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再生可能燃料の使用義務量を公表(米国)

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最終更新日:2015年12月3日

 米国環境保護庁(EPA)は11月30日、2014〜2016年の再生可能燃料の使用義務量(RFS)を公表した。当該期間のRFSについては、2015年6月10日に当初案が示されていたが、今回の公表値が最終決定となる。なお、RFSは2007年に成立した「エネルギー自立・安全保障法(EISA)」において2022年まで定められているが、EPAは毎年、この数量を総合的に判断してRFSを決定することとなっている。
 今回の最終決定では、RFSは、2014年が162億8000万ガロン、2015年が169億3000万ガロン、2016年が181億1000万ガロンとされ、いずれも当初案からは上方修正されたものの、EISA法で定められた数値を下回る結果となった(表)。また、種類別では、2015年の先進的バイオ燃料がわずかに下方修正されたものの、トウモロコシ由来バイオ燃料はいずれの年も当初案から上方修正された。

 RFSは、トウモロコシ需要に影響を及ぼすため、トウモロコシ生産者を中心に関係者から注目されていた。トウモロコシの供給サイドからはEISA法の基準を下回る今回の結果に対して批判が集まる一方、石油業界はさらなる削減が必要との見方を示している。
 今回のトウモロコシ由来バイオ燃料のRFSの上方修正は、エタノール向けトウモロコシ需要が高まるとの強材料となり、公表翌日(12月1日)のトウモロコシ先物価格は、1ブッシェル当たり3.67米ドルと前日の同3.65米ドルからわずかに値を上げた。
図
 今回の決定について、業界関係者が以下のとおりコメントしている。
【トウモロコシまたはバイオエタノール業界】
・全国トウモロコシ生産者協会
 協会は、7月、EPAに対して、2014年から2016年までのトウモロコシ由来バイオ燃料のRFSを議会の定めたRFS水準に戻すように要請した。EPAが当初案を見直し、一歩前進したことは歓迎するが、法に定められた数量を削減することは、米国経済、米国のエネルギー安全保障、環境に悪影響を与えるものだ。石油大手が一般大衆に対して間違った情報を提供するキャンペーンを展開し、それが今回の決定につながったことは不幸である。

・ネブラスカトウモロコシ委員会
 EPAは石油業界に明らかに屈服した。農業が創造する米国のエネルギー産業の未来と引き換えに、時代遅れの燃料に依存し、我々の経済および自然環境への有害な影響を拡大させることを決めた。

・アイオワ・ファーム・ビュロー(Craig Hill会長)
 バイオ燃料が当初案より増えたことは歓迎するが、現実には、今回の数量は、2007年に議会がアイオワ州の農家に約束した数量には遠く及ばない。我々は、EPAが間違った方法でバイオ燃料の目標の計算を行い、石油大手の勝利につながったことを知っている。さらに悪いことに、今回のことで、現政権のEPAが農家と消費者を犠牲にして、議会の意向を無視し続けるということが明らかになり、雇用の5人に1人が農業関連となっているアイオワ州にとって特に大きな問題である。

・ミネソタ州バイオ燃料協会
 EPAの今回の決定は、石油業界に対する降伏だ。議会は、再生可能燃料の利用による温室効果ガスの抑制を推進してきており、バイオ燃料生産者は法律を信用して、多くの投資を行ってきたにもかかわらず、EPAは法律に準拠していない。

【石油業界】
・米国石油協会
 議会予算局は、仮にEPAがエタノールの混合割合を10%超にすると、燃料価格が上昇するとしている。協会は、エタノールを混合しないガソリンに対する消費者の強い需要に応え、混合義務を9.7%以上にしないよう、EPAに対して要請した。
 今日の発表は、混合割合の高い燃料をほとんどの自動車が使用できないことや自動車所有者の多くが混合割合の高い燃料を忌避しているという事実があるにもかかわらず、エタノールの混合割合を引き上げるという非現実的な前提を基にして行われており、消費者を保護するため、議会がRFSを破棄するか大幅に改定しなければならないことを明確に示している。与野党双方が、RFSを失敗であると認めており、協会としては、議会に対する要請行動を強化している。

【政府関係者】
・ヴィルサック農務長官
 今日公表された最終決定は、RFSの全項目について、オバマ政権とUSDAのバイオ燃料への関与と国産再生可能エネルギーに立脚した成長を継続するための道筋を開くもの。RFSは、原料生産、研究、精製能力、輸送、新規市場開拓といった広範な分野への現政権の多額の戦略的投資が、洗練され、成長を続ける米国のバイオ燃料産業となって結実したもの。

・Fred Upton下院エネルギー・商務委員長(共和党、ミシガン州選出)
 RFSを増加させるという経済的、技術的、環境上の想定は、現在、我々が直面している現実と大きく異なっており、ついにこの制度の見直しを検討する時期が到来している。見直しを行う前に、我々は、農業、再生可能燃料製造業者、石油精製業者、自動車製造業者など関係業界に与える影響に十分な配慮を行う必要があり、何よりも大事なことは、米国の消費者にとって最善なことを行う必要があるということ。


【渡邊 陽介 平成27年12月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397