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I 糖業の概況(平成15事業年度 年報 砂糖編)

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最終更新日:2008年12月2日

1 海外の動向

(1)砂糖類概況

F.Oリヒト社が平成16年7月に発表した世界の砂糖需給によると、02/03年度(9月〜8月)の世界の砂糖の生産量は、キューバで政策の転換により減産となったが、インド、タイ及び中国をはじめとするアジア地域での増産が著しいこと、EUで単収が増加したこと、ブラジルで増産だったこと等から、前年度を7.6%上回る1億4,900万トンとなった。一方、消費量は、前年度を3.1%上回る1億3,900万トンとなったため、在庫量は、前年度を9.4%上回る6,800万トンとなった。
また、03/04年度(9月〜8月)については、ブラジルで3年連続の良産が見込まれているものの、EUにおける天候不順の影響による減産やインド、タイ及び中国において、いずれも干ばつによる減産であることから、生産量は、前年度を3.1%下回る1億4,400万トンと予想されている。一方、消費量はアフリカやアジアの発展途上国で増加したため、1%増加の1億4,300万トンと予想され、その結果、在庫量は600万トン減少し、6,600万トンになると予想されている。


(2)砂糖の国際価格の推移

2003年4月〜2004年3月のニューヨーク現物相場の月平均価格をみると、4・5月は、イラク情勢が一段落したことを受けてファンド筋の売りや

業者筋の買い等により活発な取引となったものの、2004年3月から下落して、7セント台の小幅なレンジで推移した。6月は、引き続き世界的な供給過剰が予想されること、ブラジルの03/04年産さとうきび生産量及び砂糖生産量予測が上方修正されたこと等から、6セント/ポンド後半まで下落した。7月はファンド筋の買いにより7セント/ポンドまで上伸し、8月は先物価格に比べて現物価格の下げが弱かったこと等から引き続き7セント/ポンド台で推移した。9月は主要生産国のブラジルやインドの過剰供給と現物取引が低調であることから、6月以来の6セント/ポンド台に下落した。10月以降は、ブラジルにおける03/04年度の大豊作が予想されることや海上運賃の高騰等の弱含みの展開により、引き続き6セント/ポンド台後半で推移した。年明けの2月は、海上運賃の高騰により遠方産地からの現物の注文がタイに集中し、アジア地域の現物需要の引き締めが見られたことから、8月以来の7セント/ポンドまで上昇し、3月には1年ぶりに8セント/ポンド台を回復した。


2 国内の動向

(1)砂糖類概況

平成15年産の甘味資源作物の国内生産については、てん菜は、作付面積の増加と夏場の低温、秋から収穫までの期間中好天に恵まれ、昨年を上回る416万1千トンとなった。これに加え根中糖分の増加もあり、産糖量は昨年を上回る74万4千トンとなった。
また、さとうきびは、収穫面積は昨年並みとなったが、干ばつによる生育停滞と台風10号、14号等の襲来による折損等の被害はあったものの、これら台風による降雨等により、昨年を上回る生産量138万8千トン、産糖量16万トンとなった。
砂糖の消費は、消費者の低甘味嗜好や砂糖に対する誤解、加糖調製品の輸入増加等を背景として減少が続いていたが、砂糖需要の維持・増大に向けたシンポジウムの開催や各種広報媒体を活用した普及啓発活動のための取り組みによって、平成14砂糖年度においては、229万6千トンと、12年振りに前年を0.8%上回った。しかし、平成16年9月時点の見込みでは、平成15砂糖年度は、224万2千トンと前年を2.4%下回る見込み。
加糖調製品の輸入状況(15年4月〜16年3月)は、「コーヒー調製品」が対前年11.2%減少したものの、「ソルビトール調製品」同16.3%、「ココア調製品」同8.8%、「その他の調製品(ソルビトール調製品を含まない)」同6.7%「調製した豆」同2.5%、「粉乳調製品」同1.4%増加した。この結果、これらの品目全体では、対前年5.6%増の39万5千トンとなった。
異性化糖の移出動向は、第1・四半期の出荷数量(標準異性化糖換算)は、5月、6月は前年を上回ったものの4月の減少分を補うことはできず、前年同期を0.3%下回った。第2・四半期は、最大需要期の8月が記録的冷夏の影響から大幅に減少したことから、9月は前年を上回ったものの前年同期を3.6%下回った。第3・四半期は、10月は前年を下回ったものの、11・12月が好調であったため前年同期を2.4%上回った。また、第4・四半期は、2月の不調を3月にカバーした結果となり、ほぼ前年同期を0.5%上回った。この結果、15年度の移出数量は、前年より0.5%減の77万5千トン(標準異性化糖換算数量)となった。


