ALIC/駐在員トピックス その他海外の農業・農産物・貿易・安全関連トピックス
平成20年(2008年)7月分
◎ 中国牛業発展大会、関係企業が肉牛業界の発展推進を宣言 【調査情報部 調査課 平成20年7月30日発】 ◎ FAO、2008年の穀物生産量は前年比2.8%増の見通し − 小麦8.3%増、粗粒穀物0.3%増、コメ1.4%増 − 【調査情報部 調査課 平成20年7月25日発】 ◎ 中国、畜産物など2008年上半期の生鮮農産物は十分な供給 【調査情報部 調査課 平成20年7月23日発】 ◎ 中国・四川大地震、農業分野の復旧に3年から5年の見通し − 農業被災金額は60億ドル、うち消失した家畜は20億ドルに相当 − 【調査情報部 調査課 平成20年7月2日発】
◎ 中国牛業発展大会、関係企業が肉牛業界の発展推進を宣言 【調査情報部 調査課 平成20年7月30日発】 中国畜牧業協会が主催する第3回中国牛業発展大会が、黒龍江省牡丹江市内の県級市である穆稜市にお いて、2008年7月26〜28日の3日間にわたり開催された。大会には同協会長でもある張宝文農業部副部長、 王智才農業部畜牧業司長、谷継承全国畜牧総站長(中国畜牧業協会副会長、中国飼料工業協会秘書長)、 申立国・黒龍江省人民代表大会常務委員会副主任、祖偉等黒龍江省畜牧獣医局長らそうそうたる当局幹部 が出席したほか、全国各地の牛産業および関連産業の行政主管部門の職員、専門家、研究者、企業家、業 界団体の責任者に加え、オーストラリア、ドイツ、カナダなどの代表ら総勢500余人が参加した。 大会では、牛の供給基盤の建設、高級牛肉生産およびブランド化、品種課題、牧草栽培および牛飼養の 調和の取れた発展などをテーマとし、主題報告とそれに対するフォーラムディスカッションによる討議を 行い、出席者の広範な交流が図られた。また、市場行為の規範化や公平な競争環境の整備、社会責任の実 践、調和の取れた業界発展などを図り、近代的な肉牛業界の持続可能な発展推進のため、大会に参加した 肉牛関係企業が、共同で「肉牛業界発展のための穆稜宣言」(肉牛行業発展穆稜宣言:2008年7月26日付 け)を発表した。同宣言は、中国における肉牛業界は、現在、伝統的な数量指向型から近代的な高効率型 へと転換する重要な時期にあり、以下の6項目実践の必要性について強調している。 1 使命意識の増強 科学的発展観を堅持し、先進技術・設備を導入し、技術を有する人材育成を重視し、企業革新を推進 し、生産を規範化し、知名度のあるブランド確立を競い合い、ブランドを含む企業水準を高め、世界で 通用する肉牛企業を打ち立てる。 2 社会責任の樹立 肉牛企業は農民と市場をつなげる存在であり、農村と都市部の橋渡しをし、農村の経済発展と市場供 給の増加は逃れることのできない責務である。社会に対する責任を自発的に引き受け、人的・物的資源 の育成と保護に努め、資源および市場の生産規模を確定し、原料、加工、販売相互が圧迫し合うことを 避け、短期的な行為を追及せず、全面的に協調し合う発展を堅持し、企業の持続可能な発展能力を増強 する。 3 産業モデルの規範化 区域内の牛生産基盤の建設を強化し、飼養生産方式の改善を図る。飼養農家と長期的な安定買付契約 を締結してこれを実践し、飼養農家の利益を保護し、買値をつり上げて牛の供給基盤を取り合うことに 反対し、企業の安全な生産能力の向上に絶えず努める。 4 調和の取れた発展の実現 企業間の積極的な発展協力、情報交換、市場秩序の共同確立、絶え間のなく発生する違法と畜・注 水や混ぜもの・商標の盗用・買い占め・コスト割れの投げ売りなどの行為に対し、質的に優良で効率 が高く、安全で協力的な肉牛産業チェーンを構築し、中国に調和の取れた健康的な肉牛市場を打ち立 てる。 5 誠実で信用ある経営展開 製品情報について正確な発表と宣伝を行って消費者を正確に導き、消費者の知る権利および選択権 を擁護し、調和の取れた消費環境を積極的に構築し、消費者の利益を保護するとともに、製品の知名 度を向上させる。 6 業界自主規則の遵守 企業の管理制度を完全なものとし、自律機能を構築し、法律法規および政策規範などを遵守する。 また、政府の関係部門や業界団体の企業管理を自主的に受け、メディアや消費者の視察を受け入れて 企業の信用度を向上させ、企業の健康的でスピーディな発展を確保する。 上へ
