ALIC/駐在員トピックス その他海外の農業・農産物・貿易・安全関連トピックス
平成20年(2008年)5月分
◎ 韓国、米国産牛肉の輸入衛生条件に関する補完措置に合意 【調査情報部 調査課 平成20年5月22日発】 ◎ 中国農業部、四川大地震後の人畜共通感染症防御を重視 【調査情報部 調査課 平成20年5月19日発】 ◎ 中国質検総局、四川大地震に伴う香港への豚肉安定供給の確保を措置 【調査情報部 調査課 平成20年5月15日発】
◎ 韓国、米国産牛肉の輸入衛生条件に関する補完措置に合意 【調査情報部 調査課 平成20年5月22日発】 韓国外交通商部によると、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)通商交渉本部長が2008年5月20日に記者会 見を行い、米国産牛肉の輸入衛生条件に関する補完措置について米韓両国が合意に達し、文書を交換し たと発表した。 米国産牛肉の韓国への輸入に関しては、去る4月18日、段階的な制限措置の緩和を図ることで合意に 達していた。しかし、その後、韓国内では異論の声も上がり、BSEについての誤った知識やデマも飛 び交い、農林水産食品部が「BSE怪談10問10答」を発表して正確な知識普及を図るなど混乱が見られ、 これに国内の政治事情なども加わって事態が複雑化していた。 金通商交渉本部長とシャワブ米通商代表部(USTR)代表が出席して行われた今回の交渉では、先 に合意した協定文書は修正せず、今回の合意内容については、別途、両国通商代表者の署名を経た書簡 (レター)形式とすることとされた。交渉は15日から始まり、終盤には合意内容をめぐって激しい攻防 があったとされるが、5月19日午前に合意に達し、米国との時差などを考慮して、韓国では5月20日午 後2時の発表となった。具体的な合意内容は、以下の2点である。 1 GATT(関税および貿易に関する一般協定)第20条およびWTO/SPS協定(衛生・植物検 疫措置の適用に関する協定)などに基づく国民の健康保護のために必要な措置をとる権利について、 両国が互いに確認した。 2 米国は、内需向け牛肉と輸出用牛肉について同じ規定を適用し、両国が特定危険部位(SRM) と認める範囲を、米国食品医薬局(FDA)の基準に合わせる(=韓国側から見れば、これまでの 韓国向け米国産牛肉についてのSRMの両国合意の範囲を拡大)こととした。 発表後、記者の間からは、米国でBSEが発生した場合の米国産牛肉の輸入停止措置について明文化 されていないとの指摘や、米国におけるBSE発生が韓国民の健康に対する深刻な脅威となることをど のように証明するのかなどの質問が相次いだ。これに対し金通商交渉本部長は、@韓国政府は、米国で 新たにBSEが発生し、韓国民の健康が危険にさらされる恐れがあると判断すれば、即座に輸入中止措 置ができると認識していること、A輸入衛生条件上、米国で新たにBSEが発生した場合には、米国側 が即刻、徹底的な調査を行う義務があり、韓国側も即座に調査団を送って問題解決に当たるとされてい ること−などを挙げ、貿易紛争を解消することは可能であるとの判断を示したほか、仮に紛争となった 場合でも、これまでに米国との貿易紛争は何度もあったが、これを解決してきた実績があるとした。 大手韓国紙である朝鮮日報によると、今回の追加交渉において、米国で新たにBSEが発生した場合、 韓国は即座に米国産牛肉の輸入を停止するとの内容を明文化するよう韓国側が求めたのに対して米国側 が難色を示し、国際法に基づく国民の健康保護のための一般的な権利を両国で確認するという文言に落 ち着いたとされる。 ※ 通商交渉本部 企画財政部、農林水産食品部、知識経済部、情報通信部など韓国政府の通商関係部署の意見 を総括調整し、韓国を代表して対外的な通商交渉を行う外交通商部傘下の組織。その長である 通商交渉本部長は、Minister for Trade と英語表記されるように、長官級(=閣僚級)ポスト と位置付けられている。 上へ
