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〜平成26年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会報告〜

さとうきび生産における担い手育成の取り組み
〜平成26年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会報告〜

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最終更新日:2015年1月9日

さとうきび生産における担い手育成の取り組み
〜平成26年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会報告〜

2015年1月

調査情報部

【要約】

 平成26年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会では、さとうきび生産における担い手育成をテーマに、鹿児島県と沖縄県の生産者代表や行政関係者などによるパネルディスカッションが実施された。パネリストからは、地域の実情を踏まえて受託組織の作業の効率化や、遊休農地の解消に向けて農地集積に努める事例などが紹介され、会場の参加者を含めて活発な意見交換が行われた。

はじめに

 当機構は毎年度、鹿児島県と沖縄県の基幹作物であるさとうきびをめぐる課題の解決に向けた、関係者の意見交換と具体的方策の検討を目的に、さとうきび・甘蔗糖関係検討会を開催している。

 第13回目となる今年度は、「さとうきび生産における担い手育成の取り組み」をテーマに、鹿児島県と沖縄県のさとうきび生産者、製糖事業者、さとうきび関係団体、甘蔗糖関係団体、行政関係者など約250名の参加を得て、10月8、9日に、当機構鹿児島事務所の主催により、鹿児島県大島郡徳之島町で開催した。

 初日は、宇都宮大学農学部の神代英昭准教授による基調講演の後、「さとうきび生産における担い手育成の取り組み」をテーマにパネルディスカッションを行い、課題解決に向けて意見交換を行った。この他、農林水産省生産局農産部地域作物課から砂糖をめぐる現状と課題について、当機構那覇事務所から品目別経営安定対策の取り組みについて、それぞれ報告した。また、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターなどの研究機関からは、さとうきび育種に関する研究成果を発表した。

 2日目は、南西糖業株式会社徳和瀬工場・伊仙工場、鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場、さとうきび生産者など、鹿児島県で最大のさとうきび栽培面積を有する徳之島のさとうきび生産現場や試験研究機関などを視察した。

 本稿では、パネルディスカッションの内容を基に、さとうきび生産における担い手育成の取り組み状況を報告する。

1. さとうきびの生産構造

 さとうきびの生産構造は、収穫面積が1ヘクタール未満の生産者が全体の約7割を占める中(図1)、生産者数の減少と農業従事者の高齢化が進行するなど(図2)、極めて脆弱となっている。
 
 このような中、農業従事者の高齢化などにより、栽培の機械化が急速に進み、受託組織の作業量が大幅に増加した結果、管理作業の遅れやオペレーター不足などの問題が発生しており、受託組織ではさらなる作業の効率化が求められている。また、高齢化による離農者の増加に伴い、遊休農地が増加しており、その解消に向けた担い手などへの農地の集積が課題となっている。

 これらを踏まえ、本検討会では、受託組織の作業の効率化と遊休農地の解消に向けた農地の集積を中心に、基調講演やパネルディスカッションでの意見交換を行った。

2. 各地域における担い手育成の現状と課題

(1)徳之島における作業受委託の課題
〜基調講演から〜

 神代准教授の基調講演は、「徳之島におけるさとうきび生産と作業受委託の効率化・安定化に向けて」と題して行われた。神代准教授と当機構は、平成23〜25年度の3年間、徳之島島内の生産者と受託組織を対象にしたアンケート調査などにより、作業受委託の課題などについて調査を行っており、本講演は3年間の調査結果を総括したものである(注)

 神代准教授は、徳之島の作業受委託の課題として、第一に、作業料金にほ場条件が反映されていない点を挙げた。徳之島では、10アール当たりの収穫量に応じてJAが4段階(A〜Dランク)の作業料金を設定しているが、多くの受託組織では実際の収穫量によらず、AまたはBランクの安価な作業料金を採用していた。神代准教授は、これが受託組織の経営効率性の悪化につながっていると指摘し、解決に向けては、個別の受託組織だけではなく、行政やJAなど島全体での対応を求めた。

 第二に、作業受委託が地縁や血縁など人間関係を中心に硬直化しているため、受託ほ場が分散している点を挙げた。長期的には、地理条件を加味した地区担当制などの導入により受託ほ場の集約化を図り、作業の効率を高める必要があると指摘した。

(注)各年度の調査報告は、「砂糖類情報」2012.7月号砂糖類・でん粉情報」2013.6月号砂糖類・でん粉情報」2013.6月号「および「砂糖類・でん粉情報」2014.7月号を参照されたい。
 

