さつまいも生育概況について

でん粉情報

[2009年2月]

鹿児島県農業開発総合センター・大隅支場

はじめに

　これまでに鹿児島県における平成20年産原料用さつまいもについて8月時点でのマルチ栽培、9月時点での無マルチ栽培の生育概要を報告した。今回は11月に実施した最終調査結果を踏まえ、今年度の生育概況を当県で栽培面積の多いコガネセンガン、シロユタカについて報告する。

1　耕種概要

2　気象概況

1）平均気温
　 4〜6月の平均気温は多少の高低はあるものの平年並みで推移した。7月以降は高めに推移したが、8月下旬は平年より低かった。9月以降は平年より高かった（図1）。

図1　平均気温の推移（平成20年4月〜10月）

2）降水量、日照時間
　 4月は降水量が少なく、日照時間もやや少なかった。5月は降水量は平年並みで、晴天の日が多かったので日照時間が多かった。6月は降水量、日照時間共に平年よりも多かった。7月は梅雨明けが平年より早かったため、降水量は少なく、日照時間が多かった。8〜10月は降水量、日照時間ともに多かった（図2、3）。

図2　降水量（平成20年4月〜10月）

図3　日照時間（平成20年4月〜10月）

3　生育経過

　マルチ栽培（以下、マルチ）、無マルチ栽培（以下、無マルチ）ともに植え付け後に降雨があり、コガネセンガン、シロユタカともに活着は順調であった。梅雨明け後は、降水量が少なかったため、地上部の生育は緩慢であり、特に無マルチではこの傾向が顕著であった。しかし、8月以降は平年よりも降水量は多かったので地上部生育はやや回復した（図4、5、6、7）。

図4　コガネセンガン（マルチ）つる重推移

図5　コガネセンガン（無マルチ）つる重推移

図6　シロユタカ（マルチ）つる重推移

図7　シロユタカ（無マルチ）つる重推移

4　11月調査結果

1）コガネセンガン
　 1アール当たりの上いも（1個50グラム以上）個数は、マルチ1，223個（平年比99％）、無マルチ1，237個（平年比110％）であり、マルチは平年並み、無マルチは平年よりも多かった。

　また、1アール当たりの上いも収量は、マルチ456キログラム（以下、kg）（平年比101％）、無マルチ296kg（平年比90％）であり、マルチは平年並みであったが、無マルチは平年よりも少なかった（図8、9）。

図8　コガネセンガン（マルチ）上いも収量、個数

図9　コガネセンガン（無マルチ）上いも収量、個数

　なお、でん粉歩留まりは、マルチ23．3％（平年比90％）、無マルチ22．2％（平年比91％）であり、ともに平年より低かった　（図10、11）。

図10　コガネセンガン（マルチ）でん粉歩留まり

図11　コガネセンガン（無マルチ）でん粉歩留まり

2）シロユタカ
　 1アール当たりの上いも個数は、マルチ1，307個（平年比94％）、無マルチ1，466個（平年比113％）であり、マルチは平年より少なく、無マルチは平年よりも多かった。

　また、1アール当たりの上いも収量は、マルチ515kg（平年比102％）、無マルチ432kg（平年比109％）であり、マルチ、無マルチともに平年より多かった（図12、13）。

図12　シロユタカ（マルチ）上いも収量、個数

図13　シロユタカ（無マルチ）上いも収量、個数

　なお、でん粉歩留まりは、マルチ23．8％（平年比92％）、無マルチ22．6％（平年比95％）であり、ともに平年より低かった（図14、15）。

図14 シロユタカ（マルチ）でん粉歩留

図15　シロユタカ（無マルチ）でん粉歩留

5　本年度の生育の特徴

　本年度は、マルチ、無マルチともに植え付け後の天候に恵まれ活着は良好であった。そのため、コガネセンガン、シロユタカともに上いも個数はマルチで平年並み、無マルチで平年より多かった。

　しかし、上いも収量は、コガネセンガンの無マルチではいも1個重が軽かったため平年よりも少なかった。いも1個重が軽かった要因は、梅雨明けが早く7月の降水量が少なかったため茎葉の生育が十分に確保されず、光合成産物の蓄積が順調に進まなかったためであると考えられる。

　また、でん粉歩留まりは両品種とも平年より低く、これも早い梅雨明けと光合成産物の蓄積不足に加え、7月の高温、さらに生育後期の高夜温による呼吸消費が影響したと考えられるが、その他の要因も含め今後検討する必要がある。