◎ 中国農業部、四川大地震後の人畜共通感染症防御を重視 【調査情報部 調査課 平成20年5月19日発】 中国農業部新聞弁公室の5月18日の発表によると、孫政才農業部長主催の会議は、同12日に発生した 四川省ガワ・チベット族羌族(きょうぞく)自治州汶川県を震源とする大地震に伴う農業災害の状況を 分析した結果、人畜共通感染症の防御が現在最も差し迫った問題であり、その対策任務こそが最も重要 かつ確実な実行が求められる課題であると強調している。 発表によると、これまでに四川省、重慶市、陝西省、甘粛省および雲南省の5省市における死亡家畜・ 家きんは1千3百万頭(羽)、市・県・郷レベルの獣医機構の舎屋および実験室の損害面積は54万8千 平方メートルに及んだ。四川省の重災害地区6市・自治州では1,234万頭(羽)が死亡し、うち豚の死亡 頭数は81万頭に上った。今後、時間の経過や実態把握の進展などにより、被害の数値は増加するものと 思われる。また、現地では、飼育されていたイヌなどが野犬化して人を襲う被害なども相次いでいると され、狂犬病など致命的な人畜共通感染症の拡大も懸念されている。 農業部は、震災発生からこれまで実施してきた措置などについては、以下のとおりであるとしている。 1 震災地区における重大な人畜共通感染症防御任務の適時配置 5月12日の地震発生後、孫農業部長はその日のうちに緊急会議を招集し、防救災任務を手配する とともに、被災地における重大な人畜共通感染症防御の強化を特に強調し、死亡家畜・家きんの無 害化処理、周辺環境の消毒、感染サーベイランス、震災後の免疫および検疫監理の強化と震災後の 重大な人畜共通感染症および動物感染症の爆発的流行の防止という「5強化1確保」の確実な実施 を要請した。また、胡錦濤国家首席は、獣医師を含む専門家組織を被災地の第一線に派遣し、感染 源となり得るものの無害化処理および消毒任務などの指導を行わせている。さらに、人と時間を定 めて緊急連絡体制を構築し、被災地における困難や諸問題の適時解決に当たっている。 2 消毒用薬品、医療器械など防疫資材の緊急調達 40以上の消毒薬・医療機械製造業者に対し、休日出勤・超過勤務などにより被災地における防疫 任務の需要を満たすべく手配し、農業部はこれまでに、被災地向けに消毒薬383トン、殺虫・殺鼠 剤50トン、モーター消毒器13,420台、手動式消毒器23,750台およびテント100帳を調達した。 3 被災地における死亡家畜などの無害化処理および消毒 四川省獣医部門は、被災地区無害化処理および消毒任務実施方策を制定し、四川農業大学、西南 民族大学、四川省動物疾病予防制御中心などの機関による107人体制の防疫隊を構成し、都江堰市 (四川省都の成都市内の県級市)、綿竹市(同省徳陽市内の県級市)および北川羌族自治県(同省 綿陽市内の県)などの重災害地区にそれぞれ分かれ、消毒及び無害化処理任務に当たっている。 4 感染サーベイランスおよび感染症流行調査の強化 重災害地区および被災地区周辺の家畜・家きんサーベイランス頭羽数を拡大し、潜在的な感染症 発生の芽を直ちにつみ取るよう努力している。また、感染家畜・家きんを適宜処理し、畜産物の安 全を確保し、動物感染症発生の状況を取りまとめて分析し、リスク評価を行い、警報などの情報発 信を実施している。 5 防災・防疫知識の宣伝普及 専門家からなる組織を緊急編制し、「震災後の防物感染症防御宣伝ポスター」「連鎖球菌症防御 知識手帳」および「高病原性豚生殖器・呼吸器症候群(PRRS)防御ポスター」などの宣伝普及 資料を被災地区に配布した。中国動物感染症予防制御中心などの関係機関は互いに連携し、人畜共 通感染症防御知識の普及に努めている。また、中央人民広播電台(中国の国営放送局。China National Radio=CNR)は、専門家による震災後の人畜共通感染症の防御技術講座などを放送し ている。 6 関係部門および地域協調の強化 衛生部は協調機構を構築し、防疫情報や消毒用薬品・医療器械など防疫資材調達の強化を図って いる。また、湖北省、河南省など四川省周辺地区の獣医部門は、扶助機構を構築して地域間協調を 図っている。 これまでの措置に加え、この会議では、現在の人畜共通感染症防御が非常に厳しい情勢にあることか ら、被災地における人畜共通感染症防御の強化のため、農業部は今後、以下の5項目を主要任務として 推進していくこととされた。 