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韓国の砂糖をめぐる情勢〜産業としての生き残りの岐路に立つ〜

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最終更新日:2014年8月11日

韓国の砂糖をめぐる情勢〜産業としての生き残りの岐路に立つ〜

2014年8月

調査情報部(現 畜産経営対策部) 植田 彩
              調査情報部   宗政修平

【要約】

 韓国では、国内でてん菜およびサトウキビの生産は行われておらず、輸入原料糖から精製される砂糖でほとんどの国内消費が賄われている。近年、国内消費が伸び悩む中、砂糖企業は消費者ニーズに合わせた商品開発を行っており、砂糖消費減退の食い止めに努力している。一方、同国では輸入自由化が進展しており、白糖(日本でいう精製糖)の関税が撤廃もしくはさらに低関税となれば、安価な外国産との競争が激化することが懸念される。

はじめに

 韓国では、国内にてん菜およびサトウキビ(以下「甘味資源作物」という)の生産基盤を持たないことから、輸入原料糖による砂糖生産が行われており、生産される砂糖のうち約4分の3は、国内で消費され、残り約4分の1が中国などに輸出されている。近年、国内の砂糖消費が伸び悩む中、韓国の砂糖企業は、その需要を維持していくために、消費者ニーズに合わせた商品開発や海外展開も視野に入れた取り組みを行っている。

 本稿は、本年4月の職員調査に基づく韓国の砂糖産業についての報告である。

 なお、1ウォン=0.1022円、1米ドル=102円(2014年6月末日TTS相場)を使用した。

1. 砂糖の生産動向

(1)輸入原料糖の調達先

 韓国では、甘味資源作物が国内で生産されていないため、国内で生産される砂糖の全ては輸入原料糖(糖度98.5度を超えるもの)を精製したものである。2013年の原料糖輸入量は、豪州産が82万3700トン(前年比12.9%減)と最も多く、次いでタイ産が37万8100トン(同1.5%減)、グアテマラ産が24万3700トン(同35.3%増)と続き、全体で156万8600トン(同3.8%減)となっている(図1)。2008年以降の原料糖輸入量は、155万〜165万トン台で推移しているが、2011年は輸入量の過半を占めていた豪州が、大雨やサイクロンによるサトウキビの減産により、同35.9%減と大幅に減少した。その一方で、同年のタイからの輸入量は同約6倍と大幅増となり、以後、輸入に占めるタイ産の割合は一定水準を確保している。
 

(2)韓国砂糖企業の概要

 韓国の砂糖企業は、1953年に国内初となるCJ第一製糖が設立され、その後、1955年に三養社、1956年に大韓製糖が相次いで設立された。この3社に続いて、東洋製糖、金星製糖、韓国製糖、ヘテ製菓(製糖部)なども設立されたが、現在では最初の3社のみが存続している。砂糖企業の業界団体である大韓製糖協会によると、2012年の企業別の年間生産能力は、CJ第一製糖が52万1000トン、三養社が47万8000トン、大韓製糖が44万9000トンとなり、3社合計で144万8000トンである。同国の砂糖生産額は現在1兆ウォン(1022億円)を超える規模となっているが、国内市場は既に飽和状態にあることから、同国の砂糖企業は消費者ニーズに合わせたさまざまな商品を開発することで、砂糖消費減退の食い止めに努力している。

 韓国初の砂糖企業であるCJ第一製糖は、1962年に韓国で初めて砂糖輸出を手掛けた企業でもある。国内では「白雪」ブランドの製品を販売しており、家庭用向けシェアでは3社の中でトップである。商品開発力も高く、砂糖の甘さはそのままで、体内に吸収される糖分を減らした商品として、白糖にキシロース成分を入れた「白雪キシロース」を2011年6月に販売した。その他、オーガニック砂糖や、代替甘味料としてタガトース(注1)を製品化するなど商品アイテム数が多いのが特徴である。一方、三養社は「Q1(キューワン)」、大韓製糖は「フードリーム」というブランドで製品を販売し、国内の市場をこれら3社で独占している。

 なお、砂糖の製造コストについて、今回の調査では把握できなかったが、2011年の公表卸売価格である1キログラム当たり1128ウォン(115円)と、2011年の原料コストである原料糖(注2)同0.68米ドル(69円)および現行輸入関税3%(2円)から試算すれば、製造・流通・販売経費は収益分を加味して同44円(115円―(69円+2円))となる。

(注1)CJ第一製糖のホームページには「タガトースとは、もともと牛乳、チーズ、りんごなどにわずかに存在する甘い味のことで、自然由来の機能性素材。糖分や炭水化物の豊富な食べ物から糖分の吸収を抑制しており、砂糖の味と似ているので甘い味を存分に楽しみながら血糖調節にも役立つというメリットがある」と掲載されている。
(注2)HSコード1701.11.2000の輸入価格(CIF価格)