(2)砂糖類の国内価格の推移

砂糖の日経相場(東京)上白大袋の価格は、14年11月に2円/kg上がり124円/kgとなって以来、同水準で推移していたが、主産地タイの増産観測などによる国際粗糖相場の下落に為替相場の円高傾向が重なり、5月に1円/kg下落し123円/kgとなり、さらに6月に1円/kg下落し122円/kgとなった。10月に入って、10月1日の10円/kg調整金軽減特例措置の期限切れを受け、10月15日に5円/kg値上げされ127円/kgとなった。その後、同水準で推移していたが、3月に入って原料コストの上昇を背景として127〜130円/kgとなった。
異性化糖の日経相場大口需要家向け(東京・タンクローリーもの)価格は、15年2月上旬に2円/kg上昇し74〜76円/kgとなって以来、同水準で推移したが、競合する砂糖の値上げに伴い、10月18日、約8ヵ月ぶりに1kg当たり5円値上げされ79〜81円/kg(果糖分55%物、中心値)となった。以来、同水準で推移していたが、原料コストの高騰と競合する砂糖が値上がりしたことから、4月3日、約6ヵ月ぶりに1kg当たり3円値上げされ82〜84円/kgとなった。


(3)業界の動き

「食料・農業・農村基本計画」(平成12年3月)の方針に基づき、砂糖の自給率の引き上げ、生産コストの低減、消費の拡大等に努力が払われ、目標達成のための取り組みが実施された。
具体的には、国内の甘味資源作物に関しては、安定生産及びコスト低減に向けた土層改良や優良品種の育成、適時・適切な肥培管理の徹底などによる品質・単収向上、機械化一貫体系の導入、規模拡大のための担い手農家の育成が進められた。
国産糖企業は、製造・流通コストの縮減を図るため、原料受入れ体制の合理化、効率的な製造・流通施設などの整備などが実施された。
精製糖企業は、砂糖の価格競争力の強化を図るため、生産コスト低減に向けて、系列を超えた企業の合併や製糖の共同・委託生産化が実施された。
砂糖の消費拡大を図るため、砂糖消費拡大推進事業として(社)糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会の主催により、小中高校生等を対象とした「暮らしの中のお砂糖」作品コンクールを実施するとともに、主要都市においてシンポジウムが実施された。また、消費者への直接的情報発信窓口である医師や栄養士などの専門家に対して砂糖の正しい情報を提供し、砂糖に対する誤解を払拭することを目的とした「砂糖科学会議」やパンフレット等を配布するなど、昨年に引き続き積極的に実施された。
さらに、砂糖の生産・流通に携る8団体が自主的に構成する「お砂糖“真”時代」推進協議会の活動は13年目を迎え、今年もっとも話題になったお砂糖を使ったデザートの選定・発表が実施された。

3 国内産糖の生産動向

(1)てん菜糖

ア.てん菜の生産

平成15年産てん菜の作付面積は前年産比2,351ha増の67,882ha、栽培農家戸数は前年産比12戸減の10,451戸、一戸当たりの作付面積は前年産比0.14ha増の6.50haとなった。
北海道平均のha当たりの収量は61.3トン(前年産61.6トン)と高い水準となり、総収量は4,161千トン(前年産4,098千トン)となった。また、根中糖分は18.0%(前年産17.8%)と平成5年産の18.0%と並び高い糖分となった。


イ.てん菜の生育概況

てん菜の植付けは、天候等の影響により、平年より2日遅く、最盛期は平年より3日遅かった。
生育初期においては、5月の記録的少雨による干ばつで、生育が停滞したが、6月中旬から下旬にかけてのまとまった降雨により生育は回復した。
生育中期以降は、8月の台風等の降雨による影響も少なく、根部の肥大、糖分の蓄積は順調に進んだ。
病害虫については、道央地区の一部でヨトウガの発生が多かったが、適期防除の徹底と夏期の低温により、全道的には発生が少なかった。


ウ.てん菜糖の生産

15年産の産糖量は、産糖歩留が17.89%(前年産17.63%)と前年をやや上回るとともに、ha当たりの収量も高水準であったため744,436トン(前年産722,589トン)となった。このうち、てん菜原料糖は281,437トン(前年産253,489トン)で総産糖量に対する割合は37.8%(前年産35.1%)となった。


