ALIC/駐在員トピックス その他海外の農業・農産物・貿易・安全関連トピックス
平成19年(2007年)12月分
◎中国、気候対策への積極性をアピール 【国際情報審査役 平成19年12月27日発】 ◎ブラジル産牛肉に対する衛生管理基準の厳格化を決定(EU) 【ブリュッセル 平成19年12月21日発】 ◎トウモロコシが不足することを生産者は懸念(ブラジル) 【ブエノスアイレス 平成19年12月19日発】 ◎ 欧州委、生乳クオータを2008年4月より2%拡大する提案(EU) 【ブリュッセル 平成19年12月12日発】 ◎ ブラジル、食肉処理業者がカルテル行為で有罪 【ブエノスアイレス 平成19年12月7日発】 ◎ 中国東莞市、2009年から養豚を全面禁止 【国際情報審査役 平成19年12月6日発】
◎ 中国、気候対策への積極性をアピール 【国際情報審査役 平成19年12月27日発】 2007年の旱魃は最近10年間で最も深刻 中国国家洪水干害防止総指揮部(国家防汛抗旱総指揮部:以下「国家防総」)によると、2007年における 全国の農作物の旱魃被害面積は5億9千9百万畝(約3,993万ヘクタール:1畝(ムー)=15分の1ヘクタ ール)に及び、うち5,239万畝(約349万ヘクタール)は収穫が絶望的と見込まれている。また、旱魃による 食糧(穀物、豆類及びイモ類)損失量は3,736万トン、林業、畜産業及び水産養殖業の直接損失額は92億 6千万元(約1,445億円:1元=15.6円)に上り、飲水に支障を来した大家畜(牛、馬、ロバ、ラバ及び ラクダ)は2千万頭を超えると見積もられている。 国家防総(総指揮:回良玉国務院副総理)の秘書長(≒事務長、事務局長)でもある鄂竟平水利部副部長は、 北京で開催された全国洪水干害総括表彰・任務会議(2007年12月7〜8日)の席上、2007年の夏は全国22の 省級行政区で旱魃が発生し、被害範囲は近年稀に見る広さとなったとした。新華社通信など現地の報道による と、同年の干ばつの状況は、最近10年間で最も深刻なものとされる。 一方、同会議において、国家防総副総指揮でもある陳雷水利部長が述べたところによると、2007年の水害 による農作物の被害面積は、1億8千万畝(約1,200万ヘクタール)と見積もられている。京都議定書の堅持など気候変動対策に関し中国が3提案 これに先立つ2007年11月22日、中国気象局国家気候中心の羅勇副主任は、北京で開催された国家気候委員会 の記者会見において、中国の降水分布が北寄りにシフトする可能性を指摘し、現在、一般にいわれている 「南は水害、北は干害」という図式が、将来的には「北は水害、南は干害」へと変化することもあり得るとの 見解を示した。 中国では、同年10月中〜下旬にかけて開催された中国共産党第16期第17回全国代表大会(5年に一度開催) において、胡錦濤中国共産党総書記(兼国家首席)が、初めて気候変動への対策について触れ、地球環境問題 の解決に積極的な姿勢を取ることを内外にアピールした。同年12月9日には、旱魃の「防止」に重点を置き、 水利施設などインフラ整備や水の再利用、水源確保・節水対策などの強化、土壌の水分保持能力の向上、旱魃 防止及び災害の軽減に関する研究・技術革新の推進、各級地方政府の首長に対する旱魃防止責任制の強化など を内容とする「旱魃防止任務の強化に関する国務院弁公庁の通知」(国弁発〔2007〕68号)が公布されるなど、 最近10年間で最も深刻とされた旱魃の防止と被害軽減に向けた取り組みにも本腰を入れ始めた。 こうした中、同年12月3日〜14日にインドネシアのバリ島で開催された国連気候変動枠組条約第13回締約国 会議・京都議定書第3回締約国会議において、解振華国家発展改革委員会副主任は同12日、中国政府は資源の 節約と環境保護を政策の基本とし、気候変動問題の解決を重視しているとした上で、以下の3項目について 提言した。 1 国連気候変動枠組条約及び京都議定書に定める内容の長期的な堅持と第11回モントリオール締約国会議 (2005年)の決定事項に基づく2012年以降の国際協力についての議論の深化 2 先進締約国(条約の付属書締結国で、ロシア及び旧東欧諸国を含む)の温室効果ガス排出削減の潜在能力 及び排出削減目標に関する分析終了の早期化と工程表の策定、2012年以降の先進締約国の温室ガス排出 削減指標の確定 3 条約履行の強化と先進締約国に対する温室効果ガス排出削減措置のさらなる強化、途上国に対する資金 及び技術移転の推進 2007年の中国の食糧生産は5億トン強、4年連続の増加 急成長する中国経済の一方で、工場排水の垂れ流しやばい煙、家畜排泄物の未処理廃棄など、世界でも有数 の国土面積と世界一の人口を有する中国の環境問題は、国内のみならず地球規模で大きな影響を及ぼす可能性 があるとして、世界各地から懸念の声が上がっている。 