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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年2月時点予測)

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最終更新日:2016年3月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年2月時点予測)

2016年3月

 
2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量は前年度並みの見込み
 LMC Internationalの2016年2月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、849万ヘクタール(前年度比3.5%減)とやや減少するものの、生産量は6億5000万トン(同2.8%増)と、わずかな増加が見込まれている。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨でサトウキビの出穂現象が見られており、産糖量が減少していることから、砂糖の生産量は3637万トン(以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算。同4.8%減)とやや減少するものの、輸出量は2498万トン(同0.4%増)と、レアル安により堅調なため、前年度並みと見込まれている(表2)。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)が発表した2015年4月〜2016年1月の生産実績によると、ブラジル中南部地域のサトウキビの生産量は、5億9987万トン(前年同期比5.2%増)とやや増加したが、砂糖の生産量は3068万トン(同4.0%減)とやや減少となった。これは、過度な降雨により、サトウキビ1トン当たりの産糖量が51.2キログラム(同8.8%減)と減少していることに加え、企業が短期間で利益を回収できるエタノールへの仕向け量を増やしていることが影響しているとみられている。同報告によると、同期間のエタノールの生産量は、2744万キロリットル(同5.4%増)となっている。また、輸出量も含めた同期間のエタノールの販売数量は、2511万キロリットル(同21.4%増)に達している。

 しかし、1月の含水エタノール(注2)の国内販売量は、126万キロリットル(前年同月比2.7%減)とわずかに減少した。これは、現在収穫の端境期にあるため、これまでの旺盛な消費により在庫量が低下し、エタノールの価格が、高騰していることが要因として挙げられる。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、1月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)が、1リットル当たり2.60レアル(78円(1月末日TTS:1レアル=30.17円))と、ガソリン小売価格の同3.52レアル(106円)の70%(注3)を上回っている。このため、含水エタノールのガソリンに対する優位性は低下していると考えられる。

 2月初旬に、国立社会経済開発銀行(BNDES)より、融資策(Prorenova)(注4)における2015年の融資実績が報告された。このうち、サトウキビの生産性向上を目的とする融資の実績は、2014年の18億7100万レアル(561億3000万円)に対し、8億9300万レアル(267億9000万円)にとどまったとの発表があった。2016年の融資限度額はまだ公表されていないが、総額25億レアル(750億円)〜30億レアル(900億円)の間ではないかとみられている。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。
(注4)サトウキビの新植促進や新規ほ場拡大などを目的に、2012年1月より、政府が講じている融資策。
 
 
2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量はわずかに増加の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、511万ヘクタール(前年度比1.5%減)とわずかに減少し、株出しほ場の増加により単収の低下が懸念されることから、生産量は3億5138万トン(同6.0%減)、砂糖の生産量も2804万トン(同8.1%減)と、ともにかなりの減少が見込まれている(表3)。

 インド砂糖製造協会(ISMA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年1月の生産実績によると、砂糖の生産量は、精製糖換算で1425万トン(前年同期比4.6%増)とやや増加した。主要生産地であるウッタル・プラデーシュ州やカルナータカ州は、それぞれ362万トン(同7.1%増)、269万トン(同16.3%増)と、ともに増加した(図3)。これは、国内製糖企業が、新しい輸出促進政策(注)への期待から圧搾開始期を早めたためと考えられる。最大生産地であるマハーラーシュトラ州でも、昨年12月までは前年同期を上回るペースで圧搾を行っていたが、干ばつの影響によりサトウキビの生産量が減少したため、原料不足からすでに圧搾を終了させた国内製糖企業も見られ、砂糖の生産量は、544万トン(同0.1%増)と前年同期と同程度となった。

 砂糖の輸出量は、新しい輸出促進政策により、252万トン(前年度比2.1%増)とわずかな増加が見込まれている。しかし、砂糖の国際価格が低迷している中、国内価格は2015年10月より上昇し、高水準で推移していることから、国内製糖企業が輸出よりも国内への仕向けを増やすとの見方もある。

