[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 話題 > 閉鎖系の地球

閉鎖系の地球

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2008年12月]

【話題】

全日本糖化工業会
会長 有田 喜一
(群栄化学工業株式会社 代表取締役社長)


 先の戦時中、軍部は燃料不足の解消のため全国にいもの栽培とでん粉工場の建設を行い、そのでん粉からブドウ糖を作りブドウ糖からエタノールを作って燃料にするというどこかで聞いた話を60年も前に考えていたところが面白い話であります。しかし、一転して終戦後は砂糖不足を解消するため、そのでん粉を利用した糖化製品工場が何百社も誕生し、その中の一社が私どもの群栄化学であります。私どもではその後の砂糖の統制撤廃後の不況に対処するため、化学品事業の兼業に乗り出したのが昭和26年となっております。

 現在では糖化製品の業界の勢力図は大きく変化し、今では異性化糖が主力製品となり業者数も集約され、現在15社ほどになっています。全日本糖化工業会が2工業会に分れ、私は規模の小さな全日本糖化工業会の会長を平成10年から引き継いでおり、食料・農業・農村政策審議会の甘味資源部会等の委員を引き受け、この間の砂糖、でん粉の制度改革や砂糖と異性化糖の需給見通しにも関係してきました。

 私は工業会の会長を引き受ける前までは主として化学品事業の関連を担当していましたので、糖化製品の仕事はどちらかといえば素人の範疇に属していました。従いまして、審議会や委員会で消費者の代表の方々から「よくわからないのでわかりやすく説明をしてほしい」との要望をききますが、まことに現在の制度は複雑な制度にできていると感じています。

 でん粉の約3分の2を糖化製品の用途が占めていて、糖化製品の60%が異性化糖であることからでん粉政策は砂糖政策の中に取り込まれているのが実情です。しかも、砂糖の分野は南の甘しゃ糖、北のてん菜糖とまったく条件の違う国内産糖に輸入粗糖が絡んでいますから、でん粉からだけでは話が自由になりません。砂糖はWTO上の戦略物資として先進国と途上国の対立が激しく、常に大きな課題になっています。

 砂糖とでん粉は当然わが国の農政の課題になっておりますが、最近では部会や協議会での内容が公表されるようになり、誰でも見ることができるようになったわけですが、それほど大きな反響があるとは思いません。出席されている多くのメンバーはそれぞれ経済活動に携わっておられる人達で、権益が微妙にまた複雑に絡んでいますので、常に自己主張が対立しますからなかなか改革の話は進めにくい構造になっていると感じています。とりわけ国産品と輸入品のバランスが問題になります。

 一方、私は化学品事業の経験がはるかに長いので、化学品とでん粉とを比較して物を考えます。日本ではどちらも主原料は輸入品です。たとえば原油はほとんど100%輸入品ですし、でん粉も原料とうもろこしは100%輸入品ですから、原油から作るナフサやとうもろこしから作るでん粉も輸入品とみなします。しかも国産でん粉は全でん粉のわずか一割でしかありません。

 一方で、ばれいしょは輸作体系の柱の一つになっていますし、砂糖に至っては国産砂糖が全体の3分の1を占め主要な位置を占めています。

 国産と輸入品が同じ価格であれば話は簡単ですが、それが何倍も違いますと対応は難しく権益と絡んで話が堂々巡りをしているのが現状です。

 近年、化学業界では設備の大型化により生産設備が原料生産地の近くに移動、たとえば中東に集中してきています。これは消費市場から離れていくことになりますが、国産は価格的に対応できないので国内設備は廃止なり縮小に向かわざるを得ないのが実情です。これは、自由競争の最たるものであり、今のところ対抗手段はないので、国内では誘導品の機能性向上とか付加価値の増大で対抗しようとしています。

 今、対象となっているでん粉や砂糖は化学業界から見ればいずれも大量消費の単独商品に相当するものであります。従ってグローバルに見ればうまみのある商品となっています。お米ですらそのように見えます。食料自給率の確保の観点からどう判断するかが最大の問題点でありますが、参考に値する例として、スイスでは値段が高くても(価格が倍以上でも)国民は国産農産物を優先的に購入しています。そのため食料自給率は60%にもなる。

 一方、でん粉の種類とその利用形態、またその技術の進歩はすばらしいものがあります。また、我々の地球は太陽から光と熱を受けている。光合成を利用したでん粉や砂糖という食料を工業材料に変えるバイオ技術の発展は、いまや炭酸ガスを枯渇した油田の残油に注入して天然ガスを生成するバイオ技術へと発展していくでしょうし、再生可能な植物をプラスチック原料に変えていく技術発展が行われていくでしょう。

 わが国としてはこのような変化の中、食料の自給率向上と国産品と輸入品の棲み分けや内外価格差、食料と化学原料の棲み分けなど大きな課題が浮かんできます。

 このように見ていくと、わが国が食料自給率を50%に引き上げることは、国民が支持できるし、そのための仕組みを考え直す必要があるのではないでしょうか。いまや戦後63年にもなるのですから、一度大転換を可能にするような仕組みを考える必要があるのではないでしょうか。そんな仕組みを行政・立法府が作るべきではないでしょうか。

 たとえば、兼業ではなく専業に、また大規模農家に集中して補助を行うような方法で、ある意味輸入品とある範囲内で競争できることを条件にすることが必要ではないかと考えます。

 所詮グローバル化とはいえ、地球は閉ざされた閉鎖系であり、その中でしか世界の人間は生きていけないのですから。






このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.