海外編

 I 米国 




1. 一般経済の概況 

 米国経済は、2000年から2001年にかけてITバブルの崩壊や同時多発テロの影響により景気が後退し、2001年第3四半期には実質国内総生産(GDP)成長率がマイナスにまで落ち込んだ。しかし、ブッシュ政権による大規模な減税や金融当局の利下げなどにより、個人消費や企業の設備投資意欲が急速に回復した結果、同年第4四半期以降、景気は安定成長を続けてきた。2005年のGDP成長率は前年比0.5ポイント減となったが、昨年に引き続き年率3%以上の成長を記録している。また、2005年の消費者物価指数は前年比3.4%増、生産者物価指数も同4.8%増となった。一方、2005年の貿易収支は、貿易赤字(国際収支ベース)が前年より17.5%、金額にして1,175億ドル増加し、7,871億ドルと過去最大を記録した。

表1 主要経済指標



2. 農・畜産業の概況

 米国経済における農業の位置付けは、他産業の発展に伴い時代の経過とともに低くなる傾向にあり、2005年においては、GDPのうち農業生産(農産物販売額:現金収入の暫定値)の占める割合は1.9%と前年比5.6%減となった。しかし、世界的に見ると、農業生産額は中国に次いで第2位、農産物貿易額は輸出入ともに首位を占めるなど、米国農業の影響力は引き続き高い水準にあると言える。

 2005年の農業経営体数(農産物の年間販売額1千ドル以上)は210万1千戸であった。また、1経営体当たりの農用地面積は444エーカー(178ヘクタール)で、農用地面積全体としては9億3,340万エーカー(3億7,336万ヘクタール)であった。なお、年間10万ドル以上の農産物販売実績のある経営体は全体の16.0%で、全農用地面積の59.4%を占めている。

 2005年の農産物販売額(現金収入の暫定値)は、2,389億ドルと前年を0.4%上回った。このうち、作物部門は1,140億ドルで前年比0.3%減となった。一方、畜産部門は前年を1.1%上回る1,250億ドルとなり、農産物全体に占めるシェアも52.3%と前年に引き続き作物部門を上回った。

 畜産部門の品目別の販売額を見ると、肉用牛が492億ドル(農産物全体に占める割合は20.6%)と第1位で、次いで養鶏(家きん、採卵鶏)が209億ドル(同12.1%)となっている。また、作物部門についても、その約6割が家畜飼料に向けられるトウモロコシの販売額が191億ドル(同8.0%)となっており、畜産が米国農業に与える影響は極めて大きい。


図1 農産物販売額(2005年度)
図2 畜産物販売額(2005年度)



3. 畜産の動向 

(1)酪農・乳業

 米国は年間約8,000万トンの生乳を生産しており、世界最大の酪農国である。しかしながら、国内に巨大な消費市場を抱えていることなどから、国際乳製品市場における米国の地位は比較的低いものとなっている。



(1) 主要な政策

 酪農の主な制度には、加工原料乳価格支持制度と連邦生乳マーケティングオーダー制度(FMMO)がある。加工原料乳価格支持制度は、米国農務省(USDA)の1機関である商品金融公社(CCC)が、加工原料乳の支持価格水準に見合う価格でチーズ、バターおよび脱脂粉乳を買い上げることにより、加工原料乳の価格を間接的に支持する制度である。

 この制度は96年農業法に基づき、2000年1月1日以降廃止されることとなっていたが、生産者の強い反対などを反映して、延長が繰り返された結果、今日まで実施され続けている。

 2002年新農業法では、これまで延長された支持価格を固定したまま、2007年12月まで延長することとされた。

 一方、FMMOは、オーダー地域内で取引される飲用規格生乳について、用途別の最低取引価格を設定するとともに、生乳取扱業者に対して、生産者へのプール乳価での支払いを義務付けることにより、生産者に対しては安定的な市場を確保すること、また、消費者に対しては合理的な価格で十分な量の良質な飲用乳を供給することを目的としたものである。2000年1月からは紆余(うよ)曲折を経て、(1)オーダー数の再編統合(31から11へ)、(2)生乳の用途区分の再分類(3区分から4区分へ)、(3)最低取引価格の設定に用いられる価格について、これまでの基礎公式価格(BFP)に代えて、多成分価格形成システムに基づく新基礎価格の導入−などの変更が加えられた。なお、2002年新農業法においては、前述の変更後の制度を維持する形で2007年12月まで継続されることとなっている。