(2)生産者の取り組み
〜パネリストの報告から〜

 パネルディスカッションでは、各地域のさとうきび生産者4名、行政関係者2名、糖業関係者2名の計8名のパネリスト(表1)が、担い手育成に向けた取り組みについて、それぞれの立場から報告した。

 鹿児島県農政部農産園芸課の中島主幹からは、営農組織の育成状況など、鹿児島県における担い手育成の取り組みについて、公益社団法人沖縄県糖業振興協会の島尻専務理事からは、農地中間管理事業を活用した久米島町仲里地区の取り組みについて、南西糖業の富本次長からは、さとうきび農業の振興を図るために、若手生産者で結成された「徳之島サトウキビ新ジャンプ会」の取り組みについて、宮古製糖の砂川課長からは、宮古島におけるさとうきびの現状と対策などについて、それぞれ報告が行われた。

 ここでは、各地域の生産者からの報告を基に、各生産者の作業受託などの取り組みについて紹介する。
 
 
ア. 組織化による作業受託の取り組み
  〜種子島 砂坂浩一郎さん〜

 砂坂さんは、公益財団法人種子島農業公社から収穫作業を個人で受託していたが、自身が住む砂坂集落からの依頼が増加したため、平成20年、「砂坂地区さとうきび生産組合」を立ち上げた。現在は、構成員12名で収穫作業の他、株出し、株揃えなどの管理作業を組織として受託しており、集落内からの依頼にほぼ対応できている。

 収穫作業は砂坂さんを中心に2〜3名が、管理作業はその他の構成員が行っている。作業に不慣れなど、一人での作業が困難な構成員には、補助員を付けるなどのサポート体制を整備している。

 砂坂さんは、同組合の課題として、第一に、構成員の高齢化を挙げた。同組合では、構成員のうち8名が60〜70代と高齢化が進んでおり、今後、新たな担い手が確保できなければ、人手不足に陥る恐れがあるという。

 第二に、収穫期の人員確保を挙げた。さとうきびの収穫は、かんしょの作付けや田植えと作業時期が重なるため、構成員が受託作業のための時間を確保できず、適期の管理が難しいという。

 砂坂さんは「さとうきびはもうからないため、担い手の確保が難しい」と話し、自身の経営では、収益向上のために法人化も見据えながら機械化を進め、規模拡大を図っていきたいと考えている。
 
イ. 集落営農と単収向上に向けた取り組み
  〜沖永良部島 瀬川静一郎さん〜

 瀬川さんは平成4年、自身が住む瀬名集落に「瀬名さとうきび生産組合」を立ち上げ、ハーベスタによる収穫作業の受託を開始した。さらに、集落内の生産者で調苗班2班、植え付け班1班、収穫班1班を編成し、役割分担をして作業を行う体制を構築し、30ヘクタールのほ場で集落営農を実践している。生産者の高齢化が進んでいるが、役割分担することにより効率的な作業を可能としている。

 瀬川さんは、「収益の確保のためには、単収の向上が必要である」と考え、19年に、生産性の向上に向けて、集落内のさとうきび生産者で「瀬名糖家会(せなさたやかい)」を設立した。勉強会を開催するなど、さまざまな取り組みを行った結果、和泊町で最も低かった瀬名集落の単収が、現在では、町内で上位になるまでに向上した。さらに、26年には、瀬名糖家会の取り組みを拡大し、「明日創りきび作り研究会」を設立し、若い担い手が実践可能な災害に強いさとうきび生産のあり方を模索するなど、精力的に活動している。
 
ウ. 農業生産法人による作業受託の取り組み
  〜沖縄本島南部 新垣智也さん〜

 新垣さんが代表を務める農業生産法人有限会社大農ファームは、平成13年に機械銀行を前身として設立された。自作地でさとうきびと野菜を栽培するほか、収穫作業、耕起・整地、植え付け、培土作業などを受託している。従業員3名のうち2名がオペレーターとして受託作業を行っている。この他、受託作業の受け付けなどを行う事務員1名と、収穫時にオペレーター2名を臨時で雇用している。

 新垣さんは、「収穫後の株出し管理作業の受託を進め、株出し管理を早期に行うことにより地域の単収向上を図りたい」と話す。一方で、受託作業を優先すると、自作地の春植えの植え付けが4月後半まで遅れるため、自作地の単収が低いことが課題となっている。その対応として、春植えから段階的に夏植えに移行し、作業を分散したいと考えている。また、土壌改良のために、さとうきびとオクラなどの野菜の輪作にも取り組んでいる。さらに、「今後は、農地の集積や、新規就農者やオペレーターの育成に取り組んでいきたい」と話す。
 
