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かまぼこと副原材料

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2008年10月]

【ユーザーから】

全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会 総務課長 石内 幸典


1.かまぼこの歴史

 かまぼこが文献に初めて登場するのは、平安時代後期に版行された「 類聚雑要抄 るいじゅうざつようしょう 」という書物で、永久三年(西暦1115年)、時の関白右大臣の新任による 移御 いしょう (引越のこと)の祝宴の料理膳に登場しており、「蒲鉾」という文字が記載されています。図1に示しましたが、このころの蒲鉾は、魚のすり身を板の上に乗せた現在のような板付かまぼこではなく、魚のすり身を棒に巻きつけて焼いたもので、今の「ちくわ」の形をしていました。この姿が、蒲の花穂の形に良く似ていることから、「蒲の花穂」がなまって、「蒲鉾」と呼ばれるようになったといわれています(かまぼこ業界ではこの西暦1115年にちなんで、11月15日を“かまぼこの日”としています)。


図1 かまぼこの図
引用:類聚雑要抄より

 板に載せたかまぼこは室町時代の中期以降に登場し、これを「蒲鉾」と呼ぶようになり、それまで蒲鉾と呼ばれたものは、切り口の姿が竹の形に似ていることから、「ちくわ(竹輪)」と呼ばれるようになりました。しかし、この当時の板蒲鉾は蒸して作られていたのではなく、直火であぶり焼いた焼抜き蒲鉾で、蒸して作る蒲鉾が登場したのは、江戸時代になってからのことです。関東では、蒸したそのままを、関西では、蒸した後表面に焼色をつけて商品としました。このことから、現在においても、関東は蒸し蒲鉾、関西では焼蒲鉾が好まれています。

 かまぼこには、白身の魚が多く使用され、古くは、近海で漁獲される魚を使用しており、京阪では、ハモを珍重し、関東ではトラギスを用いました。また、並品には京阪、関東共にフカ(サメ)を用いたと伝えられています。

 現在かまぼこ原料の主流として使用される、冷凍すり身は昭和35年にスケトウダラを原料として開発され、昭和40年以降には、洋上加工される高品質の冷凍すり身が生産されるようになったことから、(1)広域流通が可能、(2)品質が長期間保たれる、(3)原魚から生すり身を製造するまでの処理工程が省略できる、(4)原料の供給が天候等の影響を受けることがなく計画生産が可能となるなどの利点により、急速に利用が拡大し、同時に製造工程の自動化が図られ、大規模製造工場が登場してきました。

 現在は、国内外で冷凍すり身が製造され、スケトウダラは国内(主に北海道)および米国で生産され、イトヨリ、グチはタイを中心とした東南アジア、インド、中国などで生産されて日本に持ち込まれています。


2.かまぼこの製造方法

 かまぼこは、魚肉に食塩を加えて擂り潰し(すりつぶし)、かまぼこの弾力の素である塩溶性たんぱく質(ミオシンなど)を溶解させた後に、様々な形態に成型し、種々の加熱方法等でたんぱくを変性させることによって製造される食品で、弾力の強い独特の食感を持っています。この弾力のことを業界の専門用語で 「 あし 」と呼んでいます。

 次に、かまぼこの製造方法について示します。かまぼこの製造工程で使用される主な機器類を示し(図2)、この工程に従い順を追って製造方法を説明します。


図2 かまぼこ類の製造工程と使用機械・装置


 現在かまぼこに使用される主な原料魚種は、グチ、エソ、ハモ、スケトウダラ、マイワシおよびサバなど、白身魚を中心に30種類以上の魚が使われています。(2)から(7)の工程に沿ってすり身となります。(3)の水洗はすり身の品質を左右する重要な工程の一つといえます。(5)の水さらしでは、魚肉を真水でさらすことにより、血液などの汚れや不要なものを除去し、かまぼこの素となる塩溶性たんぱく質を濃縮します。(7)の段階までのすり身は、生すり身と呼ばれ、伝統的手法では、このあと擂潰(らいかい)工程に移行しますが、ここで冷凍すり身の製造方法を簡単に説明しておきます。

 (8)の添加物混合では、生すり身に糖類、リン酸塩類などを加えかく拌します。糖類の添加は、たんぱく質の冷凍変性を防止する目的で、通常5〜8%の砂糖およびソルビトールが使用されます。一般的にリン酸塩類は、トリリン酸とピロリン酸のナトリウム塩の混合物が用いられます。リン酸塩には、塩溶性たんぱく質の凝集を抑え、すり身の品質を安定化させる効果があります。その後、(9)の凍結工程ですが、品質劣化が起きないように短時間で急速に凍結します。冷凍保存温度は一般的に−25℃以下です。

 (11)の 擂潰 らいかい 工程は、十分に冷やしこんだ生すり身または解凍機などを使用して半解凍状態(−3〜−5℃程度)にした冷凍すり身に、食塩やでん粉などの副原料を添加し、擂り潰す工程です。擂り潰しは、空擂り、塩擂り、本擂り(仕上げ擂りともいう。)に分かれています。空擂りは、塩擂りを行う前に肉繊維の束をほぐすために行います。塩擂りは、魚肉に対して食塩を2〜3%添加し、かまぼこの素となる塩溶性たんぱくを溶解させるために行い、塩溶性たんぱく質が溶融されると非常に粘りが強いものとなります。本擂りは、調味料などを加えて風味を整えるとともに、でん粉や水を加えて適度な弾力に整える工程です。この後、(12)のようにそれぞれの形に成型され、加熱が施されます。かまぼこの加熱の基本は、以下の4種類であり、「蒸す」には蒸気、「焼く」にはガス、電熱や赤外線電球の焼き床、「ゆでる」には90℃前後の熱湯、「揚げる」には、140〜170℃の植物性油が使われます。(14)冷却 加熱後のかまぼこを、中心温度を速やかに10℃以下にします。このことにより、保存性も高まります。


