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米国の穀物、牛肉の需給見通し〜全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の年次総会〜

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 全米最大の肉牛生産者団体である全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)の2012年次総会が、2月1日〜4日、テネシー州ナッシュビルにおいて開催された。同総会の中で、キャトル・ファックス社(米国の畜産コンサルタント)から牛肉、飼料穀物の需給見通しについて説明が行われたので、その概要を報告する。

トウモロコシ等の需給見通し

・ トウモロコシの需給見通しについては、2012年のトウモロコシ作付面積が注目されている。昨年12月
 の大豆/トウモロコシ比率(大豆先物価格÷トウモロコシ先物価格)が記録的に低い水準であったこと
 などから、2012年の生産者のトウモロコシ作付意欲は高まっているものと推測される。
・ 他方、生産者は南米におけるトウモロコシの収穫状況も注視しており、大豆との価格差やトウモロコシ
 輸出競合国の需給状況等を勘案して、最終的に作付する作目を決定するであろう。USDA(米国
 農務省)が3月末に発表するトウモロコシの作付意向調査結果が注目される。
・ 2012年の作付面積は、現時点において、トウモロコシが93.9百万エーカー(2011年91.9百万エーカ
 ー)、大豆が74.5百万エーカー(同75.0百万エーカー)、小麦が57.2百万エーカー(54.4百万エーカー)と
 予測される
・ トウモロコシの2012/13年度(9月〜8月)の単収については、これまでのトレンドに基づくと1エーカー
 当たり161.4ブッシェル程度(2011/12年度は同147.2ブッシェル)と見込まれる。予想通りの作付面積と
 単収が実現されれば、期末在庫率は8〜11%程度となり、2011/12年度の6.7%と比較すればやや改
 善が見込まれる。
・ 2012年の1ブッシェル当たりのトウモロコシ価格については、2012年前半は上位価格帯が6.5〜6.75ド
 ル、下位価格帯が5.5〜5.75ドル、2012年後半は上位価格帯が6.25〜6.50ドル、下位価格帯が5.25〜
 5.50ドル水準と見込まれる。
・ なお、ラニーニャ等の影響により、昨年と同様、春先にはコーンベルト地帯に雨が多いことが予想され
 るほか、冷夏が想定されるなど、トウモロコシにとっては好ましくない天候となる可能性があることに留
 意すべきである。

牛肉の需給見通し

・ 2011年の牛肉輸出は、アジア諸国の需要増やドル安などにより、輸出量28億3000万ポンド、輸出金
 額47億ドルと、ともに過去最高になると見込まれている(副産物、皮を含む)。輸出金額を1頭当たりに
 換算すると、昨年の201ドルから261ドルへと大幅に上昇する。
・ 米国と競合する牛肉輸出国としてはブラジルが挙げられる。しかし、同国の牛肉生産がほぼ横ばい傾
 向にあるなか、一人当たりの牛肉消費量が所得向上に伴い大幅な伸びを示していることから、米国と
 比べれば牛肉の輸出余力は少ないものと考えられる。
・ 2012年の米国食肉輸出については、ブロイラーが対前年比2.4%、豚肉が同2.7%、牛肉が10.8%伸
 びると見込まれている。牛肉の伸びが最も大きいが、これは日本などを含むアジア諸国の需要増を織
 り込んだものである。
・ 2012年の牛肉供給については、2012年の肥育牛と畜頭数(去勢雄、雌肥育牛)が40万頭減少すると
 推測されることから、米国内の一人当たりの牛肉供給量は2011年の57.3ポンドから55.8ポンドに減少
 すると見込まれている。
・ 牛肉の小売価格については、これまで、子牛、肥育牛の価格上昇幅と比較して小売りの上昇幅が小
 さかったことから、2012年は小売価格に転嫁されるものと考えられており、2011年の1ポンド当たり牛
 肉小売価格は2011年の4.44ポンドから2012年は4.80ポンドまで上昇するものと見込まれている。
・ 2012年の牛肉需給はタイトになることから、子牛、肥育素牛、肥育牛のすべての価格が記録的な高
 値になると予測される。子牛の価格上昇幅が最も大きいと考えられることなどから、収益性は肉用牛
 繁殖経営が最も高く、その次に育成経営になるものと推測される。なお、肥育経営については、トウモ
 ロコシ等飼料価格が依然として高水準で推移していることから、2012年は赤字に転落すると見込まれ
 ており、同経営は先物取引などを活用したリスク管理が必要となる。
【上田 泰史 平成24年2月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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