(2) 生乳の生産動向

ア.酪農経営体数
 酪農経営体数は、小規模層を中心に一貫して減少傾向で推移しており、2005年には前年比4.0%減の7万8千戸となった。


表2 酪農経営体数、飼養頭数の推移
図3 酪農経営体数及び飼養規模の推移

イ.飼養頭数と生産量
 経産牛の飼養頭数は、80年代後半から減少傾向で推移してきている。2000年以降についても、前年をわずかに上回った2000年と2002年を除き、飼養頭数は毎年減少してきたが、2005年は前年比0.3%増の904万頭となった。

 2005年の生乳生産量は、前年比3.5%増の8,025万トンとなった。

ウ.経産牛1頭当たり乳量
 2005年の経産牛1頭当たり乳量は、前年比3.2%増の8,874キログラムとなった。


表3 生乳・乳製品の生産量
図4 生乳生産量と1頭当たり乳量の推移

エ.地域別生産動向
 生乳は、すべての州において生産されているが、生産量の半分以上は上位5州(カリフォルニア、ウィスコンシン、ニューヨーク、ペンシルベニア、アイダホ)によって占められており、上位10州(6位以下:ミネソタ、ニューメキシコ、ミシガン、テキサス、ワシントン)では全体の7割以上を占めている。特に93年にウィスコンシン州を抜いて首位になったカリフォルニア州は、その後も生産拡大を持続し、2005年の年間生産量は前年比3.0%増の1,704万トンとなった。また、第2位のウィスコンシン州は、1,037万トンで前年比3.5%増となった。カリフォルニア州を代表とする西部の新興生産地域は、冬期でも比較的温暖で乾燥しているために畜舎などへの投資コストが低く、さらに安価な労働力も確保しやすいことなどから、大規模化が図りやすいという利点がある。カリフォルニア州では、500頭以上の経営体による生産量の州全体に占める割合が88.0%であるのに対し、ウィスコンシン州では16.0%となっている。



(3) 牛乳・乳製品の需給動向

ア.生産動向
 2005年のチーズの生産量(カッテージチーズを除く)は、前年比3.1%増の415万トンとなった。チェダーチーズを中心とするアメリカンタイプの生産量は前年比1.9%増、モッツァレラチーズなどイタリアンタイプの生産量は前年比3.9%増とともに増加した。イタリアンタイプの生産増加は、宅配ピザやファストフードでの需要の増加によるところが大きい。なお、同年のチーズ生産量の内訳は、アメリカンタイプ(172万7千トン)、イタリアンタイプ(172万5千トン)ともに42%のシェアを占めている。

 また、脱脂粉乳の生産量は、前年比14.3%減の54万9千トンとなった。一方、バター生産量については、前年比8.1%増の61万1千トンとなった。

図5 チーズ生産量の推移

イ.消費動向
 1人1年当たりの飲用乳・クリーム消費量(製品ベース、以下同じ)は、ほかの飲料との競合などにより、おおむね減少傾向で推移しており、2005年も前年比1.3%減の92.4キログラムとなった。なお、飲用乳の消費は、全脂牛乳から低脂肪牛乳、脱脂牛乳へと低脂肪タイプへの移行が進んでいる。

 一方、1人1年当たりのチーズ(カッテージチーズを除く)消費量は、近年おおむね増加傾向で推移してきており、2005年は前年比0.6%増の14.2キログラムとなった。また、1人1年当たりのバター消費量は、前年同の2.1キログラムとなった。



(4) 牛乳・乳製品の価格動向

ア.生乳価格
 加工原料乳価格(グレードB規格生乳の農家販売価格)の推移を見ると、2005年は生乳生産が増大したことなどから、年平均では前年比6.7%安の100ポンド当たり14.42ドルとなった。また、同年の平均生乳販売価格は、加工原料乳価格の低下を反映し、前年比5.8%安の15.19ドルとなった。

表4 生乳の生産者販売価格
 

イ.乳製品の卸売価格
 2005年の乳製品の卸売価格は、需要が前年とほぼ横ばいで推移する中、生乳生産量が増大したことから、脱脂粉乳を除き前年を下回って推移した。チェダーチーズ価格は供給増により値下がりし、年平均価格は前年比9.7%安のポンド当たり144.8セントとなった。また、脱脂粉乳価格は、生産量の減少を反映して、前年比11.6%高の同95.1セントとなった。さらに、バターは、生産量の増加などにより前年比14.8%安の154.8セントとなった。

