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EUの家きん肉製品の輸出入状況

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 欧州委員会によると、2010年の家きん肉の輸出量は126万4千トンとなり、前年を24.4%増と大幅に上回り、輸入量は80万3千トンとなり、前年を8.3%下回った。
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ブラジル、タイ産家きん肉輸入の変動

 EUは、家きん肉の輸出を行っている地域であるが、EU域内でホワイトミートと呼ばれる胸肉が一般的に好まれ、その需要に生産が追い付かず、一定程度の輸入が必要とされており、加塩処理や調製品として多く輸入される。
 主な家きん肉輸入国は、ブラジル、タイとなっており、そのシェアはそれぞれ72.5%、18.5%と、全体の9割を占めている。2010年は、ブラジル産は58万トン(前年比10.6%減)、タイ産は14万8千トン(同6.3%増)となり、タイ産は前年を上回っ
たが、ブラジル産は前年をかなり大きく下回る結果となった。

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 EUでは、1996年にはわずか3千トンであったブラジル産、タイ産の加塩家きん肉の輸入量が急増したことに伴い、2001年には全体で約37万トンと急増した。EUの家きん産業にとっては、この急増は脅威であり、2002年に、両国産の加塩家きん肉に対して、禁輸措置ともいえる関税適用の変更を行った。具体的には、加塩処理された後、冷凍保存された加塩家きん肉について関税分類を、「0210:加塩家きん肉(従価税15.4%)」ではなく、「0207:生鮮、冷蔵および冷凍家きん肉(従量税1,024ユーロ/トン(約10万6千円、1ユーロ=104円))」を適用した。
 しかし、両国がこの措置を不服としてWTOに提訴し、EU側が敗訴した結果、EUは、2007年6月より両国に関税割当を配分し、従価税15.4を課すこととなった。これにより両国からの輸入は増加し、特にブラジル産は大きな伸びとなった。
 ブラジル産加塩家きん肉は、その輸送距離の問題から冷凍してEUに輸入され、その後、解凍して加工し、加工後は再冷凍して流通することが多い。このため、EUは、2010年5月1日より、衛生上の問題を理由に、冷凍家きん肉を解凍後、分割などの加工、調整した家きん肉を再冷凍して流通、販売を禁止する措置を講じた。その結果、2010年のブラジル産家きん肉の輸入量の減少につながったと考えられる。

香港向け輸出が大幅に増加

 2010年の輸出量を見ると、前年を大幅に上回る126万4千トンと、2008年以降、増加傾向で推移している。輸出先としては、主にロシア、香港、中近東、アフリカ向けで、ロシア向けが全体の約2割を占めている。輸出国別に見ると、ほとんどの国で前年を上回っており、ロシア向けは24万5千トン(同7.9%増)、香港向けは15万1千トン(同71.3%増)となった。特に、香港向けは前年を大幅に上回ったのは、香港への中国本土からの生体鶏の輸入が減少し、この不足分を補うためにEUからの輸入が増加したことによるものと考えられる。
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引き続き輸出は好調

 2011年上半期は、輸出量が67万3千トン(前年同期比22.2%増)、輸入量は40万8千トン(同2.8%増)となり、ともに前年同期を上回って推移している。
 輸入量を、国別で見ると、ブラジル産は減少、タイ産はかなり増加していることから前年同様の状況となっている。
 また、輸出量は、主要輸出先であるロシア向けは大幅に減少しているものの、香港向けや中近東向けが、ロシア向けの減少分を上回るほど大きく伸びたことから、全体の輸出量では前年を大幅に上回っている。
【小林 奈穂美 平成23年9月29日発】
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