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タイにおけるキャッサバを利用したバイオエタノール生産の動き

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉情報

[2008年5月]

【国内外の需給動向

調査情報部


 タイでは2007年に、バイオエタノールの利用を促進するためエタノール価格の計算方法の変更やエタノール混合ガソリンとガソリンとの価格差の変更などが行われた。また、2008年までに新たに8工場がキャッサバを原料として操業を予定しており、バイオエタノール生産の動きはタピオカでん粉の需給にも影響を及ぼすことになると見られる。
  このようなタイのバイオエタノールの動向について、タイのJEC社からの報告を基に、2007年の動きを中心に取りまとめたので紹介する。


表1 稼働中のバイオエタノール工場(2007年12月11日時点)
単位:リットル/日
出典: エネルギー省
備考: 1)PORNVILIA INTERNATIONAL GROUP TRADING社では、エタノールの代わりに酢酸を生産している。
2)KHON HAEN ALCOHOL CO., LTD.は2006年1月に1日当たり100キロリットルの生産能力で操業を開始 し、2006年12月には生産能力を1日当たり150キロリットルに増加している。
3)PETRO GREEN CO., LTD.(チャイヤプーム県)は社名をUNITED FAMER & INDUSTRYに変更している。

1.バイオエタノール生産の現状

 タイ政府は、2003年9月の閣議で、オクタン値95ガソリンにおけるガソリン添加剤であるMTBE(メチル・ターシャリー・ブチルエーテル)の代替としてエタノールを混合した、ガソホール(エタノール混合率10%程度のエタノール混合ガソリン)の利用を促進する政策を承認し、2007年1月からベンジン95(オクタン価95ガソリン、ハイオクガソリン)を完全にガソホール95に置き換えるという政策を承認した。このため、エタノール生産量は2006年1月の1日当たり370キロリットルから2007年11月の590キロリットルに59.5%増加した。
  しかし、1995年以前に製造された車両はガソホールを使用することができないことを理由に、政府は2006年11月にベンジン95の完全廃止を延期し、2007年にはベンジン95の廃止は行わないと方針を切り替えた。それに伴いガソホールの利用量の増加が伸び悩み、エタノール在庫が限界に達したため、エタノール生産量は2007年6月には一時的に1日当たり280キロリットルにまで減少した。その後、政府のガソホール利用奨励政策により、エタノールの利用量が増加するにつれ2007年9月からは生産量も回復してきている。
  2007年12月現在、45工場がエタノール生産の認可を受けているが、実際に稼動しているエタノール生産工場は8工場である。このうち、キャッサバからのエタノール生産設備を持っているのは1社のみとなっている。稼動している工場の生産能力の合計は、1日当たり1,055キロリットルであるが、2007年11月時点ではエタノール在庫量が多いため1日当たり生産量は590キロリットルで操業している。


図1 エタノール生産量の推移

2.タイにおけるバイオエタノール政策の動き

 近年のタイにおけるバイオエタノールに関する主な出来事を、表2にまとめている。
  エタノール価格は、2007年2月に、従来のコスト積み上げ方式から、表3に示すようにブラジルのエタノール輸出価格に輸送費や保険料をプラスしたものを市場価格の参考価格として用いる方式に変更した。これにより、エタノール価格はそれまでの25.3バーツ/リットルから19.33バーツ/リットルへと大幅に低下した。その後もエタノールの販売価格はブラジルのエタノール価格の下落に伴い値下がりが続き、2007年第4四半期にはリットル当たり15.29バーツにまで低下している。
  また、タイ政府は2007年第2四半期頃からガソホールの販売量を増加させるため、ベンジンとガソホールの価格差を付けることによる利用促進を開始した。各種ガソリン価格は表5、6のとおりであるが、小売業者にガソホール販売のインセンティブを与えるため、販売マージンは常にベンジンよりもガソホールの方が高くなるよう設定されている。
  ベンジン95の価格は原油価格の高騰に伴い値上りを続け、11月にはリットル当たり32.19バーツと過去最高を記録しているが、タイ政府はガソホールの燃料基金への拠出金などの負担を少なくすることにより、ガソホールの値上がりを押さえている。2007年1月にはベンジン95とガソホール95の差額はリットル当たり0.75バーツに設定されていたが、その後タイ政府は徐々に差額を広げ3月には1.5バーツに、4月には2.5バーツ、そして12月現在では4バーツにまでその差は広がっている。
  レギュラーガソリン(オクタン値91)についても同様で、2005年1月にはベンジン91とガソホール91の差額は0.5バーツだったが、2006年1月には1.2バーツに、2007年4月には2バーツに、12月には3.5バーツにまで広がっている。


表2 タイにおけるバイオ燃料(エタノール)に関する近年の動き
出典:現地新聞記事およびエネルギー省に対する聞き取りにより作成

表3 エタノールの参考価格
 エタノール価格=ブラジル市場におけるエタノール価格+輸送費+保険金+Loss+試験代
出典:エネルギー省

表4 エタノール参考価格の推移
出典:エネルギー省

表5 ガソリンとガソホールの価格内訳(2007年3月1日時点)
単位:バーツ/リットル
出典:エネルギー省

表6 ガソリンとガソホールの価格内訳(2007年12月20日時点)
単位:バーツ/リットル
出典:エネルギー省

図2 ガソリンおよびガソホール価格の推移


3.エタノールの輸出

 エタノール生産工場は、エタノール供給過多の状態に対処するため、海外への輸出を開始している。2007年4月に初めて350キロリットルを輸出し、2007年11月時点で合計1万3,275キロリットルを輸出している。輸出先はシンガポールが87.7%、フィリピンが8.0%、オーストラリアが4.3%となっている。