(3)韓国の砂糖生産量

 2011年の韓国の砂糖生産量は141万4000トン(前年比0.4%減)と前年から微減したものの、2008年以降は140万トン前後で推移している(図2)。砂糖生産額は、2008年以降、国際砂糖相場の高騰に伴い販売価格が上昇したことで伸長しており、2011年には1兆2760億ウォン(同18.4%高、1304億円)に達した。
 
 同国で生産される砂糖の規格は白糖(日本でいう精製糖。以下同じ。)、ブラウンシュガー、その他の砂糖に区分されており(表1)、2011年の生産量は白糖が128万2000トン(前年比0.7%減)、ブラウンシュガーが10万1000トン(同1.9%減)となった。白糖、ブラウンシュガーともに生産量に若干の増減はあるものの、砂糖生産量に占める割合は白糖が全体の90%、ブラウンシュガーが同7〜8%となっている(図3)。
 
 

2. 砂糖の国内消費

(1)砂糖消費量

 2011年の韓国の砂糖消費量は、120万8100トン(前年比9.2%減)と前年から減少しているものの、近年は110万〜130万トンで推移している(図4)。2011年の減少の要因は、砂糖企業3社が、それまで消費者物価の上昇などを考慮して値上げを抑制していたところ、国際砂糖相場の高騰による輸入原料糖の調達価格上昇圧力に耐えきれなくなり、一転して、2010年8月、12月、2011年3月と段階的に平均小売価格を引き上げたことによる(図5)。

 砂糖企業および異性化糖企業によると、甘味料の大手ユーザーである飲料、製菓・製パン、乳製品メーカーなどは、製品に使用する甘味料のこだわりは希薄で、その選択動機として価格が優先されるとのことである。

 現在、砂糖と異性化糖(砂糖換算)の価格を比較すると、砂糖は異性化糖に比べて3〜5%安となっていることから、大手ユーザーは砂糖を使用する割合が高くなっているとのことである。
 
 

(2)砂糖の用途および流通形態

 韓国の砂糖は、飲料、製菓・製パン、乳製品などの原料および外食産業向けに需要量全体の85%、一般消費者向け(小売)に残りの15%が仕向けられている。

 食品製造企業は砂糖企業から砂糖を直接購入することが多い一方で、外食産業は卸売業者から砂糖(15キログラム袋)を購入することが多い。また、一般消費者は、量販店などで購入するのが一般的である。量販店(大型ディスカウントストア、スーパー・スーパーマーケット(SSM))で販売される砂糖は、2012年で一般消費者向けの67%を占めるまでになっている(図6)。量販店については、これまで卸売業者を通じて砂糖を仕入れていたが、最近では大型ディスカウントストアや従来型よりも大規模なSSMなどが進出してきたことで、卸売業者を介さず、砂糖企業からの直販により購入するケースが増加している。

 なお、一般消費者は、300グラムもしくは500グラム入りの砂糖を1〜2カ月に一度購入している。また、毎年4〜6月に家庭で果実酒、果実ジュース、果実の砂糖漬けを作る習慣があることから、その時期は2キログラム入り白糖を購入することが多い。
 
 

(3)消費者ニーズの変化とその対応

 2011年の年間一人当たり砂糖消費量は24.3キログラムとなっており、韓国栄養学会が定める「成人の場合、一日当たり50〜100グラムが適正な糖分摂取量」の範囲内ではあるが、2005年以降で最低水準となった。砂糖の消費拡大は 1970〜80年代に推進されていたが、現在、砂糖消費は飽和状態にあるとして、国や業界団体による取り組みは行われていない。消費が伸び悩む中、近年、製糖企業各社は、消費者の健康への意識の高まりを背景に、機能性に着目した商品開発を行っている。中でも前述したキシロースとタガトースを配合した商品の人気が高まっている。キシロースは、砂糖の甘みをそのまま維持し、体に吸収される糖分を減らすとされており、タガトースは、血糖量の値調節に役立つ機能を有するとされている。

 さらに、砂糖を原料とした化粧品なども販売され、食品以外への用途も広がっている。例えば、2004年に開発された含蜜糖を原料とした化粧品は、2006年下半期に国内で爆発的に売れ、現在でも百貨店や小売店のほかオンラインショップでも人気商品として扱われている。その他、砂糖に含まれる成分が肌の角質を除去するとして、多種多様なスクラブ剤(洗顔料)が開発されている。