表5 乳製品の卸売価格の推移


(5) 乳製品の政府買い上げ

 2005年の商品金融公社(CCC)による余剰乳製品の買い上げ数量は、前年に比べ大幅に減少し、無脂乳固形分ベースで44万1千トンの売り渡しが実施された。

表6 乳製品の政府買い上げ数量の推移



(2)肉牛・牛肉産業

 米国は、世界の牛肉生産量の約4分の1を占める最大の生産国であり、同時に世界最大の牛肉輸入国でもある。国内的にも、肉牛産業は農産物販売額に占める割合が最大となっており、米国農業の中でも最も重要な部門の一つとなっている。

 子牛生産は、家族経営による粗放的な生産・管理が行われる一方、育成された肥育素牛は、大規模なフィードロットで効率的な穀物肥育が行われている。また、肉牛の流通面では、大手パッカーによる寡占化が顕著となっている。

表7 肉用牛繁殖経営体数、飼養頭数の推移

(1) 肉牛の生産動向

ア.肉用牛繁殖経営体数
 肉用牛繁殖経営体数(年間に1頭以上飼養)は、近年減少傾向で推移しており、2005年も前年比0.6%減の77万戸となった。

イ.飼養頭数
 米国の牛飼養頭数は、約10年のサイクルで増減を繰り返している。2006年1月1日現在の牛総飼養頭数は、前年比1.3%増の9,670万頭となった。

 88年に1億頭を下回り、90年に底を打ったキャトルサイクルは、91年以降上昇局面に転じていた。96年には、肥育素牛価格の低迷などにより、繁殖経営体の収益性が急速に悪化したことに加えて、テキサス州などの南西部を襲った干ばつの影響もあり、キャトルサイクルは下降に転じた。その後も繁殖雌牛頭数が減少傾向にあることから、総飼養頭数は98年以降1億頭を下回って推移している。

 飼養頭数の内訳を見ると、肉用種繁殖雌牛は前年比0.2%増の3,299万頭、このうち500ポンド以上の肉用種更新用未経産牛は、前年比3.7%増の590万頭となった。

 2005年における子牛生産頭数(乳用種を含む)は、繁殖雌牛飼養頭数の増加により、前年比0.2%増の3,758万頭となった。

図6 種類別と畜頭数(2005年)

(2) 牛肉の需給動向

ア.生産動向
 2005年の成牛と畜頭数(コマーシャルベース)は、前年比1.0%減の3,239万頭となった。

 種類別(連邦政府検査ベース)では、去勢牛が前年比3.7%増となった一方、未経産牛は前年比5.6%減、また、経産牛は前年比5.8%減となった。このうち、肉用経産牛は、前年を6.8%下回る252万頭となった。

 一方、2005年の成牛のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年比7.7キログラム増の571キログラムとなった。また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)も、前年比5.9キログラム増の348.8キログラムとなり、前年を上回って推移した。

 この結果、と畜頭数は前年に比べわずかに減少したものの、2005年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、前年比0.6%増の1,124万トンと前年とほぼ同水準となった。

表8 牛肉需要(枝肉換算)の推移

イ.輸出入動向
 2005年の牛肉輸入量(枝肉ベース)は、米国内の生産量(枝肉ベース)が増加したことなどから、前年比2.2%減の163万2千トンとなった。国別に見ると、カナダからの輸入が前年比2.8%増の49万5千トンとなり、昨年最大の輸入国であった豪州(同19.5%減の40万8千トン)を上回り最大となった。

 一方、2005年の生体牛の輸入は、2003年5月におけるカナダでのBSE感染牛の確認以来継続していた同国産の輸入停止措置が2005年7月、条件付きで解除されたことなどから、全体では前年比32.5%増の181万6千頭となった。国別では、メキシコからの輸入が前年比8.3%減となったものの126万頭と前年に引き続き最大で、また、前年はほぼゼロであったカナダからの輸入は56万頭となった。

 2003年12月にワシントン州でBSEが発生した影響を受け、2004年に大幅に減少した牛肉輸出量(枝肉ベース)は、2005年では前年比51.2%増の31万6千トンとなった。国別では、メキシコ向けが前年比39.2%増の21万トンになるとともに、カナダ向けも前年を87.6%上回る4万8千トンとなった。また、2003年まで最大の輸出相手国であった日本向けは、前年比50.7%増の8千トンとなった。

図7 牛肉の輸出量と相手国

ウ.消費動向
 1人1年当たりの牛肉消費量(小売重量ベース)は、健康志向の高まりなどから減少傾向が続いたが、小売価格の値下がりや消費拡大キャンペーンが奏功し、94年以降わずかながら増加傾向で推移してきた。2000年以降はわずかな増減を繰り返しながらほぼ横ばいで推移しており、2005年は前年同の29.9キログラムとなった。