こうした中、農業部は、2007年の食糧生産量が前年(4億9千7百万トン)を500トン余り上回る5億トン強 となり、4年連続の増産となる見込みであることを明らかにした。農業部は同年、優良食糧産業の育成や種子・ 作物保護などに対し、中央財政から前年比4割強の増加となる124億1千万元(約1,936億円)を支出している。 他方、生産資材や労働費の上昇など食糧生産コストの増加や国際的な食糧価格の高騰に加え、原油価格高騰や 中国などの鉄鋼需要増加による船舶のひっ迫などから国際海上輸送費も高水準で推移しており、4年連続の増産 にもかかわらず、中国の食糧供給事情は、必ずしも安泰とは言えない状況にあるとの指摘もある。このため、 孫政才農業部長は、中国の食糧安全保障について、2008年においても引き続き警鐘を鳴らす必要があるとして いる。 また、途上国では、経済成長の加速化をもくろみ、原生林を切り開いてバイオ燃料作物を生産する耕地を増加 させる行為が増加しているといわれる。この結果、切り開かれた原生林の土壌が直射日光を受けて急速に乾燥し、 堆積していた泥炭中に蓄積されていたメタンガスや二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に放出され、ある試算 によると、その量はバイオ燃料の使用によって削減される温室効果ガスの10倍以上とされる。 先の国連気候変動枠組条約第13回締約国会議においても、中国など80前後の途上国の大部分は、気候変動枠組 分野における国際協力と技術移転の強化を要求する一方で、一部の参加国が提案した「自発的な貢献」を議題と する必要性を否定したといわれる。さらに、主要途上国といわれる中国、インド及びブラジルは、先進国が提案 した温室効果ガス削減に関する数値目標の設定を拒絶したとされる。 中国は、気候変動問題など環境に対する自国の積極的な取り組みをアピールする一方で、気候変動対策には 途上国に対する支援制度を確立する必要があり、中国産品の恩恵を享受している先進諸国にも省エネルギーと 温室効果ガス削減の責任があると主張するなど、政治・経済的な駆け引きも垣間見えている。 上へ
◎ ブラジル産牛肉に対する衛生管理基準の厳格化を決定(EU) 【ブリュッセル 平成19年12月21日発】 EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は12月20日、ブラジル産牛肉に対する衛生管理基準の 厳格化に関する欧州委員会の提案を承認した。これにより、ブラジルは、2008年1月31日以降、EUの 求める衛生管理基準を満たす農場において飼養された牛由来の牛肉しかEUに輸出できないこととなる。 11月の再調査でブラジルがEUの求める衛生管理基準を満たしていないと判断 EUの食品獣医局(FVO)は、本年3月にブラジルの口蹄疫管理、ワクチン接種の管理プログラム、 個体識別制度など家畜衛生管理に関する現地調査を実施した。この調査結果については、本年 11月8日付けで、口蹄疫の管理状況、ワクチンの管理プログラム、牛個体識別の制度などについて、 全般的に改善が見られると評価する一方、ブラジル政府に対し、個体識別やトレーサビリティ制度の 改善などを要求している。 この動きとは別に、アイルランドおよびイギリスの生産者団体は、本年5月にブラジルにおいて牛の飼養 管理の実態などを現地調査し、個体識別やトレーサビリティ制度が厳密に運用されておらず、EUの消 費者の健康にリスクを与える恐れがあるとの結果を取りまとめていた。この報告を基に、7月には、アイル ランドやイギリスの欧州議会議員が中心となりブラジル産牛肉の輸入停止を欧州議会で主張していた。 このような中、FVOは本年11月6〜19日に、改善を必要とする個体識別やトレーサビリティ制度の現状 を中心に再調査したが、その結果、ブラジル側はEUの求める衛生管理基準に依然対応できていないと 結論づけ、同国産牛肉の完全な輸入停止を避けるためには、EUの家畜衛生水準の維持のため輸入 される牛肉の衛生管理基準の厳格化が必要と判断した。 ブラジル産牛肉の輸入減少の影響を懸念 今回の措置では、EUへ牛肉輸出が認められる牛は、個体識別ができ、またブラジルの牛個体識別 制度(SISBOV)に登録していることが条件となる。EUへ牛肉輸出が認められる登録農場は、飼養 するすべての牛がこの条件を満たす必要があり、さらにEUの要求する衛生管理基準などを満たす農場を ブラジルの主管当局が選定する。FVOはこれらの農場がEUの要求する衛生基準を満たすか確認を 行うとし、必要に応じ選定農場は見直されることとなる。牛の飼養に関しては、と畜前の最低90日間、 EUの認める地域で飼養されること、かつ、と畜前の最低40日間、EUへ牛肉輸出が認められる登録 農場で飼養されることが条件となる。ただし、本措置が実施される2008年1月31日前に輸出される 牛肉については、同年3月15日までは輸入が認められる。 欧州委員会は、本措置によりEUに輸出が認められる農場は、SISBOVに参加している現行の 約1万農場のうちわずか300農場に満たないと予測している模様である。このため、EUへの牛肉輸入の 半分以上を占めるブラジル産牛肉の輸入量の減少が予測され、これによるEU域内の牛肉需給への 影響が懸念される。 上へ
