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韓国との自由貿易協定の改訂に署名(米国)

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 ドナルド・トランプ大統領と韓国のムン・ジェイン大統領は2018年9月24日、米韓自由貿易協定(KORUS)の改訂協定に署名した。本年3月に同協定の大筋合意が発表されてから、約半年で最終的な合意を迎えた。
 米国の韓国に対する貿易赤字は、KORUSが発効した2012年の132億ドルから、2017年には231億ドルに拡大している。米国側は、今回の新しいKORUSにより米韓の貿易不均衡が解消されるとの見解を示している。なお、農畜産物貿易に関しては、今回の改訂による変更は行われていない。
 畜産物に関して、韓国は、2017年における米国産牛肉の輸出先として、日本に次ぐ第2位となっており(図1)、韓国における輸入牛肉のシェアは米国が第1位である。また、米国産豚肉の輸出先としては、日本、メキシコ、カナダに次ぐ第4位となっている(図2)。2012年のKORUS発効以降、韓国の米国産牛肉および豚肉輸入量はいずれも増加しており、関税が段階的に削減されることに伴い、今後も輸入量はさらに増加するものと考えられる。
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関係者の声

・米農務省(USDA) パーデュー長官
 我々は農業部門を含む、米国経済全体にとってより良い取引をもたらす新しいKORUSを締結した。 これは、長年にわたり協力関係を築いている、両国の貿易の重要な改善を表している。この合意はトランプ大統領の貿易への取り組みを強化し、米国に力強い利益とより良い取引をもたらす。 私は、KORUSから新しいNAFTA、欧州連合(EU)、日本、そして特に中国との新たな協定へとこの勢いが続いていくと楽観している。 私は貪欲なスポーツマンとして 「これをバッグに入れて、もっと狩りを続けよう。」と言うつもりだ。

・米国食肉輸出連合会(USMEF) ダン・ホルストロム会長
 新しいKORUSは、米国の牛肉および豚肉産業にとって嬉しいニュースである。これまでのKORUSでは、韓国における米国産牛肉および豚肉のシェアを拡大させるだけでなく、米国産牛肉および豚肉を支持する消費者に、より手頃で身近な存在として提供することで消費を拡大させた。米国は、韓国にとって最大の牛肉供給国であり、豚肉についてもEUに次ぐ第2位の供給国となった。2017年の韓国向け米国産牛肉と豚肉などの輸出は、前年同期比19%増の17億ドルで過去最高を更新し、2012年のKORUS発効時と比べて69%増加した。2018年も輸出は好調で、前年同期比で50%超増となっている。 
 これまでのKORUSの下で、米国産豚肉製品の関税の多くが0%となっている。また、米国産牛肉の関税率は、40%から21.3%に引き下げられ、2026年に関税が0%となるまで毎年段階的に削減される。その他の国々も韓国と自由貿易協定(FTA)を締結しているが、KORUSはそれらのFTAよりもいち早く関税が撤廃されることとなる。米国の通商担当当局が、KORUSに含まれる有利な条件の重要性を認識し、新しい協定においてもそれらが維持されるよう、尽力したことに感謝する。

・全国肉牛生産者・ 牛肉協会(NCBA) ケビン・ケスター会長
 KORUSは、貿易協定により関税が引き下げられ、科学に基づく基準が適用されることにより、米国の生産者がどれだけ恩恵を享受しているかを示す代表例である。10年ほど前、米国産牛肉の韓国への輸出は、40%の関税と多くの非関税貿易障壁によって厳しく制限されていた。KORUSはこれらの障壁を打破し、韓国を米国産牛肉の主要拠点とすることに貢献した。



 米国は、TPPからの脱退やNAFTAなどの貿易協定の見直しを行っており、それによって結果的に米国産農産物の輸出を支える協定を失うことになるのでは、という不安の声が米国内生産者から上がっていた。この声に対し、米国は新しいKORUSの締結により、これまでの市場アクセスを確保するという明確な回答を示したことになる。今回のKORUSの見直しは、自動車が最大の争点であったとされるものの、日本との物品貿易協定(TAG)の交渉にどのような影響を及ぼすのか注視する必要がある。
【調査情報部 平成30年10月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397