(3) 肉牛・牛肉の価格動向

ア.肥育素牛価格
 肥育素牛価格(オクラホマシティー、600〜650ポンド)は、2005年平均では、100ポンド当たり120.0ドルと前年を7.3%上回った。

イ.肥育牛価格
 2005年の肥育主要7州(アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、アイオワ、カンザス、ネブラスカ、テキサス州)における肥育素牛導入頭数は、前年比1.8%増の2,054万頭となった。また、肥育牛出荷頭数は前年比0.4%減の1,927万頭となった。

 チョイス級肥育牛価格(ネブラスカ、1,100〜1,300ポンド、去勢牛)は、2005年平均で100ポンド当たり87.3ドルとなり、前年に比べて3.1%上昇した。

表9 肉牛、牛肉の価格の推移

ウ.牛肉卸売価格
 2005年の卸売価格(チョイス級、600〜750ポンド、カットアウトバリュー)は、前年比2.7%高の100ポンド当たり145.8ドルとなった。

エ.牛肉小売価格
 牛肉の2005年の平均小売価格(チョイス級)は、前年比0.7%高のポンド当たり409.2セントとなった。




(3)養豚・豚肉産業

 米国の養豚産業は、アイオワ州やイリノイ州を中心とするコーンベルト地帯において、伝統的に穀物生産や肉牛経営の副業として営まれてきた。一方、ノースカロライナ州やオクラホマ州でのインテグレーションの出現が、養豚産業に対し、生産・流通などの面で大きな変化をもたらしている。

 また、豚肉輸出は近年大幅な伸びを示しており、95年には40数年ぶりに純輸出国に転じた。一方で、大規模経営体による環境問題が顕在化しており、各州において環境規制を強化する動きがみられている。



(1) 豚の生産動向

ア.養豚経営体数
 養豚経営体数は、小規模層を中心として減少傾向で推移しており、2005年では、前年比3.2%減の6万7千戸となった。1経営体当たりの飼養規模別では、100頭未満の層が全経営体数の60.3%を占めているものの、飼養頭数では全体の1.0%を占めるにすぎない。一方、5千頭以上の層は、経営体数全体の3.5%にすぎないが、全飼養頭数の53.0%を占めている。

表10 養豚経営体数、飼養頭数の推移
 

イ.飼養頭数
 豚飼養頭数は、2001年に3年ぶりに増加に転じ、2002年はほぼ横ばいとなったものの、2003年には再び増加して5年ぶりに6千万頭台に回復した。2005年(12月1日現在)は前年比0.8%増の6,145万頭と引き続き増加している。

 飼養頭数の内訳を見ると、繁殖豚は前年比0.7%増の601万頭に、また、肥育豚は前年比0.8%増の5,544万頭となった。

 2005年(2004年12月〜2005年11月)の子豚生産頭数は、一腹当たり産子数が前年比0.8%増の9.01頭となったことに加え、繁殖母豚が前年比0.3%増となったことなどから、10,396万頭と前年より1.2%増加した。

図8 養豚経営体数及び飼養規模の推移


(2) 豚肉の需給動向

ア.生産動向
 2005年のと畜頭数(コマーシャルベース)は、前年比0.1%増の10,358万頭となり、豚肉生産量も前年比0.9%増の939万2千トンに増加した。

 なお、2005年のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年比0.9%増の122.0キログラム、また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)は、前年より0.9%増の91.2キログラムとなった。

表11 豚肉需要(枝肉換算)の推移

イ.輸出入動向
 豚肉の輸入量(枝肉ベース)は、97年以降おおむね前年を上回ってきたが、2004年に減少傾向に転じ、2005年では前年比6.6%減の46万5千トンとなった。国別に見ると、カナダが38万トン(総輸入量に占める割合は81.7%)、デンマークが4万5千トン(同9.7%)となっている。

 また、生体豚の輸入は、ほぼ100%がカナダからのものである。同国からの輸入頭数は、近年、増加傾向で推移してきており、2005年では前年に比べ3.7%減(819万頭)となったが、依然として高水準となっている。