(2)甘しゃ糖〜鹿児島県産〜
ア.さとうきびの生産

15年産のさとうきびの収穫面積は、前年実績より9ha(0.1%)増加して9,885haとなった。地域別では、奄美地域が9ha増加となった。
作型別割合では、夏植え22.4%(前年産21.4%)、春植え21.9%(同22.7%)、株出55.7%(同55.9%)となっている。
10a当たりの収量は、前年実績より415?(7.9%)増加して5,642?となった。地域別では、種子島地域が166?(2.8%)増加して6,108?、奄美地域が504?(10.1%)増加し5,474kgとなった。そのため、さとうきびの生産量は前年より41,402トン(8.0%)増加して、557,666トンの実績となった。
また、さとうきびの栽培農家戸数は、前年より88戸(0.8%)減少して10,800戸となった。


イ.さとうきびの生育概況

○生育初期(3月〜5月)
初期生育は、大型台風の影響や4〜5月の少雨で茎数が少なく、生育が遅れた。
○生育旺盛期(6月〜9月)
生育が遅れていたところに、梅雨明け以降も降水量が平年を下回り、特に沖永良部では干ばつの影響によって全般的に伸長が遅れている状況にあった。8月上旬に台風10号が襲来し、全島に倒伏、葉の損傷、茎の折損、塩害等の甚大な被害を与えたが、台風による降雨により干ばつ解消になり、その後は天候にも恵まれ比較的順調に生育した。
○生育後期(10月〜収穫期)
種子島地域では12月下旬に降霜があったがほとんど影響はなかった。沖永良部では、干ばつの影響でメイチュウ被害が拡大し、糖度が低迷した。


ウ.甘しゃ糖の生産

分みつ糖の歩留は前年実績より0.38ポイント上回り12.39%、含みつ糖の歩留は前年実績より0.58ポイント下回り10.75%であった。
産糖量は、分みつ糖が前年実績より6,937トン(11.3%)増加して68,491トン、含みつ糖も前年実績より58トン(13.1%)増加して500トンとなった。


(3)甘しゃ糖〜沖縄県産〜

ア.さとうきびの生産
15年産のさとうきびの収穫面積は、前年実績より65ha(0.5%)増加して13,959haとなった。地域別では、沖縄地域が96ha、八重山地域が16ha、宮古地域では178haと増加した。
作型別割合では、夏植44.4%(前年産45.3%)、春植12.5%(同12.5%)、株出43.1%(同42.2%)となっている。
10a当たりの収量は、前年実績より115kg(2.0%)増加して5,945kgとなった。地域別では、沖縄地域が868kg(18.3%)増加し5,600kgとなったが、宮古地域が362kg(5.4%)減少し6,365kg、八重山地域も1,776kg(21.9%)減少し6,321kgとなった。そのため、さとうきびの生産量は前年より19,794トン(2.4%)増加して、829,844トンの実績となった。
また、さとうきびの栽培農家戸数は、前年より529戸(2.8%)減少して18,212戸となった。


イ.さとうきびの生育概況

○生育初期(3月〜5月)
各地域の3月、5月の月平均気温は概ね平年並み、4月は高く推移した。降水量は平年よりかなり少なく、特に大東、宮古、八重山地域で小雨傾向となり、萌芽及び生育に影響を与えた。
○生育旺盛期(6月〜9月)
各地域の6月の月平均気温は概ね平年並み、7〜9月はかなり高く推移した。降水量は、6月は久米島、与那国でやや小雨であったが、それ以外の地域では梅雨前線や台風等の影響で平年を上回った。また、期間中に8つの台風が接近し、特に9月上旬に襲来した台風14号は宮古島地域を中心に倒伏、損傷、潮害など甚大な被害を与えた。
○生育後期(10月〜収穫期)
各地域の月平均気温は、11月が高く、翌2月がやや高かったほかは、概ね平年並で推移した。降水量は10月が平年並、11月が多く、12月以降は少雨で推移した。さとうきびの生育状況は沖縄本島地域で概ね良好に推移したものの、宮古地域では台風14号の影響を受け生育は不良となった。


ウ.甘しゃ糖の生産

分みつ糖の歩留は前年実績より0.07ポイント下回り11.82%、含みつ糖の歩留は前年実績より0.11ポイント下回り13.89%であった。 産糖量は、分みつ糖が前年実績より4,343トン(5.6%)増加して91,903トン、含みつ糖は前年実績より2,979トン(29.0%)減少して7,309トンとなった。