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黒糖の表示の適正化について

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最終更新日:2011年5月6日

黒糖の表示の適正化について

2011年5月

消費者庁食品表示課 課長補佐 中村 祥典

はじめに

 消費者庁は、平成21年9月の発足に伴い、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に基づく表示基準の企画立案を担当することになり、農林水産省からの引き継ぎを受け、黒糖の表示の適正化を進めて参りました。今回は、本年3月に行った黒砂糖の定義の明確化及び「黒糖及び黒糖加工品」の原料原産地表示の義務化を中心に、これまでの取り組みを紹介します。

1.黒糖の定義の明確化:平成22年3月公表

 「黒糖」、「黒砂糖」の名称で流通している砂糖には、さとうきびの搾り汁を分離加工せずにそのまま煮固めたものと、「黒糖」、「粗糖」や「糖みつ」など様々な原料を使用して作られたものが販売されている実態があったことから、まず、平成22年3月に、農林水産省の取り組み結果を踏まえて、JAS法の解釈通知である「食品表示に関するQ&A」において「黒糖とは、さとうきびを搾ってそのまま固めたもの」である見解を公表し、それ以外のものは「黒糖」と表示することができないことを明らかにしました。

2.加工黒糖の表示区分の明確化:平成22年11月公表

 「黒糖」と表示できない砂糖にも、原料として黒糖を使用しているものと使用していないものがあることから、平成22年11月に、JAS法の解釈通知である「食品表示に関するQ&A」において、黒糖を使用していないものは、名称として「加工黒糖」など「黒糖」の用語を使用できない見解を公表しました。

 この見解の公表により、外見上区別できない、黒糖、黒糖が入っている砂糖、黒糖が入っていない砂糖の表示区分が明確となり、「○○黒糖」と記載できるものは、黒糖(さとうきびの搾り汁を含む)が含まれるものに限られることを明らかにしました。

3.黒砂糖の定義の明確化:平成23年3月公表

 「黒砂糖」の名称で流通している砂糖には、「黒糖」と同じものと、「黒糖」とは異なる方法で製造されたものがあり、関係者の間で、意見が分かれているなど、「黒糖」と「黒砂糖」の見解が不明確となっていました。

 消費者庁では、消費者の誤認を防止する観点から、見解公表の必要性、見解とする黒砂糖の定義に関し、市販食品の表示実態調査と消費者の認識度調査を民間調査会社に委託するとともに、文献調査等を行って参りました。

 消費者の認識度調査の結果、黒糖と黒砂糖が同じものと考える消費者、別なものと考える消費者、分からないと答える消費者が、ほぼ3分の1ずつに分れていました。事業者が黒糖でない砂糖を「黒砂糖」と表示した際、「黒砂糖」表示を見て黒糖と期待して購入する消費者が3割以上いることが明らかになり、消費者にとって分かりやすい表示のルールが必要であると判断しました。
 
 
 市販食品の表示実態調査として、黒糖及び黒砂糖の用語を使用した商品の表示実態を把握するため、全国のデパート、スーパー、コンビニ等から黒糖53商品、加工黒糖及び再製糖73商品、黒糖及び黒砂糖を使用した菓子類200商品計326商品)を購入し、表示の実態を調査しました。外見上区別できない黒糖53商品、加工黒糖及び再製糖73商品の126商品では、一括表示の名称を「黒砂糖」としていた商品は10商品であり、このうち、黒糖と同一であったものは7商品、それ以外のもの(加工黒糖及び再製糖)が3商品であり、「黒砂糖」の用語が黒糖以外の砂糖の名称として使用されている例は極めて少ない結果でした。

(注:調査では、黒糖が入っていない砂糖を「再製糖」としています。)
 
 
 文献調査を行った結果、広辞苑(岩波書店)、大辞林(三省堂)、総合食品事典(同文書院)、簡明食辞林(樹村房)、食品工業総合辞典(光琳)、食材図典U(小学館)などの辞典・事典において、さとうきびの搾り汁をそのまま煮固めたものとして黒糖と黒砂糖を同じとする記載など同義とする事例が多数ありました。

 消費者庁では、これらの結果から、黒砂糖は黒糖と同義であるとの見解が適当であると判断し、平成23年3月30日JAS法の解釈通知である「食品表示に関するQ&A」を改正し、黒糖と黒砂糖は同義である旨を明確にしました。

 今回のQ&A改正による見解公表は、これまで不明確であった「黒砂糖」の定義を明確化し、表示の是正を進める目的であるため、現在、見解に沿わない商品があったとしても、JAS法違反に問われることはなく、周知期間中に事業者自らが表示の是正を行うよう周知啓発することにしました。

 このため、今後、一年程度の期間、改正の趣旨と内容を周知したうえで、内容と表示が不一致なものについては、是正処置をとることとし、その旨各都道府県JAS担当部局に文書通知しました。

 消費者庁の見解公表を受けて、加工黒糖や黒糖が入っていない「黒砂糖」を製造している事業者の団体では、新たな名称を「赤糖」と定め、取引先等関係者に周知しています。

4.黒糖及び黒糖加工品の原料原産地表示義務化:平成23年3月告示

 平成22年11月に、原料原産地表示の義務付け対象となる加工食品に「黒糖及び黒糖加工品」と「こんぶ巻」を追加することについて、JAS法に基づき原料原産地表示の義務化を規定している加工食品品質表示基準の改正案を消費者委員会に諮問し、消費者委員会食品表示部会における審議を経て、平成23年3月31日に同基準の改正を告示しました。

 黒糖及び黒糖加工品の原料原産地表示の移行期間については、消費者及び製造者等への周知徹底、新たなルールへの適切な対応のため、2年間の移行期間後、平成25年4月1日から完全実施することとしています。
 
 
 原料原産地表示の対象となる黒糖は、国産黒糖であり、輸入黒糖は原産国を記載することになっています。黒糖加工品については、製品の原材料に占める黒糖の重量の割合が50%以上の国産品が対象となります。具体的には黒糖に水などを混合した「黒糖みつ」や水あめ、塩、しょうがなどを混合した「黒糖菓子」などが該当します。一方、製品の原材料のうち、黒糖の重量の割合が50%未満である黒糖パン及び黒糖かりんとうなどは、対象に含まれません。

 黒糖及び黒糖加工品で原産地を表示すべき「原材料」とは、さとうきびであるため、さとうきびから製造した製品では原材料名欄に「さとうきび(○○産)」などと表示します。「○○産」は、さとうきびの産地として、国産さとうきびなら「国産」又は都道府県名その他一般に知られている地名、輸入さとうきびなら原産国名になります。

 他方、黒糖を原材料として製造した黒糖加工品の場合、基本的に原材料名欄に「黒糖(さとうきび(○○産))」と表示することが基本ですが、表示が煩雑で見にくくなることを考慮し、さとうきびの産地と黒糖の製造地が同一の場合に限り、「黒糖(○○産)」のように表示することも可能です。

 消費者庁では、「加工食品品質表示基準改正(原料原産地表示等)に関するQ&A」を改正し、検討の経緯、表示の考え方などを消費者庁ホームページで公表していますので、関係事業者の方はご確認くださるようお願いいたします。
 
 

おわりに

 消費者庁では、今後も表示ルールの周知や適正表示に関する相談対応など執行の立場から黒糖等の表示の適正化を進めて参ります。筆者は、事業者が「黒糖」、「加工黒糖」や「赤糖」などの各商品の特長を活かしつつ、商品に適切な表示を行うことが、消費者の誤認しない商品選択となり、当該商品の信頼向上と消費拡大につながるものと考えています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713