ALIC/駐在員トピックス   その他海外の農業・農産物・貿易・安全関連トピックス

海外の畜産物・飼料関連トピックス

平成20年(2008年)6月分


◎ トウモロコシ、価格高から飼料向け需要、貿易量は減少との見込み
− IGC(6月報告) −
 【調査情報部 調査課 平成20年6月30日発】

◎ 韓国政府が米国産牛肉の輸入衛生条件を告示、即時に発効
 【調査情報部 調査課 平成20年6月26日発】

◎ 韓国、牛肉の輸入検疫・原産地表示補完政策などを発表
 【調査情報部 調査課 平成20年6月25日発】

◎ 韓国大統領、米国産牛肉輸入問題で米大統領に協力要請
 【調査情報部 調査課 平成20年6月9日発】


◎ トウモロコシ、価格高から飼料向け需要、貿易量は減少との見込み − IGC(6月報告) −  【調査情報部 調査課 平成20年6月30日発】  国際穀物理事会(IGC)が6月26日に公表した穀物市場報告(Grain Market Report)による と、世界全体における2008/09年度のトウモロコシの生産量は、記録的であった前年度を3.8%下回 る7億5,600万トンと見込まれており、米国で発生した中西部での洪水被害については、その状況 が十分に見極められていないとしているものの、生産量は1,700万トン(直近3カ年(2005/06年度 〜2007/08年度)平均生産量の約6%)減少するとしている。  需要量については、前年度を0.5%上回る7億8,200万トンと見込まれており、そのうち工業向け 需要量は、エタノール生産に加えスターチ生産の増加が見込まれ、需要量全体の25%を占める一方、 飼料向け需要量は、トウモロコシの価格高から代替品需要が高まることで減少するとしており、特 に米国での減少が指摘されている。  期末在庫については、前年度を20.5%下回る9,700万トン(在庫率12.4%)と見込まれており、 25年ぶりの低水準となる。特に米国の期末在庫はわずか1,800万トン(在庫率は2007/08年度消費量 で除して6.7%)としている。  貿易量については、前年度を10.0%下回る9,000万トンと見込まれている。これは、飼料向け需 要量の減少要因と同様、トウモロコシの価格高から割安感のある飼料穀物へと代替品需要が増加す るためとしている。国別に見ると、メキシコの輸入量は増加する一方、欧州、韓国、中国、台湾、 サウジアラビアは減少と予測しており、米国の輸出量は4年ぶりの減少が見込まれている。                                              上へ 
◎ 韓国政府が米国産牛肉の輸入衛生条件を告示、即時に発効  【調査情報部 調査課 平成20年6月26日発】  韓国政府は2008年6月26日午前9時、米国産牛肉の輸入衛生条件に関する告示を官報掲載した。 告示は掲載と同時に発効し、2007年10月に当時の輸入衛生条件で韓国向け輸出が禁止されていた脊 椎が発見されて依頼、8カ月ぶりに米国産牛肉の輸入検疫が再開されることとなった。    韓国農林水産食品部の発表によると、6月21日に発表された米国牛肉の輸入衛生条件をめぐる米 韓両国の追加協議の合意内容を受け、同月25日、同部が行政安全部に官報掲載を依頼した。輸入衛 生条件の付則には、@米国産牛肉に対する韓国の消費者の信頼が回復するまでは、米国農務省 (USDA)が運営する30カ月齢未満の牛肉であることを保証する「韓国輸出向け30カ月齢未満検 証品質体系評価プログラム」(以下「QSA」)に参加する加工場で生産された牛肉および牛肉加 工品に限り、韓国への輸入を許可すること、A30カ月齢未満の牛の脳、眼、脊髄および頭蓋骨は特 定危険部位(SRM)ではないものの、検疫の過程において発見された場合にはシップバックする こと、B輸出加工場の点検および輸入衛生条件に違反した加工場に対する韓国政府の検疫権限を明 確にすること−などが追加されている。    韓国政府および与党ハンナラ党は当初、告示は急がないとの立場をとっていた。現地報道などに よると、一時は社会現象ともなったキャンドル集会の規模が大幅に縮小し、本来の内容とは異なっ たものに変わってきており、輸入牛肉による政局混乱を早期に終息させたい政府の意向もあって、 米国産牛肉の輸入問題に関する追加交渉が国民から一定の支持を得てきているこの時期に告示する ことが適当と判断されたようだ。    しかし、告示前日の6月25日には、キャンドル集会の参加者が大統領府へ向かおうとし、これを 制止しようとした機動隊と激しく衝突するなどの騒ぎも起こっている。また、牛海綿状脳症(BSE) に関するデマについても、いまだに口伝えやネットでもっともらしく語られ、広がっているといわ れる。さらに一方では、米国産牛肉の輸入が大きな社会問題にまで発展することとなった大きな要 因の一つともいわれている、BSEと米国産牛肉の安全性に関する報道番組などをめぐり、誤りや 誇張、偏向性や歪曲性などを指摘する声も上がっているなど、韓国内では今もって混乱が見られる 状況が続いている。                                              上へ 