 インド政府は、2015年12月に、ガソリンへのエタノール混合率を現行の5%から10%へと引き上げる検討をしていることを発表したが、2015年のエタノール混合率が実質3%程度にとどまった現状を受け、2月初旬に、改めてエタノール混合率5%の達成を目指すことを示唆した。政府は、大気汚染の問題からバイオ燃料使用を推進しており、国家政策として2017年までにエタノール混合率を20%まで引き上げる目標を掲げていることから、国内製糖企業にエタノール生産を奨励している。そのため、政府は、負債に苦しむ国内製糖企業の収入源となるよう、すでに石油管理会社への販売価格となるエタノール参考卸売価格の設定や糖みつ由来のエタノールに係る付加価値税の免除を実施している。また、政府は、さらなる混合率引き上げのため、砂糖生産の副産物であるバガスや稲わらなどからのエタノール生産の奨励も始めている。

 また、去る1月上旬には、砂糖課税法の改正案が大統領の承認を得たとの発表があった。これにより、国内販売される砂糖への課税額が100キログラム当たり25ルピー(48円(1月末日TTS:1ルピー=1.93円))から200ルピー(386円)に引き上げられることとなり、製糖企業のサトウキビ代金支払いを補てんする財源に充てられるものとみられている。

(注)インド政府が、負債に苦しむ国内製糖企業に対して新設した救済措置。輸出促進を図るため、2015/16年度の輸出割当数量を400万トンと設定し、過去3年の平均生産量を基に各工場に割り当てる。加えて、輸出割当数量の8割以上を輸出できた国内製糖企業に限り、生産者へ支払う原料代のうち、サトウキビ1トン当たり45ルピー(87円)を補てんすることを発表した。
 
 
2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸入量はかなり増加の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、砂糖の国際価格が低水準にあったこともあり、生産者が他作物への転換を図る動きが見られることや、サトウキビ新植のための十分な投資ができないことなどから、サトウキビの収穫面積は130万ヘクタール(前年度比8.0%減)、生産量は8026万トン(同2.4%減)と、ともに減少が見込まれている(表4)。

 一方、てん菜の収穫面積は14万ヘクタール(同4.5%増)、生産量は699万トン(同8.9%増)と、ともに増加が見込まれているものの、降雨による圧搾の遅れからサトウキビからの産糖量が低下していることが響き、砂糖の生産量は992万トン(同13.0%減)とかなりの減少が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)によると、2015年10月〜2016年1月までの砂糖の生産量は、精製糖換算で421万トン(前年同期比12.0%減)とかなり減少となった。これは、てん菜糖は81万トン(同10.8%増)と増加したものの、甘しゃ糖が340万トン(同16.2%減)と大幅に減少となったことによる。サトウキビの最大生産地である広西チワン族自治区の甘しゃ糖生産量は、276万トン(同14.9%減)とかなりの減少となった(図4)。

 また、砂糖の輸入量は、タイやブラジルなどからの精製糖輸入が増加していることから、648万トン(前年度比8.1%増)とかなりの増加が見込まれている。

 なお、政府は先ごろ、年間100万トンに及ぶミャンマー経由での「非公式な」精製糖の輸入を監視する新たな対策案を発表した。しかし、国境監視のための定点地の設定やミャンマーとの貿易に及ぶ影響などの問題が指摘されている。
 
 
 
2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜播種時の天候に恵まれたものの、在庫の増加による砂糖価格下落への懸念から、てん菜の収穫面積は134万ヘクタール(前年度比13.9%減)とかなりの減少が予想されている(表5)。また、夏の熱波の影響によるポーランドやドイツなどの減産見通しから、EU全体では、てん菜の生産量は9309万トン(同23.3%減)、砂糖の生産量は1509万トン(同20.4%減)と、ともに大幅な減少が見込まれている。

 この減産を受け、砂糖の輸入量は、430万トン(同27.2%増)と大幅な増加が予想されている。

 2015年12月に、欧州委員会は、2015/16年度の域内需給予測を発表し、期末在庫量を精製糖換算で92万トンとした。在庫水準としては非常に低く、域内需給のひっ迫が懸念されている。このため、関税割当制度に基づく低関税の粗糖(注)の輸入を増やす可能性も高まってきている。

 なお、現地報道によると、ブラジル産の粗糖(注)が、同制度により、この3月〜4月にかけてルーマニアやブルガリアの精製糖工場向けに輸入されるとのことである。

(注)EU加盟時に引き継いだフィンランドなどの伝統的な関税割当制度に基づく低関税(1トン当たり98ユーロ(1万3132円(1月末日TTS:1ユーロ=133.67円))、通常関税は同339ユーロ(4万5426円))の粗糖輸入枠。主な輸入先国は、ブラジル、キューバ、インドなど。
 
 
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