◎ FAO、2008年の穀物生産量は前年比2.8%増の見通し − 小麦8.3%増、粗粒穀物0.3%増、コメ1.4%増 − 【調査情報部 調査課 平成20年7月25日発】 生産量は拡大、特に小麦は8.3%増の見通し 国連食糧農業機関(FAO)が7月18日に公表した穀物見通しと食料事情に関する報告 (Crop Prospects and Food Situation)によると、世界全体における2008年の穀物(小麦、粗粒穀物、 コメ)生産量は、前年比2.8%増の記録的な21億8,000万トンが見込まれている。特に、小麦の作付面 積が著しく拡大したことが、この増加の要因として挙げられており、2008年の小麦の生産量について は、同8.3%増の6億5,830万トンが見込まれている。 粗粒穀物の生産量については、世界で最大の生産国であり、かつ、輸出国である米国での洪水被害 で、トウモロコシの生産量が当初の見込み数量を下回るという減少要因があるものの、世界全体では、 昨年並みの豊作とされており、2008年の粗粒穀物の生産量については、同0.3%増の10億7,760万トン が見込まれている。 なお、コメ(精米)の生産量については、暫定的としながらも、良好であった前年を1.4%上回る 4億4,430万トンが見込まれている。 価格の高止まりは消費量の伸びに影を落としているが、依然、需給はひっ迫 世界全体における穀物消費量は、2007年が前年を3.0%上回ったものの、2008年の消費量は、穀物 価格の高騰が飼料用の消費の伸びに影を落としていることから減少しているため、伸び率は前年を 1.1ポイント下回る同1.9%増の21億6,720万トンが見込まれている。 2008年度の穀物貿易量(7月〜翌年6月)は、減少が見込まれている。2007年度の貿易量は、前年 度を4.2%上回る記録的な2億6,670万トンとなったが、2008年度の貿易量は、EUの飼料穀物生産が 回復していることでトウモロコシの輸入量の減少が見込まれることから、前年度比4.4%減の 2億5,500万トンが見込まれている。 2008年の期末在庫は、2008年の穀物生産量の増加が、3年ぶりに消費量を上回る見通しになること から、前年比1.1%増の4億2,540万トンとされ、在庫率は、前年の19.4%から19.7%への改善が見込 まれている。 しかし、依然として、需要の拡大基調は変わらず、繰越在庫を含めた供給量は、かろうじて需要量 を上回る状況から、引き続き期末在庫は、最近30年来では低い水準にとどまると予測されている。 穀物価格は、需給ひっ迫を受け依然として高止まり FAOによると、穀物価格は、依然として高止まりが見込まれており、トウモロコシの需給ひっ迫 が、主要な穀物価格の高止まりを下支えしている要因の一つであると指摘している。 トウモロコシの平均価格(7月2週目までの米国ガルフ港積み出しのNo.2 yellow corn)は、ドル 安や原油価格の上昇も背景としてあるが、前年同期の2倍となる記録的な水準であり、また、小麦の 平均価格(7月2週目までの米国ガルフ港積み出しのNo.2 Hard Red Winter, FOB)は、生産量の拡 大見通しから徐々に緩んできているものの、依然、前年同期の4倍程度となる水準である。 高止まりする小麦価格については、飼料用穀物需要の代替品との関連において、高騰するトウモロ コシの価格に下支えされていると指摘している。 上へ
◎ 中国、畜産物など2008年上半期の生鮮農産物は十分な供給 【調査情報部 調査課 平成20年7月23日発】 中国農業部はこのほど、2008年上半期の食肉生産量が前年同期比3.2%増の3,515万トン、家きん卵 生産量が同6.4%増の1,340万トン、生乳生産量(牛のほか、綿羊やヤギなどの生乳を含むと思われる) が同11.5%増の1,915万トンとなるなど、その供給量は十分なものであったと発表した。7月18〜21 日に開催された全国農業庁・局長座談会で明らかにされた。 農業部は、2008年上半期は飼料価格が引き続き上昇したほか、南方地区の凍雪害や四川大地震など マイナス要因もあったものの、全体的としては良好な発展を遂げることができたと評価している。