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鶏肉産業の現状と今後の見通し(アルゼンチン)

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2010年の処理羽数は、前年比7.4%増の約6億1570万羽

 アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2010年の同国の鶏の処理羽数は、前年比7.4%増の約6億1570万羽となった。また、生産量は、同6.9%増の159万7000トンとなった。
 増産の原因としては、輸出および国内消費とも好調であったことが挙げられる。2010年の鶏肉輸出は、主要輸出先であるベネズエラやチリ向けなどが増加したことから、同19.3%増の約24万9000トンとなった。また、同年の1人当たりの消費量は、し好の変化と併せて国内牛肉価格の高騰による代替需要の影響も受けて、前年比2.9%増の34.4キログラムとなった。
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2017年までに年間11億羽の処理が目標

 このような中、アルゼンチン養鶏加工協会(CEPA)は、2017年までの「鶏肉産業成長計画」を策定し、業界挙げての市場拡大に取り組んでいる。CEPAのカルロス部長およびソフィア女史(海外市場担当)に、今後の見通しや輸出戦略などについて、聞き取り調査を行ったので、以下の通り報告する。

1 「鶏肉産業成長計画」について

 鶏肉業界は、生産・消費・輸出の目標数値を定めた「第1次鶏肉産業成長計画」(2003〜2010年)により、インテグレーションの推進、生産施設の自動化、冷蔵施設の整備、衛生管理の強化などを行った結果、生産・消費・輸出を伸ばしてきた。現在は2011〜17年までの第2次計画の期間中であり、業界としては、同計画中に1億ドル(約81億円、1ドル≒81円)以上の投資を行い、さらなる成長を目指すこととしている。

 〇 第2次鶏肉産業成長計画(2011〜2017年)

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2 今後の輸出戦略について

 ベネズエラ、チリ、南アフリカなどの主要輸出先のみならず、アルゼンチンの市場シェアが数%にすぎない30カ国を含む60カ国について、輸出量を増やし全体を底上げすることで、2017年の目標を達成したい。
 国別には、最大の輸出先であるベネズエラについては、2国間の取り決めによって、石油と食料のバーター取引となっている。ただし、政府間で輸出数量があらかじめ決められているのではなく、民間べースでの取引となっている。アルゼンチンと規格が同一であるということも輸出を行いやすい理由である。とはいえ、同国におけるアルゼンチン産鶏肉の輸入シェアは7%なので、もっと輸出を拡大したい。
 また、EUやロシアとは関税割当拡大を交渉している。中国については、ロシア向けには輸出されないモモ肉など、主流となっているモミジ以外の部位も輸出できるように、市場の拡大を図っている。
 なお、日本向けについては、日本の規格に対応できる技術を持っているものの、価格面で折り合うことが厳しいので、積極的に輸出されている状況ではない。

3 大統領選挙について

 与党・野党のいずれが勝利しても、業界としては、「鶏肉産業成長計画」に基づき、生産・消費・輸出拡大を推進してきたい。

2011年のアルゼンチン鶏肉産業の成長は、ベネズエラ向け輸出がカギ

 MINAGRIによると、2011年第1四半期の鶏の処理羽数は、前年同期比10.9%増の約1億6000万羽、生産量(1〜2月)は同11.8%増の26万5000トン、1人当たり消費量(第1四半期)は、同14.6%増の36.9キログラムと引き続き好調であった。しかしながら、輸出量(1〜5月)については、アルゼンチン国家動植物衛生機構(SENASA)によると、ベネズエラ向けが同78.8%減の約6200トンとなるなど、主要国向けの大幅な減少から、同18.7%減の約6万6000トンとなった。現在のところ、2011年のアルゼンチンの鶏肉産業の成長は、ベネズエラ向け輸出がカギとみられる。
【石井 清栄 平成23年6月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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