1 消毒および無害化処理任務の全力推進 湖南省、湖北省、江蘇省、河南省、広東省および山東省の6省は専門の技術員を選抜派遣して総 勢120人からなる6予備隊を組織するとともに、農業部の直属組織からなる130人の予備隊を創設し、 被災地における無害化処理および周辺環境の消毒を間断なく実施する。 2 消毒用薬品および応急防疫物資の継続的な調達 農業部は再度、1千トンの消毒薬と100トンの殺虫・殺鼠剤を調達し、続々と被災地に送付する。 3 突発的な感染症に対する着実な応急準備 専門家を組織し、被災地で発生する可能性のある感染症に対するリスク分析を行い、応急対応策 を策定し、関係する技術、物資および人員の準備を怠りなく実施する。 4 動物防疫の適切な実施 免疫措置やモニタリング、無害化処理、消毒などの防疫措置を厳格に実施し、免疫密度・質を確 保して家畜・家きんの抵抗力を向上させる。被災地における生態環境の変化により、病原微生物が 大量に繁殖し、家畜・家きんなどの健康が脅かされることがあるため、モニタリングを適切に実施 し、防疫管理の強化や畜舎などの消毒の確実な実施、野鳥などとの接触を避ける設備の増設など感 染の伝播を制御するとともに、検疫監理を強化し、病死した家畜・家きんの市場流入を厳重に防止 し、動物産品の衛生・安全を確保する。 5 被災地におけるネズミ対策の着実な実施 農業部は専門家による「四川地震被災地区鼠害防御方策」を制定し、四川省応急管理弁公室ほか 関係部門と協議の上、被災地および周辺地区の鼠害のモニタリングと対策措置を確実に実施すると ともに、鼠害対策の順調な遂行確保のため、特定応急予防治療経費として542万元(約8,076万円: 1元=14.9円)を措置する。 なお、5月19日の発表によると、農業部は中国農産物市場協会に呼び掛け、協会各会員に対し、 生産・販売の連携強化による被災地区への農産物供給の保障を奨励した。目下、陝西省西安市の朱雀農 産物市場が5台のトラックを用いて、インスタントラーメンやハム、ソーセージなど60トンの食品を、 四川省綿陽市に向け輸送中であるとしている。 また、同じ発表によると、5月16日に中国農産物卸売市場協会が大型慈善公演活動を実施し、わずか 2時間で69万元(約1,028万円)もの義援金を集めたとされる。このほか、同卸売市場協会は、17省市の 22農業部定点市場から569万9千元(約8,492万円)の義援金を集めて寄付し、被災地への支援を行った。 うち寄付額が大きかったのは、上海曹安菜籃子股份有限公司(注:菜籃子は買い物かごのことで、生活 必需品を指す。また、股份有限公司は株式会社のこと)の200万元(約2,980万円)、広東深圳農産品股 份有限公司の150万元(約2,235万円)などであったとされる。 上へ
◎ 中国質検総局、四川大地震に伴う香港への豚肉安定供給の確保を措置 【調査情報部 調査課 平成20年5月15日発】 中国国家質量監督検験検疫総局(質検総局)は5月14日、同12日に発生した四川省ガワ・チベット族 羌族(きょうぞく)自治州汶川県を震源とする大地震が、香港特別行政区への豚肉供給に及ぼす影響を 分析するとともに、相応の措置をとったことを明らかにした。 質検総局の発表によると、2008年1〜4月に四川省から輸出された豚肉は8,200トン余で、その大部分 が香港向けとなっている。中国最大の養豚地区でもある四川省を中心とする今回の大地震発生により、 一部の豚肉生産加工場では、施設の損害や職員の避難などによりラインが停止しているところもある上、 道路・鉄道など輸送路の寸断などもあって、豚のと畜場への運搬や豚肉の香港への輸送などに困難を来 しているとされる。また、養豚場の被災などもあり、今後の養豚生産への影響も懸念されている。被災 地である四川省資陽市の環宇実業有限公司(北京オリンピック香港会場への豚肉供給商)も、香港向け 豚肉輸出を短期間内に再開することは難しいとみられている。 こうした状況を分析し、質検総局は香港豚肉市場の安定確保に向け、直ちに商務部、香港衛生福利局 および食物環境衛生署に関係情報を通報するとともに、商務部と協議の上、河北省、広東省、河南省、 安徽省、山東省などから香港に向けられる1カ月当たりの豚肉供給量を400〜500トン程度増加させる措 置をとり、香港の市場および社会の安定を確保することとしている。 上へ
過去の記事はこちら
トップページへ戻る