 一方、輸出量(枝肉ベース)も、91年以降、毎年前年を上回って推移してきた。2005年では、最大の輸出先である日本向けが、前年比13.6%増の47万4千トンと引き続き好調であったことや、2001年に大幅に増加した第2位の輸出先であるメキシコ向けが、前年比1.0%増の24万4千トンとなったこと、また、ロシア向けが、前年比40%増の4万3千トンとなったことなどから、輸出量全体は前年比22.3%増の120万9千トンと初めて100万トンの大台を超えるものとなった。

ウ.消費動向
 1人1年当たりの豚肉消費量(小売重量ベース)は、近年ほぼ横ばいで推移している。2005年は小売価格が前年を上回ったことなどにより、前年比1.7%減の22.7キログラムとなった。


図9 カナダからの生体豚輸入頭数の推移
図10 豚肉の輸出相手国(2005年)

(3) 肥育豚・豚肉の価格動向

ア.肥育豚価格
 肥育豚取引価格は97年以降、生産の増加などから下落傾向で推移し、99年には100ポンド当たり34.0ドルまで下落した。その後、2000年、2001年と価格は上昇したものの、2002年には生産量の増加などから再び下落した。2003年以降は、特に輸出量が増加したことなどから再び上昇に転じたものの、2005年では前年比4.8%安の50.0ドルとなった。

イ.豚肉価格
(ア)部分肉卸売価格
 2005年の部分肉卸売価格(カットアウトバリュー)は、前年比5.0%安の100ポンド当たり69.8ドルとなった。

(イ)豚肉小売価格
 2005年の豚肉の平均小売価格は、前年比1.3%高の1ポンド当たり282.7セントとなった。

表12 飼育豚、豚肉の価格の推移



(4)養鶏・鶏肉産業

 米国の養鶏産業は、飼料穀物の大生産国という利点を生かし、生産から流通までの一貫したインテグレーションの進展により、極めて効率的な生産が行われている。また、不需要部位のもも肉を中心として、鶏肉生産量の約2割を輸出すると同時に、米国内では、消費者の健康志向からむね肉を中心として消費を大きく伸ばしている。



(1) ブロイラーのふ化羽数の動向

 2005年のブロイラーふ化羽数は、前年同様にブロイラー価格が高水準で推移したことから、前年比1.6%増の94億9千万羽となった。



(2) 鶏肉の需給動向

ア.生産動向
 2005年のブロイラー生産は、ブロイラーふ化羽数が増加したことなどにより、前年を3.8%上回る1,587万トンとなった。生体ベースでの1羽当たり重量は、骨なしむね肉への需要増に伴うブロイラーの大型化を背景に近年増加傾向にあり、前年比1.9%増の2.44キログラムとなっている。

イ.輸出動向
 ブロイラーの輸出量は、85年以降一貫して増加傾向で推移してきたが、近年、その伸び率は鈍化しており、2004年には前年を2.8%下回ったものの、2005年では前年比8.8%増の236万トンとなった。国別では、最大の輸出先であるロシア向けは、同国内生産者の保護を目的とした関税割当制度の実施などにより、2002年以降輸出量が制限されているが、2005年では対前年比11.9%増の76万3千トンとなった。また、ロシア以外の旧ソ連諸国向けは、前年比32.8%減の17万5千トンと大幅に減少した。さらに、ロシアに次ぐ輸出先であるメキシコ向けは前年比21.2%増の23万7千トン、香港向けは前年比31.2%増の15万8千トンとなった。

ウ.消費動向
 1人1年当たりの鶏肉消費量(小売重量ベース)は、健康志向の高まりや加工度の高いアイテムの増加などから、順調な伸び率を示してきており、2005年は前年比2.4%増の39.0キログラムとなった。

表13 ブロイラー需給(可食処理ベース)の推移
 
図11 鶏肉の輸出相手国(2005年)


(3) ブロイラーの価格動向

ア.ブロイラー価格
 2005年のブロイラー価格(生体ポンド当たりの生産者販売価格)は、記録的な高値で推移した前年を4.2%下回るポンド当たり43.3セントとなった。

イ.鶏肉価格
(ア)卸売価格
 2005年のブロイラーの丸どり卸売価格(中抜き、12都市平均)は、前年比4.5%安のポンド当たり70.8セントとなった。なお、国内向けが主体となっているむね肉がポンド当たり134.1セント(前年比26.0%安)であるのに対し、輸出向けが主体のもも肉は52.1セント(同20.0%高)となっており、日本と違いむね肉の方がもも肉より2.5倍以上の高値となっている。