◎ 韓国、牛肉の輸入検疫・原産地表示補完政策などを発表  【調査情報部 調査課 平成20年6月25日発】  鄭雲天・韓国農林水産食品部長官は2008年6月24日午後、懸案となっていた米国産牛肉の輸入検 疫指針および飲食店における牛肉の原産地表示管理に関する補完対策を発表した。  米国産牛肉の韓国への輸入については、4月18日に段階的な制限緩和を図ることで米韓両国が 合意したものの、国内で異論の声が上がり、5月20日に輸入衛生条件の補完措置について合意に達 していた。しかし、韓国内の政治事情や国内消費者の懸念などに加え、現政権と一部の国内マスコ ミとの確執などの要素が複雑に絡み合って大規模な反政府デモが組織され、李明博政権が窮地に追 い込まれる事態にまで発展した。  こうした事態を受け、6月9日には金炳局・大統領府外交安全保障担当首席秘書官が渡米したほ か、同月13〜19日には金鉉宗通商交渉本部長(長官(閣僚)級)が米国通商代表部(USTR)と 追加交渉を実施、国内の関係部署との調整を経て、21日に内容が公式発表された。その主な内容は 次のとおりである。 @ 30カ月齢以上の米国産牛肉については、韓国の消費者の信頼が得られ、韓国の輸入業者から 要請があるまでは韓国向け輸出はせず、米国政府が保証する「韓国輸出向け30カ月齢未満証 明プログラム」(以下「QSA」)に基づき、30カ月齢以上の米国産牛肉の韓国内への輸入 を実質的に遮断(QSA証明のないものはシップバック)する。  A 輸出加工場の点検および違反加工場などに対する韓国政府の検疫権限を保証するほか、サン プルの現地調査権限の明記など現地調査時の検疫権限を強化する。  B 国際獣疫事務局(OIE)基準にかかわらず、脳、眼、脊髄、頭蓋骨の韓国向け輸出は認め ない。  今回の農林水産食品部の輸入検疫指針は、この合意内容を反映したもので、 @輸出検疫証明書にQSA証明がない商品ロットは全箱返送、Aティーボーンステーキ用など脊椎 を含む牛肉については、輸出検疫証明書にQSA証明があっても、30カ月齢未満の表示がない箱に ついてはシップバック、B開封検査の実施基準、C違反事例があった場合、該当加工場の製品につ いて5回連続の強化検査を実施、D現地調査で重大な違反と判断される事項があった場合、4週間 以内に改善措置に対する両国間合意が成立しないときは、該当加工場の製品について5回連続の強 化検査を実施、E残留物質検査の精密検査対象基準、F残留物質検査で不合格となった場合、該当 貨物の全量返送と残留物質の種類に応じた措置(5回連続の強化検査または該当加工場の輸出登録 中断ほか)− などが規定されている。  また、米国産牛肉の輸入再開に合わせ、農林水産食品部は食肉の原産地表示についても強化を図 ることとしており、5月22日に国会で成立した改正農産物品質管理法(2008年6月13日公布)に 基づき、6月17日までに立法予告された施行令および施行規則を閣議決定後に告示(6月24日付け 現地報道によると、「週内に」官報掲載の予定)することとしている。施行令などは通常、掲載後 2〜3日で発効する。  原産地表示強化の主な内容は、@これまで100平方メートル以上の中・大型飲食店、委託給食所だ けに限定されていた牛肉の原産地表示義務について、小規模飲食店や学校・病院・企業構内の食堂 など集団給食所も対象とすること、A牛肉を原料とした食品すべてについて、牛肉の原産地表示を 義務化すること、B検察、警察および関係省庁、地方自治体などにおける原産地表示の監視体制を 強化し、特に農林水産食品部傘下の農産物品質管理院の取締担当官については、従来の6百人から 1千人へと拡大すること、C国立獣医科学検疫院の検疫情報と関税庁の通関情報をリアルタイムで 共有するシステムを構築し、農産物品質管理院の監視効率を向上させること−などとされる。現地 報道によると、牛肉については7月初旬、豚肉および鶏肉については12月下旬から施行の予定とさ れる。  なお、今回の米国産牛肉の韓国向け輸出をめぐる追加交渉について、米国内では牛肉生産地を地 盤とする議員を中心に、党派を問わず不満の声が相次いでいるといわれる。今秋の米国大統領選に おける民主党候補指名が確定しているオバマ上院議員は、自動車に関する貿易障壁などを理由に米 韓自由貿易協定(FTA)に反対の立場を表明し、指名前の5月には、米韓FTAに対する事実上 の再交渉を要求する書簡をブッシュ大統領に提出したほか、6月16日には、米韓FTAを批判する 演説を行うなどしており、今後の動きによっては、米韓FTAの批准そのものが大きく遅れる可能 性も指摘されている。                                              上へ 
