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沖縄県における平成26年産さとうきびの生産状況について

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最終更新日:2015年9月10日

沖縄県における平成26年産さとうきびの生産状況について

2015年9月

沖縄県農林水産部糖業農産課

【要約】

 沖縄県における平成26年産のさとうきび生産は、収穫面積については1万2736ヘクタール、生産量は68万8504トンと前年産を上回る実績となった。また、分みつ糖工場の原料処理量は63万4280トン、含みつ糖工場の原料処理量も5万4224トンといずれも前年産を上回った。

はじめに

 沖縄県における平成26年産のさとうきびは、本土復帰以後の最低生産となった平成23年産以後、回復傾向となっているものの、3月から5月の低温、8月の日照不足に加え、7月・10月の台風被害による生育の遅れなどが見られ、単位収量、生産量ともに回復には至っていない(図1)。
 

1. さとうきびの位置付け

 沖縄県におけるさとうきびは、県全体の農家数の約7割、耕地面積の約5割、農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替のきかない作物でもある。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を策定するとともに、平成24年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「沖縄県21世紀ビジョン基本計画」を平成24年5月に策定し、生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。

2. 平成26年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)
 生育初期は、春先から適度な降雨があったものの日照時間が平年に比較して少なく、生育は緩慢であった。梅雨明け以後は適度な降雨もあり順調な生育を見せたが、7月の台風8号・12号の影響により生育の遅れ、10月の台風19号とその後の少雨傾向により生育の回復遅れが見られ、品質面でも影響が見られた。

 南大東島および北大東島では、3月から5月にかけての低温および5月から8月の日照不足のため生育が緩慢となったことに加えて、7月下旬の台風11号、9月の台風18号、10月の台風19号の襲来による折損や潮害などの被害をもたらし、生産量および品質が低下した。

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)
 3月から5月に平均気温が平年を下回るなど低温は見られたが、初期生育はおおむね順調であったものの、梅雨明け以後、生育旺盛期の6月から10月にかけて降水量が平年を下回り生育の停滞が見られた。また、7月の台風8号により折損、葉片裂傷などの被害による生育の遅れがあり、前年をやや下回る生産量となった。

(3)八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)
 初期生育期間はおおむね順調な生育が見られたが、梅雨明け後少雨傾向が続き、波照間島、与那国島では平年を大きく下回る降水量となり、生育の停滞が見られた。また、7月の台風8号による被害も見受けられた。波照間島では12月まで降水量が平年値を下回る状況が続いたことから生産量が大きく減少し、品質も低下するなどの影響が見られた。

3. 平成26年産さとうきびの生産状況

 平成26年産さとうきびの収穫面積は1万2736ヘクタールとなり、平成25年産に比較して201ヘクタール増加した(対前年比101.6%)。生産量は5710トン増加し68万8504トン(対前年比100.8%)、10アール当たり収量は5406キログラムと、前年に比較して10アール当たり41キログラム減少(対前年比99.2%)と、ほぼ前年並みであった(表123)。

 沖縄地域では収穫面積は208ヘクタール増加したものの、10アール当たり収量が前年に比較して134キログラム減少したことから、生産量は大きな増加とならなかった。宮古地域では10アール当たり収量はほぼ前年並みであったが、前年に比較して収穫面積が57ヘクタール減少したこともあり、生産量は減少した。八重山地域は収穫面積、10アール当たり収量ともに前年に比較して増加したことから増収となった。

 なお、各地域別生産量では、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の38.1%、宮古地域が46.8%、八重山地域が15.1%となっている。
 
 作型別では、夏植栽培が21ヘクタール増加し4799ヘクタール(全収穫面積に占める割合37.7%)、春植栽培が197ヘクタール増加し1461ヘクタール(同11.5%)、株出栽培が18ヘクタール減少し6475ヘクタール(同50.8%)となった(図2)。

 品種構成は、農林27号が全収穫面積の30.8%を占め、次いで農林21号が同13.3%、農林8号が同8.5%、農林15号が同7.4%、農林25号が同5.6%となった(図3)。
 
(1)沖縄地域
 収穫面積は6096ヘクタールで平成25年産に対して208ヘクタール増加、10アール当たり収量は4298キログラム(対前年比97.0%)で、前年に対してもやや減少、生産量は26万2011トンで1031トン(対前年比100.3%)増加した。

 作型別では、夏植栽培1040ヘクタールで268ヘクタール増加し、春植栽培906ヘクタールで97ヘクタール増加、収穫面積の約7割を占める株出栽培は、4151ヘクタールで156ヘクタール減少となった。生産量は夏植・春植栽培で前年に比較して増加したものの、株出栽培の収穫面積および10アール当たり収量の減少に伴い、全体として減収となった。

 品種構成は、農林21号が16.6%、農林8号が15.3%、農林28号が12.2%を占めており、農林15号、農林22号も普及している。

(2)宮古地域
 収穫面積は4802ヘクタールで平成25年産に比較して57ヘクタール減少し、10アール当たり収量は6709キログラム(対前年比99.8%)、生産量は32万2207トンで4213トン(対前年比98.7%)減少した。

 作型別では、近年、株出栽培が増加傾向にあり、平成26年産は1758ヘクタール(対前年比107.9%)、生産量は9万4319トン(対前年比116.3%)と、昨年に引き続き増加した。

 品種構成は、農林27号が68.2%と最も多く、次いで農林21号となっている。

(3)八重山地域
 収穫面積は1837ヘクタールで平成25年産に対して49ヘクタール増加し、10アール当たり収量は5677キログラム(対前年比106.4%)、生産量は10万4286トンで8892トン(対前年比109.3%)増加した。

 作型別では、夏植栽培で31ヘクタール減少、春植栽培71ヘクタール増加となり、夏植から春植、株出栽培へ移行が見られる。生産量は夏植栽培で3262トン減少となった一方、春植栽培で6979トン増加の1万2870トン、株出栽培で5175トン増加の2万5013トンであった。

 品種構成は、農林27号が29.6%を占め、次いで農林15号が20.8となり、平成25年産と品種構成が入れ替わっている。その他農林22号、農林25号の割合も高くなってきている。

4. ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が推進されてきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、刈り取り機、脱葉施設の導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 平成26年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計397台のハーベスタが稼働し、機械収穫率は収穫面積の62.0%となっている。

5. 製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が9社10工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)が操業している。

 分みつ糖工場の平成26年産原料処理量は平成25年産より3203トン増加し63万4280トン(対前年比101%)となり、買入糖度は前年より0.45度低い14.12度となった(表4)。

 含みつ糖工場の平成26年産原料処理量は平成25年産より2507トン増加し5万4224トン(対前年比105%)となった。
 

おわりに

 沖縄県では平成27年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および平成33年を目標とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開しており、収穫面積は前年に対して増加し、10アール当たり収量が前年並となったことから、生産量は平成25年産に対して増産が図られた。

 しかしながら、相次いで襲来した台風、一部地域における干ばつ被害の発生やメイチュウ類の被害により10アール当たり収量の回復が遅れており、全般的には生産の回復は途上にあり、一層の取り組み強化が求められている。

 このようなことから、平成25年度からの「さとうきび増産基金」の活用による生産対策に引き続き、平成27年度は気象災害、病害虫被害などに対応したセーフティネットとして活用することによる生産回復を推進し、関係機関・団体と一体となった早期の生産回復、増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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