(イ)小売価格
 ブロイラーの丸どり小売価格(中抜き)は、前年比1.3%安の1ポンド当たり105.6セントとなった。

表14 ブロイラー価格の推移



(5)飼料穀物

 米国は、世界最大の飼料穀物の生産・輸出国である。代表的な飼料穀物であるトウモロコシについては、世界の生産量の約4割、輸出量についてはその約6割強を占めていることなどから、その需給動向に与える影響力は極めて大きなものとなっている。


(1) 主要な政策

 飼料穀物については、96年農業法により、政府の定める目標価格と市場価格(またはローンレート)の差を補てんする不足払い制度とこれに関連する減反計画が廃止され、農産物の作付け(野菜、果物を除く)が自由化された。一方、その代替措置として、市場価格とは切り離された形で、過去の作付面積などの実績に基づき、一定の漸減する直接支払いを2002年度までの7年間受給できる農家直接固定支払い制度が導入された。このほかの主なものとしては、生産者が農産物を担保に商品金融公社(CCC)からローンレート(過去の市場価格を基に算出)での融資を受けるマーケティング・ローン(価格支持融資制度)などがある。なお、飼料穀物価格が需給緩和の影響で、96年の秋をピークに下落し、生産者所得が減少したことを受け、農家直接固定支払い制度の単価に上乗せする形で、98年から毎年緊急支援措置が講じられている。こうした中、紆余(うよ)曲折を経て成立した2002年新農業法では、価格支持融資や農家直接固定支払いを存続させるとともに96年農業法で廃止された不足払い制度に類似した直接支払い制度(価格変動対応型支払い:価格の変動に応じ目標価格との差額を補てん)を新設している。



(2) 穀物の生産動向

 2005/06年度(9〜8月)のトウモロコシ(サイレージ用を除く)の生産量は、前年度比5.9%減の111億1,408万ブッシェル(2億8,200万トン)となった。これは、作付面積が、前年比1.1%増の8,178万エーカー(3,271万ヘクタール)となったものの、1エーカー(約0.4ヘクタール)当たりの収穫量は、前年度と比べて7.7%減の148.0ブッシェル(9.4トン/ヘクタール)となったためである。

 また、2006年8月末現在の在庫量は、前年比6.9%減の19億6,716万ブッシェル(5,380万トン)とかなりの程度減少した。

表15 トウモロコシ需給の推移


(3) 穀物の輸出動向

 2005/06年度のトウモロコシの輸出は、韓国、コロンビア向けが大幅に増加した一方、カナダ、シリア向けなどが減少し、全体では前年度比18.1%増の5,500万トンとなった。なお、日本向けの輸出は、前年度比4.2%増の1,615万8千トンで、全体の29.6%を占めている。



(4) 穀物の価格動向

 2005/06年度のトウモロコシの生産者販売価格は、燃料用エタノール原料向けなどの国内需要および輸出量がともに伸びたものの、前年度からの繰越在庫が潤沢であったことなどから、前年度比2.9%安の1ブッシェル当たり2.00ドルとなった。

表16 トウモロコシ価格の推移




米国におけるBSE・牛肉貿易をめぐる動向

米国産牛で初のBSEの確認

 米国農務省(USDA)は2005年6月24日、2004年11月のスクリーニング検査で陽性となり、確定診断の結果陰性とされた牛について再検査を実施した結果、BSE陽性との最終結果を得たことを公表した。

 当該牛は、その後の同省動植物検疫局(USDA/APHIS)と保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)による疫学的調査により、テキサス州で生産されたものと特定され、米国初の土着のBSE症例となった。また、FDAなどによる飼料に関する調査により、当該牛は、米国がBSE対策のため97年に導入した飼料規制前に感染した可能性が高いと結論付けられた。

 なお、この事例により、米国内でのBSEの発生は、2003年12月23日にワシントン州内で確認されたカナダ由来の患畜に次ぐ2例目となり、その後、2006年3月には、アラバマ州で生産された牛が3例目のBSEとして確認された。


カナダ産牛肉・生体牛をめぐる動向

 USDA/APHISは2004年12月29日、カナダをBSEの最小リスク地域と認定し、同国から30カ月齢未満でと畜されることが確実な生体牛や、月齢を問わず牛肉の輸入を認めることを柱とする検疫措置の最終規則を公表した。カナダから米国への牛肉輸出は、2003年5月のカナダでのBSE発生を受けて一時的に停止されていた。