◎ トウモロコシが不足することを生産者は懸念(ブラジル) 【ブエノスアイレス 平成19年12月19日発】 1月の端境期にトウモロコシが不足することを懸念 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が12月に発表した2008年度(7月〜翌年6月)第3回主要穀物 生産状況調査によると、2007年度産トウモロコシの輸出量は1,000万トンを超え、2008年度の予測値に ついても800万トンと好調なトウモロコシ輸出は続く見込みとなっている。○ ブラジルのトウモロコシの需給表 (単位:千トン)
2004年度 | 2005年度 | 2006年度 | 2007年度 | 2008年度 | |
期首在庫量 | 8,554 | 7,802 | 3,135 | 5,568 | 6,638 |
生産量 | 42,129 | 35,007 | 42,515 | 51,370 | 52,320 |
輸入量 | 331 | 597 | 956 | 1,000 | 600 |
国内需要量 | 38,180 | 39,200 | 37,100 | 40,500 | 44,000 |
輸出量 | 5,031 | 1,070 | 3,938 | 10,800 | 8,000 |
期末在庫量 | 7,802 | 3,135 | 5,568 | 6,638 | 7,558 |
資料:CONAB
ブラジルでは、トウモロコシの作付けは10〜12月にかけて行われ、翌2〜6月にかけて収穫が行われる。 このため、1月が端境期となるが、トウモロコシ輸出が好調を維持し続けていることから、中小家畜経営 を中心に、端境期のトウモロコシの供給不安が生じることを心配する声が出ている。ブラジル養鶏連盟 (UBA)のプペリ会長は「端境期までのトウモロコシ需要量と収穫までの在庫量を比べると需要が上回る 恐れがある」と述べ、また、ブラジル養豚協会(ABCS)のヴァレンチーニ会長は「不足が生じる場合、 政府は遺伝子組み換え、非遺伝子組み換えにかかわらずトウモロコシの輸入を認めるべき」と述べている。 2008年産のトウモロコシについても懸念 また、同調査から2008年度の収穫量を見ると、12月に発表した第3回調査では、第2回調査に比べ、 全体の生産量は変化していないが、地域別にみると、南東部や南部の生産量が減少する見込みとなっている。 これらの地域での作付面積の減少は、10月の雨不足が原因とみられる。○ 2008年度の生産量見込み
トウモロコシ(一期作) | ||||||||
第2回調査 | 第3回調査 | |||||||
作付面積 | 単収 | 生産量 | 作付面積 | 単収 | 生産量 | |||
(千ha) | (トン/ha) | (千トン) | (千ha) | (kg/ha) | (千トン) | |||
北部 | 546.3 | 2.08 | 1,135.5 | 546.3 | 0.0% | 2.08 | 1,135.5 | 0.0% |
北西部 | 2,619.9 | 1.29 | 3,366.9 | 2,619.9 | 0.0% | 1.29 | 3,366.9 | 0.0% |
中西部 | 915.5 | 5.34 | 4,890.5 | 928.0 | 1.4% | 5.45 | 5,054.5 | 3.4% |
南東部 | 2,134.2 | 4.52 | 9,652.3 | 2,055.8 | -3.7% | 4.65 | 9,565.8 | -0.9% |
南部 | 3,540.0 | 5.16 | 18,275.5 | 3,520.8 | -0.5% | 5.17 | 18,197.7 | -0.4% |
合計 | 9,755.9 | − | 37,320.7 | 9,670.8 | -0.9% | − | 37,320.4 | 0.0% |
資料:CONAB
注:第3回調査の欄の変化率は第2回調査との比較
さらに、 @中小家畜経営が多く立地する南東部や南部での生産量が減少見込みであること A今後、ラニーニャ現象による干ばつの恐れから、見込み通り収穫できるかという懸念があること などから、端境期を乗り越えた後の2008年度産の供給についても心配する声も出てきている。 上へ
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