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ホルモン投与牛肉の輸入禁止を継続するEUに対し、報復関税措置の再実施に向けた手続きを開始(米国)

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 1980年代以来、米国とEUの間で生じているホルモン投与牛肉貿易を巡る紛争について、米国通商代表部(USTR)は2016年12月22日に発出したプレスリリースにて、EUに対する報復関税による制裁措置の再実施に向けたパブリックコメントと公聴会を実施する旨を公表した。これは米国内の牛肉業界の要求に応じたものであり、本年中のTTIP(環大西洋貿易投資連携協定)合意が失敗に終わったことを受けて実施される。これにより、米国EU間のホルモン投与牛肉を巡る積年の貿易紛争が再燃する可能性がある。
 
 この紛争に関して、WTOはこれまでにも2度に渡って裁決を下しているものの、いずれのケースでも永続的な解決には至っていない。
 まず、1998年、EUの米国産牛肉に対する輸入禁止措置は、科学的根拠に基づいておらず、WTO協定違反であるとされた。これを受けて、米国は、年間総額1億1680万米ドル相当の特定EU産品について報復関税を課した。
 次に、2008年には、紛争が解決するまで米国による制裁措置の継続を容認するとの裁決が下された。その後、2009年、米国とEUは覚書(MOU)を交わし、米国がEUに対する制裁措置を段階的に撤廃する一方、EUは高級牛肉を対象とした無関税割当枠を新設することにより米国の損失分を補償することに合意した。しかしながら、米国産牛肉は当初こそ無関税割当枠の大半を占めていたものの、当該無税枠は対象国を特定したものではなかったため、他国産のシェアが増加したことにより、米国産の割合は過去3年間に渡って過半数を下回り、縮小傾向にあった。
 
 同プレスリリースでは、農業および貿易関係の米国政府要人のコメントが引用されており、フロマン通商代表は、「WTOは、EUによる米国産ホルモン投与牛肉の輸入禁止措置が国際的な貿易義務に違反していると判断した。それにもかかわらず、EUはこの問題への対処を怠っている。今回の措置によってEUに責任を促すとともに、米国の肉用牛生産者がEU市場へのアクセスを獲得し、EUの消費者が高品質な米国産牛肉を入手しやすくするために、欧州委員会に再交渉を促す重要な一歩でもある。」と述べている。
 また、米国農務省(USDA)のヴィルサック長官は「米国の肉用牛生産者は地球上で最高の牛肉を生産しているにも関わらず、EUの制限的な政策は、EU域内の消費者が米国産牛肉を手ごろな価格で購入すること阻み続けている。我々はEUに対し、米国産牛肉にとって好ましいものであった覚書による取り決めが明白に破たんしてしまったことについて、長年に渡り修正するよう求めてきた。牛肉産業は米国の経済に重要である。米国産牛肉および牛肉製品の輸出額は年間60億米ドルであり、およそ76億米ドルもの経済活動と約5万もの雇用を国内に創出している。この産業は国民経済の総合的力にとって重要であり、また、新たな国外需要へのアクセスを求める農村地域にとっても必要不可欠である。」と述べている。
 
 プレスリリースは、今回のタイミングについて、欧州委員会はこの紛争をTTIP交渉の中で対処すべきであると主張していたものの、本年9月の時点で2016年内の合意が不可能となったことが背景にあるとしている。この後の手続きとしては、まず、本件に関するパブリックコメントを2017年1月30日まで受け付け、同年2月15日に公聴会を実施するとしている。
 
 なお、今回のプレスリリースを受けて、米国下院歳入委員会のケヴィン・ブレイディ委員長(共和党・テキサス州)は、以下の通りコメントしている。
 「EUは米国産牛肉のアクセスを、長年に渡り差別的な規制措置によって妨げてきた。その輸入禁止措置は、明らかにWTO協定違反であるとの裁決が下された。今日のプレスリリースによって、我々はEUに、米国産牛肉に対し不公平な貿易慣行を行ってきた責任を、どのような形でとってもらうか決めることが出来るようになる。政権が、最近停止していた報復措置の復活を検討することによって、我々は米国の肉用牛生産者および牛肉産業にとって、大きな一歩を繰り出そうとしているのだ。
 米国産牛肉の輸出額は60億米ドル以上であり、我々の製品は世界の中でも最上で、かつ最も競争力がある。我々は、貿易相手国がフェアプレーをすることを保障しなければならない。なぜなら、そうすることによって、米国は勝利を獲得できるからだ。私は、今後数カ月の間、トランプ政権と協力して、米国産牛肉の市場アクセスを奪還することや、EUが米国の労働者と企業を犠牲にして貿易規則を曲げようとした場合に彼らに責任を課すことに一層の努力を傾けるのを楽しみにしている。」
 
 この他、米国の牛肉関係団体は、今回の米国政府の対応を支持する旨のプレスリリースを発出した。各々の主な内容は下記の通りである。

1 米国食肉輸出連合会(USMEF)

 米国牛肉産業の利益を守るための、米国法の下で可能な手段を行使するというUSTRの決断を、我々は全面的に支持する。7年間に渡って米国の肉用牛生産者と食肉パッカーは、EU市場の要求を満たすべくかなりの投資を行ってきたが、結局、米国産のシェアは、豪州産、ウルグアイ産、およびアルゼンチン産に奪われてしまった。この状況は持続不可能であり、断固とした対応が求められる。
 米国牛肉産業は、米国がEU市場に参加するための商業的に実行可能な方法を探した政府の努力を支持している。2009年の合意は、当初は、このような方向に向けた一歩となっていたようだが、不幸にも、産業の期待に応えられなかった。このような状況の下、我々は、米国に補償すべく創設された関税割当枠を競争国が浸食していく様を傍観することには同意できない。
 

2 北米食肉協会(NAMI)

 EU産農畜産物に合計1億米ドル以上の関税を課すとのUSTRによる決断を支持する。この措置は、ホルモン使用牛肉に係る輸入規制によって生じた米国の損失を補償するために創設された無関税割当枠について、EUが違反をしたことの直接的な結果である。
 牛肉の無関税割当枠は、米国が高品質牛肉をEUに輸出する目的に特化して設けられたが、他国もこの枠を使って不適切な形で市場アクセスを獲得している。報復関税は最後の手段であるが、EUによるホルモン投与牛肉輸入禁止措置によって米国の食肉産業が何年にも渡って被った損失に対する公平な補償を確保する唯一の方法である。
 EUが米国と結んだ協定を履行することが肝要である。我々は、米国産牛肉の公平なアクセスを確保すべく米国政府と協力するとともに、報復関税の復活に受けた今日の動きを支持する構えである。
 

3 全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)

 我々には、長年に渡る米国産牛肉の不当な扱いに対する補償をEUに求める以外、選択の余地がなくなった。我々がEUと交わした一時的な合意は、米国の牛肉生産者とEUの消費者をつなぐ信頼の架け橋を構築する機会となり、また、EUによるホルモン使用牛肉の輸入禁止措置の結果、我々が被った損失を補償することが期待された。EUはその協定の主旨を侵害したため、米国の牛肉生産者を補償するために創設された関税割当において、米国産牛肉輸出が得た利益は少ないものとなった。
 好ましい選択ではないが、報復関税は肉用牛生産者にとって、EUのために長年被り続けた損失に対する権利を保障する唯一の方法である。
【野田 圭介 平成28年12月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533



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