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