[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2011年 > デンマーク脂肪税を導入

デンマーク脂肪税を導入

印刷ページ
 2011年10月1日、デンマークは、世界初となる「脂肪税」を導入した。これは、2.3%以上の飽和脂肪酸を含む食品を対象に課税するもので、バター、牛乳、チーズおよび肉類などは、課税対象となる。

導入の経緯

 2009年、デンマーク政府は、財政改革の一環として「健康に悪影響を与える食品による財源確保」などを掲げた「スプリング・パッケージ(Spring Package) 2.0」を提案し、2010年には議会を通過した。ただ、同案に盛り込まれていた脂肪税は、消費者及び食品業界からの強い反対により、成立は見送られていた。特に、食品業界からは、脂肪税導入により求められている飽和脂肪酸の含有量計測などは、対応できないと、強い反発があった。
 2011年10月、EUは食品ラベルに係る規則改正により、食品ラベルに飽和脂肪酸の含有量の表示が義務化された。また、この食品ラベルは、EU域内で統一表示となることから、デンマーク以外のEU諸国の食品も対象となり、国内外の食品に対して公平に課税することが可能となった。デンマーク政府は、食品業界などの理解を得て、この機に導入に踏み切ったものである。
 デンマーク政府は、脂肪税導入について、課税によって健康に悪影響を及ぼす食品の消費を減らすことで、国民の健康増進を図る目的としている。

脂肪税の概要

〇対象食品:全重量当たり2.3%以上の飽和脂肪酸を含有する食品
〇課税率  :飽和脂肪酸1キログラム当たり16クローネ(約220円、1クローネ:13.72円)
〇納税業者:・デンマーク国内の食品取扱業者
        ・デンマークを除くEU域内で製造された食品を販売する業者
        ・域外の国から食品を輸入する業者
        ・デンマークを除くEU域内の業者でデンマークで食品を販売する業者
        (上記対象企業は、食品業者160社、食品輸入業者1450社となる見込み)

脂肪税導入の影響

 脂肪税によって食品価格は値上がりする。デンマーク財務省は、脂肪税導入によって食品価格が0.5〜35%値上がりすると試算している。主要品目の価格上昇率は、バターで16.7%、豚肉脂肪で34.7%、オリーブオイルで6.7%となる。特に、バターの値上がりは、パンや菓子類など他の食品へも影響することになる。
1

脂肪税導入の反応

 当地調査会社によると、脂肪税導入の国民の反応は、非常に批判的であった。特に、低所得層からの反発は大きい。低所得層は、食品支出の割合が高く、加工食品の利用も高いため、税負担が大きくなるためである。
 また、政府は、「健康増進」を導入目的の一つとしている。しかしながら、世論調査によると、脂肪税導入より「購買行動が変わる」と回答したのは7%のみであった。また、3分の2の人が、「購買行動を変えるほどの価格上昇ではない。」と回答している。脂肪税が国民の食生活の変化に与える影響は軽微で、健康への効果は極めて限定的であるとの見解もある。
 さらに、「バターやチーズは本当に健康に悪いのか?」、「健康や環境への配慮を口実とした単なる財源確保」といった批判も多くある。今回の脂肪税が、国民の信頼を得ていない一端がみえる。
 なお、今回の導入により消費者は、1世帯あたりおよそ年間1,000クローネ(約13,720円)の増税になると見込まれている。
 一方、食品業界は、脂肪税導入後の影響として、2.3%以上の飽和脂肪酸を含む食品の購入減少率を4%と予測している。この減少率は、長期的にみるとデンマーク国内の食品産業への成長の阻害要因になることを懸念している。ただし、デンマークからの輸出食品については、非課税のため「輸出には影響なし」としている。
 酪農業界は、乳製品の消費の減退を招くとして強く反対をしている。デンマークの酪農乳業組合である「アーラ・フーズ」は、「脂肪税の導入により1億2500万ユーロ(約130億円)の損失」と発表している。
 輸入乳製品も脂肪税の課税対象であることから、デンマークの酪農生産者のみならず欧州酪農協会(EDA)も強く反対している。EDAは脂肪税について「デンマークのみの問題ではなく、EU域内の市場に不均衡を生じさせる可能性があるため、欧州レベルで議論すべきである」と主張している。
 また、デンマーク酪農理事会は、脂肪税導入が、雇用の減少や対象食品の生産抑制による経済的損失、成長に必要な牛乳やチーズ等の消費減による健康への影響を招く懸念があるとコメントしている。
2

今後の動向

 脂肪税は、脂肪の少ない豚の品種利用の拡大、低脂肪の乳製品の増加、国内需要減少に伴う輸出促進が予測されている。
 ただ、消費者の購買行動の変化、畜産業の影響などが明らかになるには、相当の期間がかかる。また、EU諸国においても脂肪税導入に対しては反応は様々である。イギリスは、脂肪税の導入に懐疑的、一方、ルーマニアは、脂肪税の導入を検討中と、直ちに他の国が導入に踏み切るとは考えにくい状況である。今後、デンマークでいち早く導入した脂肪税が、デンマーク国内で定着するのか、さらにはEU全体の動きも含めて今後とも注視していく必要がある。
【矢野 麻未子 平成23年12月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805



このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.