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強制歳出削減が食肉需給に与える影響(米国)

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3月1日から強制歳出削減が発動

 米国議会は、2013年1月1日、「財政の崖」と呼ばれていた、大型減税を起因として緊縮財政に陥るという事態を回避した。しかしながら、その後、議会は財政改善に向けた合意に至ることができず、2011年予算管理法に基づき、3月1日から強制歳出削減が発動されることとなった。この措置では、通常予算の5%以上が一律に削減されることになるが、この削減は2012年度(10月から翌年9月)の後半にあたる2013年3月1日からの7カ月間で行われなければならないため、実質的には残余期間の予算額の10%近くが削減されることになる。

ヴィルサック農務長官、食肉検査への影響は必至と発言

 米国農務省が行っている食品安全関連の業務も例外とはされておらず、ヴィルサック農務長官は去る3月5日に開催された下院農業員会の公聴会で、「食品安全を担当する部門の予算はその87%が人件費で占められているので、強制歳出削減が実施されれば食肉検査にも影響が出ざるを得ない」と語っている。米国では、と畜場、食肉処理場では農務省の食肉検査員の検査が必須とされているが、これら職員への給与支給が困難となるため、予算が削減されれば少なくとも一部の職員を一時解雇せざるを得ない状況となる。
 なお、クリントン政権下の1995年、1996年にも議会での与野党対立から予算が成立せず、政府機能の停止状態が発生しているが、この際には、予算成立後に食肉検査員の給与を後払いすることで食肉検査を継続した。しかし、ヴィルサック農務長官は、今回の強制歳出削減では後払いの財源が確保されていないとして、このような措置の可能性を否定している。

実際の一時解雇開始には数カ月が必要

 仮に一時解雇がなされる場合、対象となる検査職員へは30日前までに事前通告することが労働協約で定められているが、3月12日現在、このような通告がなされたという情報は得られていない。ヴィルサック農務長官は、一時解雇の通知などに関わる事務手続き等で、実際の一時解雇開始までには数カ月がかかるとしている。また、オバマ大統領が削減実施命令に署名しない限り、農務長官に一時解雇執行の権力は発生しないとしている。しかし、仮に一時解雇が実施され、これが5日間以上続いた場合には、5日を1サイクルとする米国のと畜場、食肉処理場、食肉の供給システムひいては米国の食肉需給に大きな影響を与えることになる。また、生産サイクルの短いブロイラー産業では、毎日大量に発生する初生雛の行き場がなくなるなど、食肉の需給以外の問題も発生することになる。
【柴ア 由佳 平成25年3月12日発】
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