畜産物の需給動向

 2 牛肉 


▼輸 入
16年度は、BSE発生に伴う米国産などの輸入停止を受けて、かなり大きく減少し、45万トン(▲13.4%)。
 輸入量は、腸管出血性大腸菌O 1 5 7による食中毒などの影響で消費が減退した8年度を除き、増加傾向にあった。しかし、1 3年度には、国内初のB S Eが確認された影響による消費減退のため大幅に減少し、1 4年度も引き続き減少した。1 5年度には回復基調に転じたものの、カナダや米国におけるB S E発生に伴い、これらの国からの輸入が停止(カナダ:5月2 1日から、米国: 1 2月2 4日から)されたことから、1 6年度の輸入量は4 5 0 , 3 6 2トン(▲1 3 . 4 %)と前年度をかなり大きく下回った。

 国別では、米国産、カナダ産とは対照的に、供給態勢が整備された豪州産は、4 1 0 , 2 1 8トン(3 9 . 2%)、ニュージーランド産は、3 4 , 8 1 9トン(63.8%)と大幅に増加した(図8、図9、図10、P.155、157)


図8 牛肉の輸入量
図9 牛肉の国別輸入量


資料:財務省「貿易統計」
  注1:冷凍品にはくず肉等を含む。
   2:部分肉ベース
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース

図10 牛肉の月別輸入量と関税の緊急措置発動状況



資料:財務省「貿易統計」
 注1:輸入量は部分肉ベース
 注2:過去の関税の緊急措置の発動実績は、7年11月〜8年3月(冷凍)、8年8月〜9年3月(冷凍)の2回である。


米国産

図11 米国産牛肉の輸入量

 米国産は、特定部位の大量輸入が可能なこと(豪州産はフルセットが中心)、穀物肥育牛肉で日本の求める品質に合っていることなどから、輸入量を増やしてきた。

 しかし、1 3年度には、B S E発生に伴う消費減退から大幅に減少し、1 4年度にも引き続き大幅な減少となった。1 5年度には回復に転じたが、米国でのB S E発生に伴い、平成1 5年1 2月2 4日から輸入が停止されたため、1 6年には輸入されていない(図11、P.157)。

 

資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース
豪州産
図12 豪州産牛肉の輸入量
 冷蔵技術の改良と穀物肥育牛肉の生産拡大などから、冷蔵品を主体とする豪州産の輸入量は、順調に増加してきた。しかし、1 3年度には、B S Eの影響から大幅に前年度を下回り、1 4年度も引き続き減少した。1 5年度には国内の牛肉消費回復に伴い、輸入量も前年同月を上回って推移し、さらに、米国産牛肉の輸入停止の影響により、1 6年には4 1 0 , 2 1 8トン(3 9 . 2%)と大幅に増加した(図12、P.157)。
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース
米国産牛肉輸入一時停止措置による国内需給への影響
 1 5年1 2月に米国でB S E感染牛が確認されたことにより、米国産牛肉が輸入一時停止となり、この結果、1 6年度の輸入量はゼロとなった。米国産牛肉は、日本の牛肉消費量の4分の1を占めていただけに、国内の需給に大きな影響を与えた。

 豪州の日本向け供給態勢が整い、豪州産牛肉の輸入量が大幅に増加したものの、米国産の穴埋めをすることだけの数量までいかなかったことなどから、品薄状態が続いた。これにより、乳用種や交雑種の需要が増し、国産の枝肉卸売価格は年間通して高値で推移した。その結果、肉牛の出荷が前倒しとなった。また、早出しの影響が出て、1 7 年1月以降と畜頭数が前年同月を下回って推移し、更なる品薄感を強めたことから、卸売価格は強含みで推移し、と畜頭数の回復も見られていない。

 一方、小売価格は、卸売価格の伸びほどの上昇は見られず、また、消費量も減少傾向となり、消費者の牛肉離れが懸念された一年となった。

 
牛肉トレーサビリティ法、1 2月1日から流通段階にも施行

 牛肉トレーサビリティ法は、1 5年1 2月1日から、生産段階においては既に実施されているが、1 6年1 2月1日から流通段階にも施行され、これで完全施行となった。

 これにより、スーパーなどの精肉売り場や特定料理(焼き肉、しゃぶしゃぶ、すきやきおよびステーキ)を提供する飲食店は、1 0桁の個体識別番号またはロット番号を表示し、国産牛肉の品種や出生地など生産情報の開示を義務づけられた。この個体識別番号を独立行政法人家畜改良センターのホームページにアクセスし、入力すると、簡単に牛の情報を入手することができるようになっている。なお、特定料理に含まれていない牛丼や輸入牛肉は対象となっていない。

 トレーサビリティが料理店まで対象に含むのは、日本独自の制度であり、食の安全対策では、世界でも例のない厳しい制度となっている。