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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年4月時点予測)

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最終更新日:2016年5月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年4月時点予測)

2016年5月

 
2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
 Agra CEAS Consulting(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2016年4月現在の予測によると(以下、特に断りがない限り同予測に基づく記述)、2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億5870万トン(同3.8%増)と、やや増加が見込まれている。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖の生産量は3550万トン(以下、特に断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算。同4.9%減)とやや減少するものの、レアルの対米ドル為替レートが低水準にあり輸出が堅調であることから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれている(表2)。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)が発表したブラジル中南部地域の生産実績報告によると、2015/16年度のサトウキビ生産量は、6億1765万トン(同7.8%増)とかなり増加したが、砂糖の生産量は3122万トン(同2.5%減)とわずかに減少した。これは、過度な降雨により、サトウキビ1トン当たりの産糖量が50.5キログラム(同9.5%減)と減少していることに加え、企業が短期間で利益を回収できるエタノールへの仕向け量を増やしていることが影響しているとみられている。同報告によると、エタノールの生産量は、2822万キロリットル(同7.6%増)となっている。また、輸出量も含めたエタノールの販売数量は、2927万キロリットル(同16.3%増)に達している。

 しかし、3月の含水エタノール(注2)の国内販売量は、112万キロリットル(前年同月比22.7%減)と大幅に減少した。収穫の端境期にあったため、これまでの旺盛な消費により在庫量が低下し、エタノール価格が高騰したことが、要因として挙げられる。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、3月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)が、1リットル当たり2.74レアル(88円(3月末日TTS:1レアル=32円))と、ガソリン小売価格の同3.57レアル(114円)の70%(注3)を上回っている。このため、含水エタノールのガソリンに対する優位性は低下していると考えられる。

 4月初旬、ブラジル政府は、タイ政府が国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払う補てん()金や、販売割当制度および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり、国際貿易協定に違反しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。ブラジル政府によれば、国際市場における輸出のシェアは、過去4年で、ブラジルが50.0%から44.7%に低下した一方で、タイが12.1%から15.8%に上昇した。また、UNICAは、タイとインドの輸出補助金政策により、ブラジルの砂糖産業は年間12億米ドル(1368億円(3月末日TTS:1米ドル=114円))の損失を被ったと主張している。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。
表2
 
 

2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は506万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれるものの、生産量は3億5889万トン(同0.9%減)と、干ばつによりわずかな減少が見込まれる。産糖量の低下も見られることから、砂糖生産量は2800万トン(同8.5%減)と、かなりの減少が見込まれている(表3)。

 インド砂糖製造協会(ISMA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年3月の生産実績によると、砂糖生産量は、精製糖換算で2370万トン(前年同期比4.4%増)とやや増加した。3月末時点の操業工場数は前年の366に対して215であり、操業終了期が早まっている。これは、国内製糖企業が、2015/16年度に新設された中央政府の輸出促進政策(注1)への期待から圧搾開始期を早めたためとみられる。主要生産地であるウッタルプラデシュ州は657万トン(同3.6%増)とやや増加した(図3)。一方、最大生産地であるマハラシュトラ州では、干ばつの影響によりサトウキビ生産量が減少したため、820万トン(同12.4%減)とかなり減少した。なお、ISMAは、2016/17年度の砂糖生産量について、マハラシュトラ州およびカルナタカ州では減少し、ウッタルプラデシュ州およびタミルナド州では増加すると予測している。増加の要因として、ウッタルプラデシュ州では高単収品種の普及が進んでいること、タミルナド州では2015年に降雨に恵まれサトウキビの生育が順調であることを挙げている。
 
 砂糖輸出量は、中央政府に加え、マハラシュトラ州政府による輸出促進政策(注2)も講じられたことから、主にアジアやアフリカ向けが増え、389万トン(前年度比49.9%増)と大幅な増加が見込まれている。

 インド政府は、ガソリンへのエタノール混合率を現行の5%から10%へ引き上げる検討をしていることを2015年12月に発表したが、2015年のエタノール混合率が実質3%程度にとどまった現状を受け、まずは、2016年10月までに、エタノール混合率5%のガソリンの普及を目指すこととした。政府は、大気汚染への対応からバイオ燃料の使用を推進しており、国家政策として2017年までにエタノール混合率を20%まで引き上げる目標を掲げている。そのため、政府は、国内製糖企業にエタノール生産の奨励、石油管理会社への販売価格となるエタノール参考卸売価格の設定や糖みつ由来のエタノールに係る付加価値税の免除を実施しているが、混合率の上昇に資するよう、砂糖生産の副産物であるバガスや稲わらなどからのエタノール生産の奨励を開始した。

(注1)インド中央政府が、負債に苦しむ国内製糖企業に対して新設した救済措置。輸出促進を図るため、2015/16年度の輸出割当数量を400万トンと設定し、過去3年の平均生産量を基に各工場に割り当てる。加えて、輸出割当数量の8割以上を輸出した企業に対し、生産者へ支払う原料代のうち、サトウキビ1トン当たり45ルピー(83円(3月末日TTS:1ルピー=1.85円))を補てんすることを発表した。なお、この補てん金の財源は、国内販売される砂糖への課税額引き上げ(100キログラム当たり25ルピー(46円)から200ルピー(370円))により、拠出されるものとみられる。
(注2)マハラシュトラ州政府が3月中旬に新設した救済措置。2015/16年度に生産した砂糖の12%を輸出した製糖企業に限り、サトウキビ購入に係る3%の州税(100キログラム当たり9ルピー(17円))を免除する。