 同規則は当初、2005年3月7日より発効するものとされていたが、ジョハンズ米農務長官は同年2月9日、30カ月齢以上の牛由来の牛肉輸入については、カナダにおける飼料規制に関する調査などが終了していないとして、3月7日からの実施を延期するとの方針を公表した。一方、30カ月齢未満でと畜されることが確実な生体牛の条件付き輸入については、米国牧場主・肉用牛生産者行動法律基金協会(R-Calf)がモンタナ連邦地裁に同規則の差し止めの申請を行い、その後、USDAがカリフォルニア連邦控訴裁に同地裁の仮処分決定を不服として控訴するなど複雑な司法上の争いが繰り広げられた後、同年7月18日より再開された。

 なお、カナダから米国への牛肉および生体牛輸出については、USDA/APHISが2007年1月4日、2005年1月の現行規則を改正して、99年3月以降に生まれた生体牛(反すう家畜への飼料給与規制の開始から18カ月後に相当)の輸入を認めるとともに、30カ月齢以上の牛肉についても規則の適用の先延ばしを解除して輸入を可能とする改正案を公表するなど議論が継続している。


北米産牛肉の対日輸出再開

 わが国との関係では、カナダ産牛肉については2003年5月20日、米国産牛肉については同年12月23日にそれぞれにおいてBSEの発生が確認されたことから、日本への輸出が停止していたが、2005年12月12日の両国政府との牛肉などの輸入条件合意を踏まえ、一定の条件で管理された米・カナダ両国産の牛肉および牛肉製品の日本向け輸出が再開された。

 しかし、輸入再開直後の2006年1月、米国から輸入された子牛肉に輸入禁止部位である脊髄の混入が発見されたことから、米国産牛肉のわが国への輸入は再び停止され、輸出施設の査察を経て輸入が再々開されるまでにはさらに半年以上を要することとなった。

 一方、わが国におけるBSEの発生などから米国への輸出が停止していた日本産牛肉については、USDA/APHISが2005年12月14日、一定の条件の下で日本産牛部分肉の輸入を認める最終規則公表したことにより、同月12日付けで米国への輸出が再開されることとなった。



米国農務省、全米で2007年農業法に関するフォーラムを開催

 米国農務省(USDA)は、現行農業法の失効を2007年9月に控え、農業者や牧場主から今後の農業政策に関する意見を聞くため、2005年の約6カ月間にわたり全米52カ所において次期農業法に関するフォーラムを開催した。

 ジョハンズ米農務長官は2005年10月6日、ワシントンDC内で開催された農産品クラブ(Commodity Club)の会合の場において、USDAがその時点までに全米26カ所で開催した同フォーラムの結果を総括した。同長官は、この講演の中で、同フォーラムを開催する背景について、農業法自体は、立法権を有する米議会が定めるものであるとしながらも、ブッシュ米大統領と同長官は新たな農業政策により影響を受ける者はこれを展開させていく過程において意見を述べるべきであるとの考えを示した。同長官の講演の概要は、以下のとおりである。


農村開発・環境保全・市場拡大については共通の認識が醸成

 農村開発プログラムに対しては、一貫して支持する意見を聞くことが出来たとし、ブッシュ大統領による農村開発がこれらの地域の人々の生活に変化をもたらしたことを強調した。

 また、環境保全プログラムについても多くの支持があったとし、同プログラムは、農業者に財政面での援助を行うと同時に、自然環境の保護によりわれわれや次世代に対し、社会全体としての利益を提供しているとしその継続の重要性を示した。

 さらに、米国産農産物の競争力や海外市場の拡大の重要性について多くの意見が出され、農業者は、公平な貿易を望んでおり、また、農産物販売額の4分の1が貿易によりもたらされていることを理解していた。


農家支持プログラムについては大規模農家への集中を懸念

 農家支持プログラムについては、より手厚い保護を望む意見が聞かれるものと予想していたが、変化を求める意見もあった。全体として、農家への支払いが上昇する農地価格に費やされ、かつ、農業者の3分の1に集中することにより、大規模農業者が大きな利益をもたらしていることに対する、特に、中小規模農家による懸念が示された。また、中西部では支持の上限設定を求める声があったのに対し、西部ではこれに反対する意見が聞かれるなど、地域的な格差も見られた。作物間における支持の差に対する不満も聞かれたが、実際、現行農業法下では、穀物に価格・所得支持プログラムが集中している。農家支持プログラムが生産を助長し、より多くの作物を生産し支持を得るために農地を拡大する要因となっていることを指摘する意見が多かった。農業政策が需要を勘案せずに農地や生産の拡大を助長するのであれば、農産物価格の低落は自明である。

