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チョコレートと砂糖のおはなし

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最終更新日:2010年8月4日

チョコレートと砂糖のおはなし

2010年8月

日本チョコレート・ココア協会 専務理事 神永 健二

1.チョコレートの歴史と砂糖との出会い

 チョコレートの歴史は約4000年にも及び、コーヒーや紅茶が登場するはるか昔から人間の生活と密接な関わりを持っていた。
 
 チョコレートの主原料である「カカオ」のルーツはメソアメリカ(現在の中南米地域)であり、紀元前2000年頃からのマヤ文明やアステカ文明などの時代にカカオは食用以外にも様々な役割を担っていて、通貨や万能薬としても利用され、生活の中心的存在であった。
 
 最初、食用としてのカカオの役割は「飲むチョコレート」であった。すりつぶしたカカオ豆に水を加え、さらにトウモロコシの粉やトウガラシ、数種のバニラを混ぜて泡立てたもので、ドロドロしたスパイシーな飲み物であり、当時は「カカワトル」と呼ばれていた。
 
 このカカワトルは16世紀にスペイン人のコルテスによってアステカからスペインに持ち帰られ、その後ヨーロッパ各地に広がっていった。スペインでは飲み方がいろいろ工夫され、お湯で溶かして砂糖を加える「甘くて温かい飲み物」に変わっていった。こうしてチョコレートと砂糖のお付き合いが始まったのである。
 
 17世紀に入ると、徐々にスペインから国外にその製法が伝わり始め、イギリスやフランスにも伝わり、イギリスでは王侯貴族だけではなく、「チョコレートハウス」という専門のお店で一般庶民も飲むことができるようになった。
 
 その後19世紀に入ると、オランダ人バンホーテンによる低脂肪のココアパウダーなどの発明により一層おいしく飲めるココアが登場する。そして19世紀半ばイギリスの会社がカカオのペーストに砂糖を混ぜ、さらにココアバターを加えるなど配合を工夫することによって「食べるチョコレート」が誕生することとなった。
 
 一方、日本にチョコレートが伝わった時期は定かでないが、18世紀終わり頃ではないかと言われている。長崎の著名な遊女町であった丸山町・寄合町の記録によると、長崎で遊女がオランダ人より貰いうけ届け出た中に「しょくらあと 六つ」との記載がある。
 
 明治時代になると、海外からチョコレートが輸入されるようになるが、高価な贅沢品であり、庶民には高嶺の花であったようである。
 
 日本で初めてチョコレートを加工、製造、販売したのは、東京両国の?月堂と言われており、明治11年のことである。当時チョコレートは「猪口令糖」「貯古齢糖」などと漢字で表記されていた。
 
 その後チョコレートの一貫製造は、大正7年に森永製菓で開始され、次いで大正15年、明治製菓でも行なわれるようになった。
 

2.日本並びに世界におけるチョコレート事情

 チョコレートは、お菓子の分野にとどまらず多くの食品分野で活用されており、大変裾野が広いジャンルである。世界のチョコレートの需要を主原料のカカオ豆の磨砕量という形で見てみると、年々伸びてきている(図1)。ヨーロッパを中心とした本来の需要国に加え、新興国と言われる国においても需要が伸びてきており、これに対するカカオ豆の供給は少しずつ厳しくなってきている。
 
 
 
 
 一方、日本におけるチョコレートの需要を見てみると、ここ数年あまり大きな変化がないまま推移しており、国民一人当たりの消費量は年間約2.2キログラムとなっている(図2)。
 
 
 
 
 ドイツ、スイス、イギリス等欧州各国の消費量が国民一人当たり年間10キログラムを超えているのに比べると、かなり少ない数字である。その理由はいろいろあると思うが、一つは日本の食文化にあると思われる。日本では昔から和菓子、米菓など伝統的な菓子が多くあり、欧米に比べて西洋菓子の消費は少ないと推察される。また、欧米では食後のデザートとしてチョコレートケーキなど甘いものが良く食べられており、それも欧米の消費量が多い理由かと思われる。
 