◎ 韓国大統領、米国産牛肉輸入問題で米大統領に協力要請  【調査情報部 調査課 平成20年6月9日発】  韓国大統領府などによると、李明博韓国大統領は2008年6月7日夜、ブッシュ米大統領と電話で 会談し、混迷する米国産牛肉の輸入問題の解決に向け、米国側に協力を要請した。金恩慧・大統領 府副報道官は、会談は7日午後8時10分(現地時間)から約20分間行われ、韓国の消費者の不安を 払拭するため、30カ月齢以上の牛肉が韓国向けに輸出されないよう求めた李大統領に対し、 ブッシュ大統領はそのための具体的な措置を準備すると述べたとしている。  米国産牛肉の韓国への輸入問題に関しては、4月18日に段階的な制限措置緩和を図ることで韓米 両国が合意に達したものの、韓国内では異論の声も上がり、5月20日には、米国産牛肉の輸入衛生 条件に関する補完措置に合意し、両国通商代表者の署名入りレターが交換された。しかし、その後 も国内の政治事情や畜産団体の思惑などに、国内消費者の米国産牛肉への安全性に対する懸念など も加わって事態が複雑化し、大規模なデモが組織されて警官隊と衝突するなど、大きな社会問題と なっている。  韓国メディアの一つである聯合ニュースによると、韓国政府の関係者は6月5日、@米国輸入業 者による月齢表示、A韓国輸入業者による30カ月齢以上の牛肉は輸入しないとする業界決議および B同様の米国業界の輸出制限決議という、民間主導による3つのプロセスで米国産牛肉の輸入問題 を解決していくことを明らかにしたとされる。しかし、米韓両国の輸出入業界による「自主規制」 の実効性を疑問視する向きもあり、李大統領によるブッシュ大統領への直談判の背景には、こうし た懸念を払拭するための狙いがあるともいわれている。  また、聯合ニュースは、韓国政府の高官が6月8日、米韓両国の輸出入業界が「自主規制」に 合意した場合、韓国内への流通を阻止できることから事実上の再交渉と同じ効果を期待できる方策 として、30カ月齢以上または月齢表示のない米国産牛肉の返送・廃棄も検討しているほか、6月9 日に金炳局・大統領府外交安全保障担当首席秘書官が訪米し、30カ月齢以上の米国産牛肉の韓国向 け輸出防止に関する具体的な措置を協議する予定であると伝えている。    米国産牛肉の輸入問題などで、このところ支持率の急落に悩む李大統領にとっては、ブッシュ 大統領の協力を取り付けることで事態を打開したいところであるが、韓国の市民団体や野党などは 米国との牛肉再交渉を要求しており、事態が沈静化する見通しは立っておらず、6月6日には、 柳佑益大統領室長および首席秘書官全員が混乱の責任を取り、辞表を提出した。  ただし、相当期間を要して合意にこぎ着けた米国産牛肉の貿易問題については、米国側が簡単に 合意内容を変更することは難しいとの見方も根強く、今秋から始まる米大統領選挙の結果次第によ っては、米韓自由貿易協定(FTA)そのものの行方も不透明な情勢で、共和党の指名獲得が確定 的とされるマケイン上院議員は米韓FTA支持、民主党の指名獲得が確定的とされるオバマ上院議 員は、自動車に関する貿易障壁などを挙げて反対の立場を明らかにしている。  また、韓国内の研究者からは、牛肉問題に関する再交渉は理論的には可能としながらも、両国が 合意・署名した内容について再交渉を行うとなれば、米国に譲歩を求める以上、韓国側も米韓FT A交渉で合意した自動車などの貿易について修正するなど相応の譲歩をする必要が生じることに加 え、米国産牛肉の輸入に関する合意内容の破棄を韓国側が要求することになるため、自動車や携帯 電話など韓国の主要輸出品目に対する報復関税の可能性などにも言及し、牛肉再交渉が、結果的に はむしろ韓国側に大きな不利益をもたらすことになると指摘する声も上がっているとされる。                                              上へ 
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