表3
図3
 
 
2015/16年度の砂糖生産量、輸入量ともにかなり減少の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、砂糖の国際価格が低水準にあったこともあり、生産者が果物や野菜などの他作物へ転換する動きが見られることや、労働費の上昇によりサトウキビの新植が進まないことから、サトウキビ収穫面積は166万ヘクタール(前年度比5.7%減)とやや減少が見込まれ、生産量は1億1730万トン(同6.6%減)とかなりの減少が見込まれている(表4)。

 一方、てん菜については、最大生産地である新疆ウイグル自治区の減産により、収穫面積は14万ヘクタール(同2.6%減)、生産量は734万トン(同8.3%減)と、ともに減少が見込まれる。天候不順からサトウキビおよびてん菜からの産糖量が低下していることが響き、砂糖の生産量は、978万トン(同14.7%減)とかなりの減少が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)が先ごろ発表した2015年10月〜2016年3月の生産実績によると、砂糖生産量は、精製糖換算で800万トン(前年同期比16.3%減)と大幅な減少となった(図4)。これは、てん菜糖は84万トン(同13.8%増)とかなり増加したものの、甘しゃ糖が716万トン(同18.8%減)と大幅に減少したことによる。特に、最大生産地である広西チワン族自治区は、1月に降霜、降雪に見舞われたため、サトウキビの収穫が遅れ、産糖量が低下していることから、497万トン(同18.5%減)と大幅に減少した。

 なお、CSAは、2015/16年度の砂糖生産量を900万トン(前年度比14.7%減)、うち、広西チワン族自治区の生産量を520万トン(同18.0%減)と予測している。

 また、砂糖輸入量は、427万トン(同12.4%減)とかなりの減少が見込まれている。なお、これは公式データを基とした予測値であり、ミャンマーやカンボジアなどとの国境を通じた「非公式な」砂糖の輸入が急増していることから、これが国内生産量の減少を補っているものと想定される。

 現地報道によると、中国国家発展改革委員会(NDRC)(注)は、国家備蓄制度に基づき、2015/16年度の備蓄砂糖の総量を150万トンと設定し、3月〜6月の間に備蓄するとしている。備蓄砂糖は、1トン当たり5200元(9万1988円(3月末日TTS:1元=17.69円))で買い上げられる。政府は、国内市場の動向に応じて、備蓄砂糖を国内企業に売り渡し、現在上昇傾向にある国内価格の安定を図るものとみられる。

 このほか政府は、国産品の価格競争力を高めるため、砂糖産業に対する470億元(8314億円)の投資を検討しているとの報道もある。これによると、広西チワン族自治区で33万ヘクタール、雲南省で13万ヘクタールの農園の開墾に80億元(1415億円)、サトウキビおよびてん菜生産の機械化に37億元(655億円)、製糖工場の近代化に18億元(318億円)などが充てられるとしている。

(注)財政金融政策の策定や公共事業の認可などを行う政府機関。砂糖産業においては、砂糖の国家備蓄計画の総合調整および備蓄放出の提言、輸出入総量計画の作成などを行う。
表4
図4
 
 
2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜播種時の天候に恵まれたものの、在庫の増加による砂糖価格下落への懸念から、てん菜収穫面積は144万ヘクタール(前年度比12.0%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。また、夏の熱波の影響によるポーランドやドイツなどの減産見通しにより、EU全体では、てん菜生産量は9882万トン(同24.6%減)、砂糖生産量は1475万トン(同23.6%減)と、ともに大幅な減少が見込まれている。

 この減産を受け、砂糖輸入量は、402万トン(同16.4%増)と大幅な増加が予想されている。なお、EUの関税割当制度に基づく低関税枠(注)で、2013年10月以来初めて、ブラジルから粗糖が輸入されている。

 欧州委員会は、食品メーカーなどの実需者から、需給のひっ迫に対して特別な対策を講じるよう強く迫られているが、まだその検討段階にあり、市場の動向を引き続き注視することとしている。

 また、英国では、100ミリリットル当たり5グラム以上の砂糖を含む飲料(乳飲料や砂糖を含まないフルーツジュースは除く)に対する2018年からの課税が決定した。砂糖含有量が同8グラム未満の飲料には1リットル当たり0.18ポンド(30円(3月末日TTS:1ポンド=166円))、8グラム以上の飲料には同0.24ポンド(40円)が課税されることとなっている。これは、子どもの肥満問題解決のためとされており、税収の一部は学校教育でのスポーツ振興に充てられることとなっている。

(注)EU加盟時に引き継いだフィンランドなどの伝統的な関税割当制度に基づく低関税の粗糖輸入枠(1トン当たり98ユーロ(1万2642円(3月末日TTS:1ユーロ=129円))。通常の粗糖輸入枠の関税は同339ユーロ(4万3731円))。主な輸入先国は、ブラジル、キューバ、インドなど。
表5
 
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