 もうひとつの理由は日本人の嗜好にあるのではないだろうか。アメリカあたりでは良いチョコレートのイメージは「大きい、甘い」であるが、日本では「量はほどほどで甘さはやや控えめ、でもおしゃれに」というものが好まれる傾向にあるようである。
 
 また、海外のチョコレート製品をみると、大きな板状のチョコレートや一口サイズにしてもぎっしりチョコレートが詰まったものを思い浮かべるが、日本のチョコレート製品を見てみると、チョコレート生地だけでできているいわゆる「無垢チョコ」といわれるものは全体の30%弱の割合であり、残りの70%はビスケットやスナック菓子など他の素材と組み合わされた製品や、玩具等と組み合わせた製品などが占めている。
 
 さて、皆さんもご存じのことと思うが、数年前にいわゆる「ハイカカオブーム」というのがあった。2005〜2007年頃「カカオ分70%」、「カカオ分85%」などカカオ分の割合を多くしたチョコレートが流行った。これはカカオに含まれる「カカオポリフェノール」が、いろいろな病気の原因になる「活性酸素」の働きを抑制するなど健康に良いという業界の地道な普及広報活動が実を結ぶ形となったが、現在は落ち着いた状況となっている。
 

3.チョコレートにおける砂糖とは

 砂糖の用途別消費動向を見てみると、菓子の割合が一番高く、全体の26%にも及ぶ。そうした中でチョコレートと砂糖の関係も非常に深く、ほとんどのチョコレート製品では、原材料の中で砂糖が一番大きなウェイトを占めている。また多種多様な甘味料の中で、砂糖は非常にチョコレートにマッチした甘味料であると言われている。
 
 チョコレートに使われる砂糖は、メーカーの方針などにより様々であり、てん菜糖と甘しゃ(さとうきび)糖の両方を使っているケースや、加糖ココア調製品等を加えることにより、甘しゃ(さとうきび)糖を主に使っているケースなどいろいろあるようである。いずれにしても自社のチョコレートの味に最適な砂糖を選択しているといえる。
 
 さて、日本チョコレート・ココア協会では、チョコレートやココア、また原料のカカオの持つ栄養や機能について学術的な研究発表の場を設けている。それが1995年からスタートしている「チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム」である。このシンポジウムでは、カカオポリフェノールの持つ医学的な効果や、チョコレート・ココアの持つ心地よい味や香りの機能などについて、大学や研究機関の方に研究発表をいただいている。
 
 一方、チョコレートの主要な原料の一つである砂糖の機能についても合わせて研究発表が行われており、英国ウェールズ・スウォンジー大学のデビッド・ベントン教授の発表によると、脳では糖がエネルギー源となり、数々の実験を通して糖が記憶力、認識能力、思考力などの維持・活性化に大きな役割を担っていると指摘している。
 
 また「チョコレートを食べると太る?」といった誤解を解く発表も行われている。
昭和女子大学大学院の木村修一特任教授の発表によると、摂取するトータルカロリーを同じにした条件下では、対照の食品成分をチョコレート成分に置き換えても体重増加や体脂肪の蓄積にほとんど影響しないことが確認された。すなわち、チョコレートの成分の中に特に肥満を起こす物質があるとはいえないと結論づけ、肥満の要因は消費エネルギーより摂取エネルギーが高いというエネルギーバランスの問題が大きいと指摘している。
 
 優れた栄養素を持つカカオのパートナーとして、砂糖は不可欠なものである。
 
 今後もこうした活動によって、チョコレートや砂糖の正しい知識が普及し、誤解が払拭されていくことを期待したい。
 
 

【参考文献】

「チョコレートの事典」成美堂出版(2004年)
「日本都市生活史料集成 第七巻 港町編U」学習研究社
「精糖工業会資料」
「チョコレート・ココア国際栄養シンポジウム講演集Vol. 2,3」日本チョコレート・ココア協会
 
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