畜産物の需給動向

 2 牛肉 


▼輸 入
14年度の輸入量は、BSEの影響による消費の減退を受けて、冷蔵、冷凍品ともにかなり大きく減少し、53万4千トン(▲12.1%)。

 輸入量は、英国でのBSE問題、腸管出血性大腸菌O157による食中毒等の影響で消費が減退した8年度を除き、増加傾向にあった。しかし、13年度には、国内初のBSEが確認された影響による消費の減退を受けて大幅に減少した。14年度も輸入量の減少は続き、53万4千トン(▲12.1%)と大きく減少した。これは、BSE発生前(12年度)の7割程度の水準である。
輸出国別では豪州産が7.9%減とかなりの程度減少した一方で、米国産は15.8%減と大幅に減少した。輸入数量の90%以上を米国、豪州産が占めている状況に変化はない(図8、図9、図10、P.73、75)。




米国産

 米国産は、特定部位の大量輸入が可能なこと(豪州産はフルセットが中心)、穀物肥育牛肉で日本の求める品質に合っていること等から、急速に輸入量を増やしてきており、12年度まではほぼ増加傾向で推移してきた。
 しかし、13年度には、BSEの影響から大幅に減少し、14年度も240,144トン(▲15.8%)と引き続き大幅な減少となった(図11、P.75)。
輸入量に占めるロインの割合は、年々減少傾向で推移しており、14年度には7%にまで低下した。これは、量販店での輸入牛肉販売の主力が、かつてのロインのステーキカットから、かた、ももなどのスライスものに移行したことに加えて、ショートリブなど焼き肉商材の占める割合が増加したためとみられる(図11、P.75)。

豪州産
 高水準の冷蔵技術と穀物肥育牛肉の生産拡大等から、冷蔵品を主体とする豪州産の輸入量は、順調に増加してきた。しかし、6年以降はそれまでの増加量に比べ落ち着きが見られるようになった。輸入量は8、11年度を除いて前年度を上回っており、ほぼ増加傾向で推移。13年度には、BSEの影響から冷凍品はかなりの程度、冷蔵品は大幅に前年度を下回った。14年度も引き続き、冷凍品、冷蔵品ともにかなりの程度減少し、合計で262,486トン(▲7.9%)となった(図12、P.75)。
国内のBSE発生数は7件に
 13年9月に国内初の牛海綿状脳症(BSE)の発生が確認された後、14年3月までに3件が確認された。14年度には、北海道で2件、神奈川県、和歌山県で各1件が確認されており、国内のBSE発生件数は通算で7件となった。これらは、いずれも乳用種の雌牛であった。
 
BSE関連対策を拡充

 国内でのBSE発生に対処するため、家畜衛生、食品安全性確保などに関する各種のBSE関連対策が実施された。牛肉消費の減少による牛枝肉価格の暴落で大きな打撃を受けていた肥育農家の経営支援のため、BSE対応肉用牛肥育経営特別対策事業(BSEマル緊:肥育牛1頭当たりの粗利益が、家族労働費を差し引いた生産費を下回った場合にその差額を1月ごとに交付)が昨年に引き続き実施されたほか、肉用子牛生産農家に対する支援策の1つとして、通常の発動時では4半期ごとに交付される肉子牛生産者補給金も、14年度には毎月交付に変更された。

 

学校給食での牛肉の使用自粛は4%まで低下

 BSE発生直後には、牛肉の安全性に対する不信感から、学校給食を実施する全国の学校の半数以上で、献立から牛肉のメニューを除外する動きが広がった。BSEの全頭検査や特定危険部位の除去など牛肉の安全性確保対策が迅速に実施されたこともあり、牛肉の使用を自粛する学校は徐々に減少したものの、14年4月でも15%の学校が給食での牛肉使用を自粛していた。その後、牛肉の安全性に関する知識の普及・啓蒙などの結果、14年度末(15年3月)には、その割合は4%にまで低下した。