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オーストラリアの乳業界の動向

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最終更新日:2015年5月13日

調査情報部 根 本 悠

はじめに

日本の主要乳製品輸入相手国であるオーストラリアは、世界第4位の乳製品輸出国であり、オーストラリアの乳業界の動向は、世界的にも関心が高いものとなっています。
一方、オーストラリアの乳業は輸出に特化している印象がありますが、実際には生産の半分以上が国内消費となっており(図1)、国内でも大手乳業メーカー間で激しい競争がくりひろげられています。
図1

1 酪農家の獲得競争

乳業メーカーは、酪農家から買い取った生乳で牛乳や乳製品を製造・販売しています。そのため、原料となる生乳の調達は乳業メーカーにとって重要な問題です。

オーストラリアでは、乳業メーカーは酪農家からの生乳の買取りに際して、さまざまな奨励策を実施しています。例えば、生産量が少なくなる時期に生産した場合の加算など、一定額以上の取引価格を保証するというものです。各乳業メーカーはこれらの措置を積極的に実施しており、近年、干ばつなどの影響で生乳生産が伸び悩む中で、安定的な生乳の確保に努めています。

2 乳業メーカーの買収

次に、オーストラリアの乳業界では、買収など企業再編が盛んなことも特徴的です。2013年から2014年にかけては大手乳業メーカーの買収をめぐり国内外の乳業メーカーによる買収競争が行われ、世界的な注目を集めました。こうした買収劇などもあり、現在、オーストラリアの大手乳業メーカー6社のうち4社は海外資本(ニュージーランド、日本、カナダ、フランス)の傘下にあります(表1)。

こうした動きは、オーストラリアが需要の拡大が見込める中国や東南アジアに比較的近く、輸出市場の拡大が期待できるということが背景にあります。
表1

3 PB牛乳の製造委託競争

近年、オーストラリアの大手スーパーマーケット界ではプライベートブランド(PB:スーパーマーケットの自社企画ブランド)の安売り牛乳(1リットル約1豪ドル:約100円)の販売競争が行われています。そして、乳業メーカーも、こうしたPB牛乳の製造受託が、売上拡大につながるため、PB牛乳生産を活発化しています。その結果、オーストラリアでは、スーパーマーケットで販売されている牛乳の半分はPB牛乳となっています。
こうした傾向の背景には、オーストラリアの堅調な牛乳消費があります。オーストラリアの人々は、
日本の3倍以上となる年間1人当たり106リットルの牛乳を消費しており、増加傾向で推移しています(図2)。
図2

おわりに

以上のとおり、オーストラリアではさまざまな面で乳業界の競争が活発となっています。そして、これらは、生乳生産の伸び悩み、アジア諸国の需要拡大、堅調な国内の牛乳消費というオーストラリア特有の市場環境に起因しています。こ
れらの市場環境が、乳製品生産のための原料乳確保の制約やアジア諸国の乳製品市場との競合の高まりにより日本向け輸出価格にも影響を与える可能性が考えられます。オーストラリアの乳業界の動向については、日本としても常に関心を持っている必要がありそうです。
オーストラリアのスーパーマーケットの牛乳売り場
オーストラリアのスーパーマーケットの牛乳売り場
参考:月報『畜産の情報』2015年1月号
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196