具 体的には、養豚生産が急速な回復を見せ、乳牛や家きん飼養の費用対効果と収益が改善したほか、生 産物の供給も安定的かつ十分であり、飼料工業生産も増加したとしている。 20重点省の大規模農場1,800カ所および小規模農場1,800カ所の追跡モリタニング調査によると、 2008年6月末における豚飼養頭数は前年同期比10.6%増、うち繁殖雌豚飼養頭数は同2割を超える 増加となり、上半期の豚出荷頭数は同4.8%増となった。年初に凍雪害が発生した南方地区でも養豚 生産は全面的に回復し、市場供給が安定的であることから、現在、四川省、甘粛省、陝西省および重 慶市における豚産品価格は、安定しつつもやや下落している。 家きんについては、2007年10月以降、採卵鶏の増加により鶏卵価格が低下し、養鶏農家の収益が悪 化したものの、このところ鶏卵価格がやや上昇していることから、各地の養鶏農家が安定的に鶏の 補充を行っており、鶏卵供給は市場需要を満たしている。肉用鶏についても、生産および消費が比較 的おう盛であり、費用対効果や収益が良好である。2008年上半期の家きん飼養羽数は前年同期比2% 増の50億羽、出荷羽数は同8.2%増の53億羽と推計されている。 酪農については、2008年上半期は原料乳価格が上昇したこともあり、乳牛飼養頭数は前年同期比 8.3%増の1,435万頭と推計されている。同年5月下旬以降、北方の主産地における原料乳価格は下落 しているものの、これは季節的なもの(中国の酪農主産地である北方では、冬場は寒さが非常に厳し く、夏場の気候が乳牛にとって最適であることから、生乳生産量は夏に多く冬に少ない傾向)であり、 全体として主産地における乳業・酪農家間の取引価格は、合理的な範囲内のものと認識されている。 一方、肉用牛については、費用対効果および収益性の低さに関する問題が徐々に表面化し、飼養頭 数の減少による供給不足が懸念されており、200年に入って価格が上昇を続けている。同年上半期の 飼養頭数は前年同期比3%減、出荷頭数は同1.3%減と推計されている。 また、畜産業の加速度的な回復に伴い、飼料工業生産量も急速に増加した。農業部の推計によると、 2008年上半期における全国の飼料工業総生産量は前年同期比11.2%増の5,900万トンに達し、うち配合 飼料は同13.3%増の4,540万トン、濃縮飼料は同4.5%増の1,120万トン、飼料添加物およびプレミック スは同5.9%増の240万トンとされる。 上へ
◎ 中国・四川大地震、農業分野の復旧に3年から5年の見通し − 農業被災金額は60億ドル、うち消失した家畜は20億ドルに相当 − 【調査情報部 調査課 平成20年7月2日発】 国連食糧農業機関(FAO)は6月30日、四川省を視察したFAOの調査団の報告として、大地震に より被災した農業生産者は、農業の再建に意欲的であるものの、被害を受けた農業分野が復旧するま でには、3年から5年の期間が費やされるだろうと指摘している。 農村地域の被災者数は3,000万人を超え、被害は、数千ヘクタールの農地、数百万頭の家畜、家屋、 穀物倉庫、農機具に及んだことから、農業分野の被害額は、60億ドル(6,300億円:1ドル=105円) 相当が見込まれるとしている。 被災地である四川省の綿陽は、小麦生産地の一つであり、毎年35万トン相当の小麦が生産されている が、震災後、人手不足や農薬、肥料不足により、小麦生産量は著しく減少するものとみられている。 また、四川省は、稲の主要生産地の一つで、中国の稲全体の2割以上を生産しているが、今回の大地 震により2万ヘクタール以上の水田は、地震による亀裂で干上がり、かんがい施設が機能しないこと で、今後、作付け時期の遅れや水不足などが見込まれることから、生産量は平年の1〜5割程度の減 少が見込まれるとしている。 野菜は温室の被害から生産量の減少が見込まれており、畜産では、大地震により3百万頭を上回る豚 が死亡し、失われた家畜全体の被害額は、被害額の3分の1となる20億ドル相当(2,100億円)とし ている。 上へ
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