3.かまぼこの種類

 かまぼこというと一般の方は、板付きかまぼこのことを連想されると思いますが、かまぼこ業界では魚を原料としたねり製品を総称してかまぼこと呼んでいます。また、公的機関においては魚肉ハム・ソーセージを含めて魚肉ねり製品または水産ねり製品と称しています。このかまぼこの分類方法にはいろいろありますが、加熱方法や形態により分類しますと、表1のようになります。


表1 かまぼこの分類

 加熱方法による分類をみますと、製造方法の加熱のところで説明したとおり、蒸し、焼き、ゆでおよび揚げに分類され、蒸しの代表的製品は、板付蒸しかまぼこ、焼きはちくわ、笹かまぼこ、焼き抜きかまぼこ、ゆででははんぺん、つみれ、揚げではさつま揚げがあります。また、これらの分類の中には、各地方の名産品として知られているものが多数あり、その一部について表2に紹介します。


表2 各地域における名産かまぼこ


4.かまぼこへのでん粉の添加効果

 でん粉はかまぼこの副原料として最も代表的なものであり、弾力の付与、食味の改善など、無でん粉製品を除いて3〜20%程度添加されています。かまぼこ製品におけるでん粉の効果としては、次にあげる点が考えられます。


(1)弾力の補強効果
  でん粉によるかまぼこの弾力補強効果は、でん粉粒自身の糊化に伴う吸水力に由来していると考えられています。かまぼこ製造時の加熱の際に、かまぼこに添加したでん粉は、魚肉たんぱく質から遊離してくる水分を吸収しながら糊化し、でん粉粒は膨潤するとともに魚肉たんぱく質は水分を離し濃縮されます。かまぼこの弾力はたんぱく質濃度に依存するため、でん粉を添加することにより弾力が強くなると考えられます。山澤ら1)は、吸水力の異なるでん粉を同量加えたかまぼこの物性変化から、でん粉の吸水力とかまぼこの弾力との関係を示し、吸水力の大きいでん粉を添加したかまぼこほど、弾力が強くなることを報告しています(表3)。


表3 かまぼこの物性に及ぼす各種添加でん粉の影響
出典:かまぼこ―その科学と技術―
*1:アミロース含量:約50%
*2:アミロース含量:約70%
*3:でん粉1g が90℃、30分加熱した時に吸水した水の重量

(2)その他の品質改良効果
  かまぼこ製品の多くは、つや、白さ、魚臭が少なく、風味の良いものが好まれる傾向にあり、でん粉は、白色、無味、無臭の粉末であり、かまぼこ製品の色調や風味を損なうことが少ないことなどから、かまぼこ製品へ好適な副原料として広く利用されています。このことから、かまぼこ製品に手軽に使える品質改良剤といえます。


5.でん粉に望まれる性質

 でん粉の性質を十分にかまぼこ製品に生かすために、(1)かまぼこ製品の保存によって、老化が進行し難いでん粉、(2)糊化温度の幅を大きく持ったでん粉、(3)弾力補強ばかりでなく、しなやかな弾力やソフトで強い弾力を付与させるなどかまぼこのテクスチャーを変化させることが可能なでん粉などの開発が望まれます。


表4 かまぼこ類生産量の推移
(単位:千トン)
資料:農林水産省水産物流通統計

6.おわりに

 平成18年の農林水産省水産物流通統計によるとかまぼこ製品の総生産量(魚肉ハム・ソーセージを除く)は、昭和50年に103万トンに達したのをピークに年々減少し、平成18年には55万4千トンと全盛期の半分近くになっています。表4には、かまぼこ類の生産量の推移を示しましたが、ここ2〜3年は減少傾向に歯止めがかかってきています。

 一方、世界を見るとBSE、鳥インフルエンザなどの発生や欧米人の健康志向による魚食の見直しなどから、魚の消費が急速に伸びています。米国におけるスケトウダラ製品を例に挙げますと、米国国家海洋漁業局(NMFS)の統計によると、2000年には34万トンの生産量が、2007年には47万8千トンまで増加しました。このことからも、魚類の世界的な需要の高まりが確認されています。

 また、魚肉ねり製品につきましては、水産業界紙の情報によると、2006年の世界消費量の予測値は127万6千トンであり、そのうちほぼ50%の61万8千トンが日本国内で製造され、残りは欧米や東南アジア諸国で製造され、魚類を含めて国際的な製品となっています。欧米諸国の魚食ブームに乗り、日本産の安全で品質の高い優良な魚肉ねり製品の輸出は以前とは異なった環境からも大いに期待できるといえます。

参考文献
1)かまぼこ−その科学と技術−、山澤正勝・関 伸夫・福田 裕編集、恒星社、厚生閣(2003)
2)馬鈴しょでん粉−特性とその利用−、全国農業協同組合連合会発行(1996)




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