図3 エタノールの輸出

4.ガソホールの販売体制および販売量
2006月にはタイ全国でガソホールを販売している給油スタンド は3,157カ所となっていたが、2007年8月には13.8%増加し、3,592カ所となっている。タイ政府はガソホールの販売を促進しており、政府は今後3年以内に4,000カ所にまで増やすことを目標としている。
  ガソホール95の販売量は、図5のとおり2005年1月には270キロリットル/日とベンジン95の7,410キロリットル/日を大きく下回っていたが、2005年中ごろから急増した。その後、販売量は3,000キロリットルを上回る程度で推移していたが、ベンジン95との価格差が広がったために2007年4月からガソホール95の販売量が再び増加し、同月にはベンジン95の3,440キロリットル/日に対して、ガソホール95は3,590キロリットル/日とベンジン95の販売量を上回った。2007年10月には、ベンジン95が2,660キロリットル/日に対して、ガソホールは4,860キロリットル/日と大きく上回っている。
  ガソホール91の使用量は2005年から微増を続けていたが、2007年からベンジン91との差額が広がったことにより、増加傾向が顕著になっている。しかし、2007年10月時点ではベンジン91の1万1,570キロリットルに対して、930キロリットルと1割にも満たない状況にある。

図4 ガソホール販売給油スタンド数の推移

図5 ベンジン95およびガソホール95販売量の推移

図6 ベンジン91およびガソホール91販売量の推移

5.エタノール生産工場の現状

 2007年12月現在、表7に示す11のエタノール生産工場が建設中であり、これらのうち8工場がキャッサバからのエタノール生産設備を備えている。ただし、2007年の初めから問題となっていたエタノールの供給過多、政府によるエタノール価格の計算方法変更に伴うエタノール価格の大幅な値下がりなどにより、経営者は生産開始に二の足を踏み、延期を繰り返している。
  これら11工場全てが生産を開始すると、エタノール供給量は従来の8工場による1日当たり1,055キロリットルに1,870キロリットルが加わり、合計2,925キロリットルとなる。ガソホールの利用促進政策により、2007年第2四半期からガソホールの消費は急増しているが、2007年12月時点ではエタノール在庫のだぶつきは解消されていない。


表7 建設中のバイオエタノール工場
単位:リットル/日
出典: エネルギー省
備考: 1)アイ イー シー ビジネスパートナー株式会社は、インターナショナル・ガソホール・コーポレーション社から社名を変更した。設備は設置済みであり、現在、マネージメントシステムを改善中である。
2)EKARAT PATTANA CO., LTD.は、1日当たり国内販売を100キロリットル、海外輸出を100キロリットル行う許可を得ている。
3)PETRO GREEN CO., LTD.は、ナームターン・ミットポン社から社名変更を行った。また工場の立地をカーラシィン県に変更する許可を得ている。

6.E20の実用化について

 E20の実用化については、2007年12月3日、エネルギー政策委員会議にて価格をガソホール95から1バーツ安い価格(ベンジン95と比較すると5バーツ安い価格)に設定し、2008年1月から販売を開始することが決議された。
  また、エネルギー省は、2008年初めからE20対応車両の関税を5%引き下げることにしている。現在、自動車メーカー大手数社がE20仕様車を発売しており、2007年12月に行われたモーターショーでもE20に対応したモデルが関心を集めていた。2008年に販売されるE20対応車が6万台と推測されていることから、E20の需要量は1日当たり35キロリットル程度と見られる。この需要量は、バンコクおよび近郊の15カ所の給油スタンド(PTTが10、バーンジャークが5)で販売することにより満たすことができるとされている。 
  E20の次のステップとして、タイ政府はE85の実用化を検討しているが、自動車メーカーはE85対応車の開発のためには、少なくとも3〜4年の期間が必要としている。E85の具体的な計画および奨励政策は2008年1月に検討および発表される見通しである。


7.エタノール生産によるタピオカ市場への影響

 キャッサバを原料としたエタノール生産が増加したことに加え、飼料としての中国、EUなどでのキャッサバ需要が増加している。特にペレットの輸出は、近年EUへの輸出が減少していたが、2007年には世界的な飼料不足により増加に転じ、2006年の39万トンに対し2007年には165万トンと4倍以上にまで増加している。このため、キャッサバの価格は、2007年1月の1.12バーツ/kgから2008年1月には1.99バーツ/kgにまで高騰している。エタノール生産工場では、原料コストの大幅な増加や供給過多であることから、生産を一時停止する業者も出てきている。
  キャッサバ価格が高いために、他の作物からキャッサバに転作する農家も多く現れており、タピオカ取引協会では2008年のキャッサバ生産量は2,760万トンになると予想しており、2006年の2,258万トンに比べると502万トンの増産になると見られる。
  しかし、建設中の工場が操業すると、キャッサバからのエタノール生産は最大で1,480キロリットル/日にまで拡大し、フル稼働した場合には約300万トンのキャッサバが使用されることになる。穀物価格も依然として高値で推移していることから、今後も2007年と同程度のペレットが輸出されるとすると、2006年に比べ300万トン程度のキャッサバ需要増となる。このため、キャッサバの増産分を需要の増加分が上回り、価格はさらに上昇すると見られている。
  タピオカ取引協会では、キャッサバの供給が不足することを危惧し、農業協同組合省に対して、キャッサバ産業全体に関する検討および方針を定めるキャッサバ開発委員会の設置を提案している。でん粉など食料としての利用と飼料用、燃料用向けとの競合は、さらに激化する可能性があり、今後の動向が注目される。


図6 ベンジン91およびガソホール91販売量の推移

図8 キャッサバ農家価格の推移




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