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宮古地域におけるさとうきび栽培の現状と機械化栽培体系の推進について

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最終更新日:2013年12月10日

宮古地域におけるさとうきび栽培の現状と機械化栽培体系の推進について

2013年12月

沖縄県農林水産部 宮古農林水産振興センター
 農業改良普及課 友利 研一

【要約】

 沖縄県宮古地域は、さとうきび収穫面積が4,705ヘクタール(平成24/25年期)で、年間生産量は約30万トンで推移しており、県内一のさとうきび生産地である。当地域の作型は、夏植え72.6パーセント、春植え8.0パーセント、株出し19.4パーセントであり、夏植え中心の栽培体系となっている(平成24/25年期)。近年は、誘殺灯の設置や土壌害虫防除に効果的な農薬の普及などにより、土壌害虫被害の低減が図られつつあることから、株出し栽培が可能となり、株出し栽培面積が急速に拡大しているところである。機械化栽培体系の推進に向け、ハーベスタおよび株出し管理機の効率的な運用により生産および栽培管理体制を強化すると共に、早期株出し管理作業の普及に向けて取り組む必要がある。

はじめに

 沖縄県宮古地域の全農家戸数は4,958戸で、うちさとうきび農家戸数は4,825戸で97パーセントを占める。当地域はさとうきび収穫面積が約4,000ヘクタール、生産量が約30万トンで推移しており、県内のさとうきび生産量の約40パーセントを占める地域である(図1)。
 図1
 近年は平均単収の向上などにより、平成22年産までは3年連続で生産量30万トンを超える増産傾向であったが、平成23年産においては、台風の影響を大きく受け、戦後最低の生産量となった。平成24年産は、9月に台風の襲来があったものの、その後生育は回復し、32万5000トンの生産量を上げ、平均単収も10アール当たり6.9トンと生産回復の兆しをみせている(図2)。

 当地域の作型は、夏植え72.6パーセント(3,417ha)、春植え8.0パーセント(374ha)、株出し19.4パーセント(917ha)であり、夏植え中心の栽培体系となっている(平成24/25年期)。昭和54年頃までは、株出し栽培が50パーセント程度を占める地域であったが、有機塩素系農剤の使用禁止により土壌害虫がまん延し、不萌芽が発生したことから株出しが減少し、夏植え中心の体系へと変化していった(図3)。
 図2、3

1.さとうきび栽培の現状と課題

 当地域において春植え・株出しが普及しなかったのは、ハリガネムシ、アオドウガネなど土壌害虫による株出し不萌芽などの問題や、収穫時期における春植えの植え付けや株出し管理作業との重複、台風や干ばつの影響を受けやすく生産性が低いなどが要因として挙げられる。しかしながら、近年は、誘殺灯(注1)の設置によるアオドウガネ防除(写真1)や、土壌害虫防除に効果的な農薬(プリンスベイト剤:平成22年時点で夏植え面積の約7割で使用されていると試算)の普及などによるハリガネムシの防除などにより、土壌害虫被害の低減が図られつつある(図4)。また、ミヤコケブカアカチャコガネやメイチュウ類の防除については、堀取り調査や交信かく乱法(注2)の実証試験(写真2)を沖縄県農業研究センターを中心に実施しているところである。関係機関によるこれらの取り組みの結果、株出し栽培が可能となり、急速に株出し栽培面積が拡大している(図5)。平成25/26年期の宮古島における株出し栽培面積は全栽培面積の38パーセント(1,386ha)となる見込みである。