 さらに、若い世代からは、農地価格や金利の高騰から、農場継承や新規就農の困難性を訴える意見が出された。


現行農業法を時代の変化に適応させる必要

 2002年農業法は正しい政策として支持されてきたものの、時代の変化から、われわれは、WTOを米国産品のための市場開放に用いなければならない。WTOが次期農業法を起草するわけではないが、市場アクセス分野で利益を得るためには国内支持分野で指導力を発揮する必要があり、次期農業法においてWTO農業交渉のすう勢を先取りすることが重要である。


 その後、USDAは2006年3月29日、同フォーラムにおいて農業関係者から出された意見や、2005年末までにウェブサイトなどを通じて提出された次期農業法に関する4,000件以上に及ぶ意見を41の課題ごとに集約した意見概要を公表した。また、2006年5〜9月にかけて五回にわたり、これら意見概要の中から特定の課題(リスク管理、環境保全プログラム、農村開発プログラム、再生可能エネルギー、国際貿易など)に対する同省のエコノミストによる分析資料を公表した。



米国における家畜個体識別制度をめぐる動向

家畜個体識別制度実施に向けたスケジュール

 米国農務省(USDA)は2005年5月5日、家畜個体識別制度の今後の方針案を公表した。米国における家畜個体識別制度の実施については、2002年から全国畜産協会(NIAA)などで議論が進められてきたが、2003年末における米国内でのBSEの発生後は、と畜後48時間以内に家畜の過去の移動を追跡し得るシステムの構築を目指し検討が急がれていた。ジョハンズ米農務長官は今回の公表に当たり、「本日公表した文書は、この重要な問題について広範な議論を進めるための提案をするものである。このシステムの今後の取り扱いおよび想像し得るいくつかの重要な課題に関する回答を提案しており、最終的な提案に発展させることが出来るよう、農家からの意見が寄せられることを期待している」と述べ、個体識別制度の実施に向け意欲を示した。

 USDAは、今後の家畜個体識別制度の実施に向けた日程について、以下のように提案した。

2005年4月:今後の全国個体識別制度(NAIS)の戦略案並びにその基準案を公表。同年夏には、公聴会や意見公募により寄せれた意見を考慮し、USDAは規則案の草案作成を開始
2006年7月:USDAは、農場の登録および家畜の個体識別のためのNAISの基準に従った新たな規則案を公表
2007年秋:USDAは、義務的家畜個体識別制度の最終規則を公表
2008年1月:NAISの基準に基づいた最終規則による農家の登録および家畜個体識別を開始
2009年1月:家畜の追跡に必要な移動記録などの部分についても義務化


課題山積の現状

 USDAは、NAISの実施について、任意とするのか義務とするのかについて関係者の意見が異なるが、NIAAの構成員の8割は義務化を支持しているとして、義務化の方針案を示している。このほか、USDAでは以下の4つを主要な課題と位置付けている。

  • (1)費用負担
     本制度について生産者は、制度そのものの維持のための費用と個人的な費用負担の双方に懸念を示している。USDAは、これまでの議論では本制度による公共の利益が大きいとして、システムの大半は公的な資金により賄われるべきであるが、生産者の個人負担も伴うべきであるとの意見が大層を占めているとしている。


  • (2)守秘義務
     USDAは、生産者は自らが提供したデータが、許可無く家畜の追跡以外の目的への政府の使用や商業目的で使用されることなどを懸念しているとしている。


  • (3)既存の個体識別システムとの融合とNAISの他目的への使用
     USDAは、本件について既存システムとの融合や生産者による群管理のためのNAISの使用を認めるべきであるとしている。


  • (4)罰則・義務
     USDAは、食品衛生や食品のトレーサビリティについて、本制度の参加者に本来責任のない問題について義務や顕在的損失が生じ得ることへの懸念が示されているとしている。

2005会計年度では総額1,436万ドルの支援

 このような中、USDAは同年6月21日、州および連邦政府公認の先住民政府に対するNAISにおける農場登録の継続実施に係る約1,436万ドルの財政支援の実施を公表した。

 この財政支援は、州や米国先住民政府が2004年来着手している各地域内の全国農場登録システムおよびNAISの実施・保守管理を支援するために提供されるものである。

 USDAによると、今後2008年初期までにすべての家畜は個体識別番号やロットID番号により個体識別され、2009年1月までにはNAISへ家畜の移動履歴が明確に記録されることになるとされた。


 その後、USDAは、NAISを任意の制度として推進する方針を固め、州政府や関係団体とも連携して畜産農家の施設登録を進めている。