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NZ政府、TPPの効果に関する報告書を公表

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 ニュージーランド(NZ)外務貿易省は1月、2015年10月に大筋合意した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、その効果に関する報告書を公表した。以下、同報告書のうち物品貿易(Trade in Goods)に関する箇所について紹介する。

関税削減:効果の3分の2は畜産物

 同省によると、全ての関税の撤廃は達成されなかったものの、TPPにより新たに貿易協定を締結する国々(日本、米国、カナダ、メキシコ、ペルー)に対して、最終的に95.4%の関税が撤廃されるため、NZにかなりの便益がもたらされるとしている。さらに、すでに自由貿易協定を締結しているものの、一部品目で関税撤廃には至っていないベトナム、マレーシアに対しても、市場アクセスが改善されるため、全参加国、全ての品目を合わせた最終的な関税削減額は2億7400万NZドル(222億円:1NZドル=81円)に及ぶとしている(表1)。このうち、乳製品は9600万NZドル(78億円)、食肉は8400万NZドル(68億円)としており、両品目合わせると全体の約3分の2に達する。
 また、関税削減の段階的な効果については、発効の即時に1億3700万NZドル(111億円)という大幅な関税削減効果を見込んでいる。その後、追加的な関税削減効果は徐々に低減し、発効15年目以内に、大半の関税削減効果がもたらされるとしている。
 なお、関税の「撤廃」ではなく「削減」となった日本の牛肉輸入については、これまで日本が合意した貿易協定の中で最大の関税削減であり、日豪経済連携協定により先行して関税削減が進む豪州と輸出条件が平準化され、市場アクセスが改善されるとしている。
表1

関税割当:乳製品輸出への直接効果は限定的

 同省は、NZにとって重要な輸出品目である乳製品について、TPPにおける関税割当の利用可能数量を示している(表2)。同省によると、これまで保護されてきた主要乳製品(注)における段階的な関税割当数量の増加により、15年目には、NZに4億4500万NZドル(360億円)の付加価値がもたらされる可能性があるとしている。これは、NZの主要乳製品の年間輸出額133億NZドル(1兆773億円)と比較するとわずかであるものの、新たに日本、米国、カナダなどにおける、比較的高単価の消費者向け製品の市場への輸出機会の拡大につながるとしている。これらの乳製品への生産シフトは、乳製品国際価格にも間接的な影響をもたらすとしており、関税割当による直接的な効果は限定的であるものの、全体的な乳製品価格の押し上げにつながることを期待している。
 
(注)「主要乳製品」は、バター、チーズ、粉乳。
表2
【根本 悠 平成28年2月10日発】
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