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好調な砂糖需要を背景に国内エタノール価格が高騰(ブラジル)

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最終更新日:2011年5月16日

2010/11年度の砂糖の生産量、輸出量は過去最高

 2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)の砂糖は、生産量4091万7千トン(粗糖換算)、輸出量2843万4千トン(粗糖換算)と、いずれも過去最高となった。その要因として、(1)国際的に砂糖需要が好調なことを背景にさとうきびが増産されたこと、(2)国際砂糖価格が上昇基調であったため、砂糖・エタノール生産企業は、エタノールよりも、砂糖の生産を優先する傾向が強まったこと、が挙げられる。
(参考)砂糖類情報2010年5月号 砂糖類の需給・価格動向「4.世界の需給に影響を与える諸国の動向」
表1

需給ひっ迫から国内の燃料用エタノール価格が前月から約5割の上昇

 ブラジル政府は1973年の第一次オイルショックを踏まえ、1975年に国家アルコール計画(プロ・アルコール)を制定し、安価で再生可能な燃料としての燃料用エタノールの増産とフレックス自動車の普及を推進してきた。このため、現在はE100(エタノール100%)またはE20-25(ガソリンのエタノール混合率20-25%)の使用が義務付けられている。
 しかしながら、近年の経済成長から国民の自動車保有台数が急伸し、予想以上のエタノール需要の拡大から需給がひっ迫した。このため、国内価格は上昇基調で推移し、無水エタノールでは2011年4月に1リットル当たり2.34レアル(約123.6円、1レアル≒52.8円)、前月比47.2%高となった。
表2

エタノール増産を目的とした暫定措置令を発出

 このような背景から、ブラジル政府は4月28日、(1)エタノールの位置付けをさとうきび由来の「農産品」から「エネルギー」へ変更しエネルギー全般を管理する石油・天然ガス・バイオエネルギー監督庁(ANP)が所管、(2)ANPがエタノールの生産、輸出入、輸送などに関する規制、検査などを実施、するなどの内容を盛り込んだ暫定措置令(MP532)を発出した。さらに、現在のエタノール需給を緩和するため、無水エタノールのガソリンへの混合比率を20〜25%から18〜25%に引き下げることとした。
 ANPでは早速、エタノール市場をコントロールするため、同措置令の実施チームを立ち上げ、180日以内に実行にかかる規則を策定することとしている。
 ブラジル政府はこれまで、農務省が原料となるさとうきびの作付調査などを行っていたものの、エタノールの生産計画などは企業に委ねていた。このため、今回の措置令を基に、今後はエタノール生産量や在庫量なども政府の管理下に置き、エタノールの安定供給を図られることとなる。

砂糖の輸出に対する課税も検討したい模様

 ジウマ大統領は、今回の一連の状況を踏まえ、砂糖の輸出に対する課税も検討したい意向があるようだ。砂糖の国際需給動向と砂糖生産企業の反対から輸出税を課すことは実現性が低いと思われるが、政府の苦しい状況がうかがえる。
 現在のようなエタノール価格の高騰は想定外の事態であるため、2011年1月に就任したジウマ大統領は、就任早々、砂糖とエネルギーというブラジル特有の課題について難しい調整が求められている。



【岡千晴 平成23年5月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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