(注1)誘殺灯
特殊な光によりアオドウガネを引き寄せ駆除する器具
(注2)交信かく乱法
雌のフェロモンを発する特殊なチューブ(フェロモンチューブ)をほ場に設置し、ほ場にフェロモンを充満させ交尾をかく乱する方法
 写真1,2、図4、5
 当地域における株出し栽培の課題および問題点は、 1)収穫後の萌芽状況を確認してから株出し栽培を始める農家が多いため、初期管理が遅れがちである 2)株出し管理機などによる早期株出し管理作業の増収・増益効果について疑問を抱く農家がいる 3)増収のためではなく、労働力削減を期待して株出し栽培を始める農家も多い 4)夏植え用の苗が足りない場合、株出し栽培をあきらめて苗に使用してしまう 5)管理不足による雑草繁茂により機械収穫ができない−などの事例が見られる(写真3)。それらの解決に向けては、農家へ早期株出し管理作業の効果、株出し管理機などによる管理作業のメリットなどについて、改めて周知するとともに、これらの作業を確実に実践していく必要がある。早期管理により台風や干ばつに遭遇する夏季までに植物体を大きくし、夏植え同様、気象災害を最小限にすることで生産の安定および向上が期待できる。また、近年、当地域は品種構成が大きく変化しており、農林15号、宮古1号が減少傾向、農林21号、農林27号が増加傾向にある(図6)。株出し栽培においては農林27号が43パーセント、農林21号が15.1パーセントであり、品種構成に偏りがある。当地域の株出し栽培(春植え後の株出しおよび夏植え後の株出し)に適した品種の開発は重要な課題であり、地域農家からの要望も高い。これらの解決に向け、品種別の栽培管理技術の確立、展示ほ設置などによる早期株出し管理作業の効果実証、栽培講習会などによる普及啓発など、生産農家および関係機関と連携して取り組む必要がある。
 写真3
 図6

2.機械化に向けての現状と課題

 当地域におけるさとうきびの収穫作業は、手刈りによる収穫が多く、ハーベスタによる収穫面積は、平成22年産で1,097ヘクタールであり、全収穫面積の28.7パーセントであった。県平均のハーベスタ収穫率44.8パーセントと比較すると低く、機械化が遅れている状況にあった。しかし、平成24年産においては気象条件にも恵まれ、ハーベスタ収穫率は49.4パーセント(県平均55%)となり大幅に上昇した(図7)。平成元年にハーベスタが導入されて以来、現在まで合計76台が導入されており、平成24/25年期は合計65台(大型3台、中型29台、小型33台)が稼働している状況である(表1)。今後、宮古島市の計画においては、平成27年度までに機械収穫率を県平均まで引き上げることを目標に、10台/年の導入を計画している(平成25年度:10台導入予定)。また、株出し面積が拡大する中、補助事業などの活用により株出し管理機の導入も進められている。平成24年度には宮古地域(多良間島、伊良部島含む)に30台の株出し管理機が導入され、平成16年以来累計で60台導入されており、その有効かつ効率的な利用が求められている(表2)。宮古島においては、株出し管理機50台で全株出し面積の60パーセントを網羅できるとの試算(JAさとうきび対策室)もあり、引き続き補助事業などの活用により、株出し管理機の導入が必要であると考えられている。
 図7
 

3.課題解決に向けて

 現在、宮古島市における65歳以上の農業就業人口は3,852人である。高齢化率は64.4パーセントと、高齢化が進行する中、年々、ハーベスタの受託件数が増加している状況である(農家利用率50.9%)。さとうきび農家の高齢化により労働力が低下する中、さとうきびの生産振興を図るためには、ハーベスタを加速的に整備して収穫作業の機械化を図るとともに、春植え株出し栽培体系の確立により、1年1作による土地利用効率を向上させていくことが重要である。特に、株出し栽培が急速に拡大している現状において、地域全体として株出し栽培の単収向上を図るため、早期株出し管理作業が実施できる体制の確立が急務である。

 本年、農業機械受託作業の効率的な実施とオペレータの育成・確保を図るため、JAが主体となって「宮古地区さとうきび管理組合」が設立された。製糖期の1〜3月は、収穫や春植え作業と株出し管理作業が重なるため、機械やオペレータを調整し、効率的に作業を実施することが求められている。また、急速な機械の導入と農作業委託の増加により、オペレータの確保と技能向上が急務となっている。同組合の設立により、効率的な作業の実施やオペレータの育成・確保が進むものと期待されている。さらに、関係機関との連携を強化し、早期株出し管理作業の普及と単収向上に向けて取り組む必要がある。

 当センターとしては、普及現場において、集落の農家リーダーや農業機械オペレータに対して、機械化を前提とした植え付けや株出し管理作業の重要性および効率的な実施体制の強化に向けた内容の講習会などを開催し、地域全体または集落単位における株出し栽培の単収向上につながるよう支援していきたい。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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