エ. 石垣島における作業受委託の取り組み
  〜石垣島 次呂久栄重さん〜

 次呂久さんからは、石垣島における作業受委託体制が報告された。石垣島では、JAおきなわ八重山地区営農振興センターと石垣市農業開発組合がさとうきびに関する作業受託を行っており、収穫作業は、同組合が約8割を受託している(表2)。委託先の決定は、収穫作業については製糖工場が、その他の作業は生産者が決定している。
 
 

(3)各地域の生産者代表による意見交換

 パネリストからの報告を受け、各地域の生産者代表は、「遊休農地の解消に向けた取り組み」と「受託作業の効率化」について意見交換を行った。

 遊休農地の解消について、沖縄本島北部の国頭村の金城恒夫さんは、「遊休農地が増加しているが、次世代の担い手はなかなか出てこず、われわれが少しずつ規模拡大を図って遊休農地が増加しないよう努めている」と厳しい現状について報告があった。

 奄美大島の南利郎さんは、自身が住む集落で基盤整備事業があった際に、高齢を理由に事業への参加に消極的な生産者が多かったため、自身が経営する法人でこれらの生産者が所有するほ場の生産者負担金を肩代わりし、事業への参加を促したという。基盤整備後の集落内のほ場40ヘクタールで、南さんを含めた2〜3戸が、さとうきびを栽培しているという。南さんは、「基盤整備のおかげで少人数でも対応できている」と、基盤整備の重要性を訴えた。

 受託作業の増加による自作地の管理作業の遅れについて、徳之島の南郷誠さんは、同様の悩みを抱えていた別の受託組織2団体とともに、JAや役場と協議し、3団体が共同で、管理作業を専門に行う作業員を雇用した、自身の解決策を紹介した。また、伊是名島の末吉満さんと北大東島の知花忠正さんは、受託作業の増加に伴う課題として、オペレーター不足を指摘した。特に北大東島では高齢化に伴い、JAに全作業を委託する者が増加しているため、作業が追い付かず、肥培管理に遅れが生じているという。南大東島の儀間勉さんからは、農業機械士会による技能研修や技能検定の実施など、若手オペレーター育成について報告された。南大東島には、島外からUターンやIターンにより若手就農者が増えているという。儀間さんは、「農業に魅力があるからだ」と話す。

 与論島の山下健勇さんは、若手農業者が立ち上げた4Hクラブ(農業青年クラブ)の活動を紹介した。さとうきびの梢頭部の刈り取りを畜産農家が行い、肉用牛に飼料として給与するなど、4Hクラブのメンバー間で耕畜連携を図っているという。山下さんは「若手農業者のおかげで島が活気づいている」と話す。
 

(4)担い手育成に向けて

 パネルディスカッションを受けて、神代准教授は、 1)さとうきび産業は効率化の追求が行き過ぎると、さとうきび産業に関わる人が減ってしまうため、バランスをどう図っていくかが重要ではないか、 2)もうかる農業を考えた場合、単収を上げる必要があるが、単収を上げようとする努力がどこで働くのか見えづらいのが現状。単収の向上のために受託者と委託者がお互いにどう考えるかが重要ではないか、 3)若手の担い手の確保が課題であるが、実際に若手が入っている事例を見ると、受け皿が確保されている。若者が実際にさとうきび生産に携わりながら、これからのさとうきびについて考える機会を持つことが重要ではないか、 4)地域全体での話し合いや関係機関の情報共有・フィードバックを行おうとする場合、どのようなタイミングで、どのようなメンバーに声を掛けて、何について話し合うのかといった具体的な方向性を検討することが重要ではないか、と講評を述べた。

おわりに

 鹿児島県と沖縄県の各地域では、担い手育成に向けて多様な取り組みが展開されている。地理的な制約で日常的な交流が少ないさとうきび関係者が一堂に会し、各地域の取り組み事例の情報共有を図ることができた本検討会での意見交換を踏まえ、担い手育成のための新たな展開を期待したい。

 検討会の開催に当たって、ご協力いただいた徳之島さとうきび生産対策本部、南西糖業株式会社、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会をはじめとした関係者の皆さまには、改めてお礼申し上げます。
 
 (検討会の資料)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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