3. 輸出入の動向

(1)砂糖の輸出動向

 国内で生産された白糖の約4分の1は輸出に向けられており、主な輸出先国は中国、香港である(図7)。2013年輸出量は34万トン(前年比5.5%減)で、このうち、中国が21万8000トン(同3.4%増)、香港が9万7000トン(同1.8%減)、インドネシアが7000トン(同7.1%増)となっている。

 砂糖企業によると、中国では原料規格が厳しい外国資本の清涼飲料向けや粉乳調製品、製パン・製菓向けの砂糖需要が伸びており、これら製品の原料としてタイ産などよりも品質が高いと評価される韓国産の需要が高まっていることで、近年、中国向けの輸出量は堅調に増加しているという。また、価格もプレミアを乗せて販売できるため、収益性は高いとのことである。

 韓国から日本向けに白糖は直接的に輸出されてはいないが、主に中国から日本向けに輸出されている小豆に砂糖を加えて調製した豆(加糖あん)の原料に、韓国産の白糖が使用されているとのことである。また、ココア、粉乳、ソルビトールなどに砂糖を加えた加糖調製品についても日本向け輸出がされている。砂糖企業は、今後も加糖調製品の輸出拡大を期待しているが、ウォン高の影響などにより、輸出は鈍化しているとのことである。
 

(2)砂糖の輸入動向

 白糖の輸入について、2008年以降で見ると、2012年までは2〜4万トン台で推移していたが、2013年は前年の3倍となる14万4000トンに達した。国別は、マレーシアが6万2000トン(前年比185.8%増)、タイが3万9000トン(同159.5%増)、アラブ首長国連邦が3万1000トン(同531倍)と主要相手国が軒並み増加している(図8)。

 この急増の背景には白糖の関税割当の対象用途の緩和がある。輸入が急増する前年で試算すると、タイ産白糖の卸売価格は、輸入白糖(HSコード1701.99.0000)価格(CIF価格)に30%の関税を加え、1キログラム当たり1018ウォン(104円)となる。一方、韓国産の卸売価格は同1128ウォン(115円)で輸入白糖の価格優位性はほとんどない。こうした中、韓国政府は、高騰が続く物価を安定させるため、食品加工向けに用途制限していた白糖の関税割当を2012年に制限をなくし、同年7月から翌年6月末まで30万トン(無税)、2013年は7月から12月末まで5万トン(関税5%)を割り当てた(表2)。

 関税割当業務を担う韓国農水産食品流通公社(aTセンター)によると、2014年は1月から6月末まで4万トン(関税5%)が割り当てられていたが、すでに割当数量の上限まで輸入量が達していることからも、現在でも安価な砂糖に対する需要が根強いことがうかがえる。
 
 

(3)白糖の関税引き下げに向けた対応

 白糖の関税をめぐっては、韓国企画財政部が、消費者の安価な砂糖に対する需要が根強いことを理由に、関税引き下げを継続的に提起している。これに対し、韓国農林畜産食品部および砂糖業界では、産業の保護を強調しており、現在でも両者の議論の決着はついていない。このため、白糖の無税または低関税の関税割当が今後も設定されるかについては、不透明な状況となっている。

 また、同国では、2014年4月に韓豪FTA(自由貿易協定)に署名しており、輸入原料糖の関税3%は即時撤廃するものの、産業保護のために白糖の関税は段階的に削減、かつ、セーフガード措置されることとなっている(表3)。関税撤廃は協定発効後19年目であることや、豪州が白糖の主要生産国ではないことから、砂糖企業は現時点では特に対応している状況にはないものの、今後の懸念材料と受けて止めている。
 

おわりに

 現在の砂糖企業は、砂糖消費が鈍化する中で、消費者ニーズに合わせた新商品の開発や国内余剰分を近隣国へ輸出することにより、需要を確保しながら一定の生産規模を維持してきた。

 最大の輸出先である中国の砂糖消費量は、今後も増加していくと考えられており、地理的に近い韓国産への需要は、高まっていくとみられる。しかし、中国側の、特に新規顧客は、韓国の国内販売価格を下回る水準を要求するため、韓国の砂糖企業は中国向け輸出の拡大には消極的である。

 しかし、国内の市場の拡大が見込めないことは、この先に待ち受けている自由化の進展による安価な外国産との競争が懸念されることを考え合わせると、韓国砂糖業界は、安定した価格で販売できる輸出先を獲得する必要がある。

 こうした中、2013年4月、大韓製糖は、香港および日本企業との合弁により、中国で砂糖加工品の工場を設立すると発表した。同社は、今年中の稼働を目指しており、韓国砂糖産業の海外展開へ向けた動きが始まっていることも確かである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713